【予測力で読む】冠詞と所有格に注目すれば、流し読みしていい英文がわかる!

駿台予備学校英語科の大人気講師、神坂明生海(かみさかあきおみ)さんが、脳内に映像のようなイメージを作りながら読む独自のメソッドを使って、英文がどんどん頭に入ってくる読み方を教えます。連載「神坂流!英文読解術」4回目は、冠詞と所有格でわかる、「ふわっと」流し読みをする方法についてです。

「ふわっと」流し読みのポイント

皆さん、こんにちは。駿台予備学校英語科講師の神坂明生海です。今回もお読みくださり、ありがとうございます。

前回 の記事では、英文を読むときのポイントを次のようにお伝えしました。

①短期記憶できるチャンク(単語などのカタマリ)は「4±1個」

②¶1を retention しながら内容を重ねていく

③具体部分は「ふわっと」流して読むべきである

今回は、冠詞や所有格の知識も使いながら、「ふわっと」流して読む(その部分は無理に記憶しなくてもよい)ことを進化させましょう。

まずは「ふわっと」読んでみよう

「学ぶはまねぶ」という言葉がありますが、以前お伝えした「 英文は抽象→具体構造」「具体のサイン→過去形、数字、固有名詞」 、そして上記にもある前回の学習項目を意識しながら読んでみてください。それでは、さっそく読んでみましょう。

いつものように、タイトルは最後に付します。

¶1 A new study of the British population shows that antibodies in the human body fighting COVID-19 declined rapidly in the British population during the summer, suggesting any immunity against the virus may not last long.

¶2 The study , conducted by Imperial College London and published Tuesday, involved tests on more than 365,000 British people between June 20 and Sept. 28.

¶3 The researchers' analysis of home finger- prick tests found that the number of people testing positive for antibodies dropped by 26.5% during the study period , from almost 6% to 4.4%.

¶4 The findings suggest the possibility of decreasing population immunity ahead of a second wave of infections in recent weeks that has forced local lockdowns and restrictions.

¶5 The researchers say it is unclear what level of protection antibodies give a person against COVID-19 specifically .

¶6 Wendy Barclay, the head of Imperial College London Department of Infectious Disease, told reporters in London they are confident in what a decline in antibodies tells them.                   

¶7 " On the balance of evidence , I would say with what we know for other corona viruses, it would look as if immunity declines away at the same rate as antibodies decline away, and that this is an indication of waning immunity at the population level ."  

¶8 The researchers say that more than anything, the study reinforces the need for a vaccine to effectively bring the virus under control .

いかがでしたか?

¶1は retention しながら、具体部分は「ふわっと」流して読めましたか?

今回は、ふわっと流して読むべきところをさらにはっきり認識できるように、冠詞や所有格の知識を確認しておきましょう。

冠詞や所有格を理解する

今回の 予測 の主人公は冠詞のaとthe、そして所有格 です。まずはそれぞれを英文法として知っておきましょう。先をゆっくり読むべきか、「ふわっと」流して読むべきか。実はこれらの短い単語は、内容を素早く捉える上で多くの情報を与えてくれています。

・a(不定冠詞):初めて出てきた「1つに定まらない」可算名詞に付く。 =基本、抽象

・the(定冠詞):基本的に「1つに定まる」名詞に付く。 =基本、具体

・所有格:所有者や 所属 関係を表す言葉。特に文頭で使われたときは、前の内容を受けていることが多い。 =基本、具体

・無冠詞複数:一般論を述べるときに使う。 =基本、抽象

この4つは、2つにグループ分けすると、
・a、無冠詞複数の名詞 →抽象

・the、所有格 →具体

となります。(もちろんtheには種類全体を表す使い方などもありますので、これに当てはまらない用法などはまだまだありますが、ここでは実用性に重きを置いてざっくり捉えています。ご了承ください)。

ということは、 the ~と述べられていたり、their ~と述べられていれば、それ以降の部分は前文の内容を踏まえて論を 展開 したり、考察を加えたりしている 可能性 が高い と言えます。 つまり、具体部分である 可能性 が高い ということです。

本来ならば、そこの内容も吸収したいところですが、我々が短期記憶できるチャンクは「4±1」ですから、それを考慮すると「ふわっと」流して読むべきでしょう。

冠詞や所有格を「ふわっと」流して読むことに使ってみる

それではこれらの知識を使って、 retention すべきところは retention し、「ふわっと」流して読むべきところは字面だけを追い、無理に retention を意識し過ぎないようにして、読んでみましょう。 予測 力を使った頭の動かし方 は以下の通りです。

¶1【まずは抽象( 主張 )部分が来るはず!】

A(=不定冠詞!)new study of the British population shows(=現在形!)that antibodies in the human body fighting COVID-19 declined rapidly in the British population during the summer, suggesting any immunity against the virus may not last long.

