オードリー・タン氏、ニュージーランド首相も!世界のリーダーの英語でリスニング

英語のリスニング教材として、おすすめの1冊をご紹介します。世界のリーダーの英語を素材にした、その名も『危機時のリーダーの英語』。世界のトップが話す英語には、学ぶべき点がたくさんあります。早速、チェックしてみましょう!

危機時のリーダーの英語 [音声DL付]
  • 発売日: 2021/01/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

各国リーダーのスピーチで英語学習

新型コロナウイルスが世界的な大問題になってから、早くも1年が経ちました。何 に関して も変化の多い年でしたが、各国や地方自治体など、各行政機関の首長のスピーチをこれほど耳にした年も珍しいのではないでしょうか。

その集団が危機に面しているときほど、トップに立つ人のリーダーシップや 判断 力が問われるもの。本書なら、各国のリーダーがどんなメッセージを発してきたのかを振り返りつつ、英語の勉強もしっかりできます。

ラインアップはこちら。役職名は当時のものです。

  1. アンドリュー・クオモ(米国ニューヨーク州知事)
  2. ボリス・ジョンソン(英国首相)
  3. ジャスティン・トルドー(カナダ首相)
  4. ジャシンダ・アーダーン(ニュージーランド首相)
  5. レオ・バラッカー(アイルランド首相)
  6. リー・シェンロン(シンガポール首相)
  7. オードリー・タン(台湾デジタル大臣)
 

どのスピーチも、巧みな論理構成と説得力のあるクールな表現の宝庫。また、わかりやすく落ち着いた話し方はプレゼンの参考にもなりそうです。アメリカやイギリスなどの英語圏だけでなく、ノンネイティブの人を含めた 各国の英語を聞くことができるのも魅力的 ですね。

使いやすい!秀逸なスピーチを教材に最適化

いくら素晴らしいスピーチでも、3分、5分と続くものを延々と聞き続けるのはなかなか大変ですよね。この本なら、その点も 安心各氏のスピーチは、150語前後の長さに 抜粋 されています。時間にすると1分から1分20秒程度。 この長さのものが、話者ひとりあたり7~10本収録されています。もちろん英文スクリプトと語注、和訳付き。

このくらいの長さだと、リスニングはもちろんシャドーイングの練習にもぴったり。繰り返し聞いても苦になりません。

また、 音声はそれぞれ2種類用意されています 。ひとつは、スピーカー本人が話している生の英語。もうひとつは、アメリカ人のナレーターがスタジオで録音したものです。この2種類の音声が用意されているところが、とっても便利なのです!

本人の音声には、さすがと言いたくなるような説得力と個性があり、とても魅力的。一方で、その人固有のクセもあるし、ノンネイティブスピーカーもいるので、英語のお手本としてはそのまま使えない部分もあります。また、ところどころ音が割れていて、聞き取りにくい部分もありました。

まずは本人音声を聞いてみて、わからないところだけナレーター音声で確認する。シャドーイングのお手本にはナレータ―音声を使うなど、使い分けるとよさそうです。

音声は、パソコンでダウンロードして入手できるほか、ストリーミング再生も可能 。スマホでさっと聞きたい場合は、後者が便利です。

思わず胸アツ!名スピーチ

本書に収録されているスピーチは、緊急時に「聴衆に理解してもらうこと」を大 前提 としているからか、どれも割とゆっくりで、聞き取りやすい話し方をしています。聴衆に寄り添うような優しい表現、 厳しい 政策を打ち出すときの断固とした態度はさすが。さらに、思わずじーんとくる胸アツでクールな表現がいっぱいです。

いくつかご紹介しましょう。

1パーセントの命を守るために

本書のトップバッターは、ニューヨーク州知事のクオモ氏。

本書で取り上げたスピーチは、2020年3月24日の記者会見でのもの。3月7日にはニューヨーク州全域に非常事態宣言、3月22日には外出制限令が発令され、州民の不安が頂点に達していたころです。

コロナに感染しても、80パーセントの人は自然に治る。しかし、高齢者や基礎疾患がある人など、重症化しやすい一部の人のために、 厳しい 制限が必要だとして、クオモ知事は次のように説明しています。

And it is only 1% or 2% of the population. But then why all of this? Because it's 1% or 2% of the population; it's lives. It's grandmothers and grandfathers and sisters and brothers.

そして、それは人口の1、2パーセントにすぎません。しかし、だったらなぜ、こんなにあれこれ言うのか。なぜかというと、それが人口の1、2パーセントだからです。それは命だからです。亡くなるのは(私たちの)祖母たちであり、祖父たちであり、兄弟姉妹だからです。

数字にすればごく一部でも、ひとつひとつはかけがえのない命。団結して命を守り、この局面を乗り切っていこうと、クオモ知事は呼びかけます。
New York loves all of you. Black and white and brown and Asian and short and tall and gay and straight.