イギリス人に関する新しい研究によると、人間の体内の新型コロナウィルスの抗体はこの夏の間に急速に減少しており、ウィルスに対するどんな免疫性も長くは続かない 可能性がある ことを示唆している。

=不定冠詞a=抽象

=1文目なので retention !

¶2 【次は具体のはず!】
The(=定冠詞!) study ,~

その研究は~

=定冠詞The =¶1の研究の説明(+文中には過去形や数字)

=具体=ふわっと流して読む

¶3 【ここからはTheや現在形等の目印に注意しながら読んでみましょう】
The researchers' analysis of home finger- prick tests found that ~その研究者たちの抗体検査の 分析 からわかったことは~

=定冠詞= 分析 結果からの考察

=具体=ふわっと流して読む

¶4 
The(=定冠詞!)findings suggest

その発見が示唆しているのは~

=定冠詞The=話が 展開 されている

→国民の免疫力の低下に伴って出される 可能性 のある政策(ロックダウンと行動制限)をつかめていれば理想的です。

¶5 
The(=定冠詞!)researchers say~

その研究者たちが言うには~

=定冠詞The=その研究者たちの意見

=具体=ふわっと流して読む

¶6  
Wendy Barclay, ~

英インペリアル・カレッジ・ロンドンの感染症学科長であるウェンディ・バークレーは~

=Wendy Barkley(固有名詞),

=具体=ふわっと流して読む

¶7 
" On the balance of evidence , ~ "

=発言内容

=具体=ふわっと流す

¶8 
The(=定冠詞!) researchers say~

その研究者たちが言っているのは~

=定冠詞The=研究者たちの考察

=具体=ふわっと流して読む

記事を要約してみよう

それでは、いつものように要約問題です。結局のところ、これはなんの記事だったのでしょうか?

答えは以下のタイトルの通りです。

British Study Shows Antibodies Against COVID-19 Declined Rapidly

英研究 新型コロナの抗体、急速に減少

たったこれだけでした。「ウィルスに対する免疫性が長く続かない かもしれない 」という部分が反映されていないので、ちょっと拍子抜けな感じがしないでもありませんが、逆にそれを入れてしまったら、見出しとして長過ぎてしまうので、ちょうどいいのかもしれません。

いずれにせよ、どんなことが書かれていたのかを覚えておく(理解する)ためには、脳の限られた記憶容量をうまく使っていかねばなりませんが、「ふわっと」流して読むためには、「 すべてを訳して理解しなくてもいいんだ前回 紹介した難関大に合格した学生のコメント、そのままです)」、「 そもそも 読んだことすべてを覚えていられるものではないんだ 」と、大胆になって読むことが大切です。忘れてもよいのです。

あくまでも私たちの 目的は「一読して、わかる」 ですから。無理せず、焦らず、欲張らず、抽象部分を中心に retention し、余力があれば、具体部分をそこに重ねていってみてください。

回は以上です。

次回は、2次元(平面上)で表現されている英文を、3次元(立体)で捉える方法論をお伝えします。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

今回の記事の訳例はこちら

まとめ

・a(不定冠詞):初めて出てきた「1つに定まらない」可算名詞に付く。

・the(定冠詞):基本的に「1つに定まる」名詞に付く。

・所有格:所有者や 所属 関係を表す言葉。

・無冠詞複数:一般論を述べる時に使う。

※特に、文頭のtheや所有格は具体例の 可能性 が高い。

最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

※英文の出典: VOA News October 27, 2020 04:50 PM

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神坂明生海(かみさかあきおみ) 福岡県生まれ。駿台予備学校英語科講師。全国通訳案内士。高校まではほぼ勉強せず、日本語もままならなかったが、浪人時代に小畑徳正先生、副島隆彦先生と出会い、本格的に勉強を始める。その後、認知言語学的なアプローチから英語を捉え、現在に至る。駿台の長文の授業では、普段私たちが意識しない「予測する力」を活用した授業を展開中。座右の銘は「ABCを忘れない(A:当たり前のことを、B:バカにせず、C:ちゃんとやる)」。

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