New York loves everyone. That’s why I love New York.

ニューヨークはみなさん全員を愛しています。黒人も白人もヒスパニックもアジア系も、背の低い人も高い人も、ゲイでもストレートでもです。

ニューヨークはすべての人を愛しているのです。だから私はニューヨークを愛しているのです。

かっこいい!観光旅行で1回行っただけですが、「私もニューヨークを愛しています!」と言いたくなります。うまい!

この素晴らしいスピーチをしたクオモ知事ですが、最近になって、コロナによる死亡者数を過少報告していたとの報道がなされています。事実だとすれば本当にがっかりです。これについては続報を待ちたいと思います。

団結し、互いを気づかおう

コロナ禍でのリーダーシップとコミュニケーション力が絶賛されている、ニュージーランドの首相、ジャシンダ・アーダーン氏。

コロナに対しては早期から徹底した措置を取り、2020年3月19日には全世界からの入禁止、3月25日からは4週間のロックダウンに踏み切りました。

こうした 厳しい 方針 を取りながらも、簡潔でわかりやすいメッセージが国民の信頼を集め、世論の8割以上が彼女の支持を表明しているそう。

本書に掲載されているスピーチは、2020年3月21日に公共テレビ中継を通じて行ったものです。

まずは、人前で話し始めるときの基本のき。何について、なぜ話すのかをおだやかに説明しています。

I'm speaking directly to all New Zealanders today to give you as much certainty and clarity as we can as we fight COVID-19.

私が今日、ニュージーランドのすべての国民のみなさんに、こうして直接、お話をしているのは、COVID-19と闘うにあたって、できるだけ多くの確かなこと、明らかなことをお伝えするためです。

こう切り出されたら、「ひとまず話を聞いてみよう」という気になりますよね。

続いては、コロナに対する警戒 基準 には4つの段階があり、今はレベル2であること、そして、この段階ではどう行動すればいいかを説明します。これも、大変わかりやすく具体的。国民に 安心 感を与えるものでした。

最後はこう締めくくります。

We may not have experienced anything like this in our lifetimes, but we know how to rally and we know how to look after one another , and right now what could be more important than that.

私たちは生まれてこのかた、このような事態を体験したことはないかもしれませんが、団結し、互いを気づかう方法は知っています。今は、それが何よりも大事なのです。

確かにコロナ禍は人類にとって初めてのこと。しかし、 戦争や自然災害など、助け合いが必要な状況はこれまでにも何度もありました。「すでに知っていることを実行すればいいのだ」という地に足の着いたメッセージは、私たちに 安心 感と前向きな気持ちを与えてくれます。

世界は変えられる

もう一人ご紹介したいのが、台湾のデジタル担当大臣、オードリー・タン氏。8歳でプログラミングを始め、19歳のときシリコンバレーで起業した天才です。アップル社の顧問を経て33歳でビジネスの世界から引退し、35歳で、トランスジェンダーとしては世界で初めて閣僚となりました。

マスクの 在庫 が30秒ごとに自動 更新 されるアプリ「マスクマップ」の開発でも知られていますね。

タン氏は台湾生まれであり、英語のネイティブスピーカーではありません。そのため、文法や発音がネイティブと異なる部分もあります。しかし、本書では「どのような聞き手にも伝わるようにハッキリとした発声で明瞭に話しており、国際語としての英語(English as an International Language)のお手本のような音声」と大絶賛!

本書に収録されている音声では、同じく英語を母語としない日本の青年グループに向けて語っているためか、特にゆっくり、はっきりと話しています。

私にとって印象的だったのは、終盤のこの部分です。

That's why we won against the coronavirus with no lockdowns. But for each person, it's really literally just washing their hands with soap and putting on (a) mask.

だから私たちは都市封鎖をしなくても新型コロナウイルスに打ち勝ったのです。しかし、1人ひとりにとっては、文字どおり石鹸で手洗いをしてマスクを着けるだけのことです。

確かに、やるべきことは本当にシンプルで、毎日はその積み重ねです。でも、それこそが大事なんですよね。ニュージーランドのアーダーン首相のスピーチとも通じるものがあるかも。
Seems like a small thing, but it changes the world if you can understand the science behind it and teach it to at least 1.01 other person.

それはささいなことのように思われます。しかし、あなたがそれを裏づける科学(的根拠)を理解し、それを少なくとも1.01人の人に教えることができれば、それは世界を変えるのです。

わずか 1.01人でいいんですか!

コロナ生活も長く続くとつい気がゆるみがちになりますが、 改めて 毎日できることをしっかり続けていこうという気になりました。

タン氏の英語には文法的な間違いがいくつかあるのですが、それこそささいなこと。「話の内容は文脈から間違いなく伝わります」と本書。「英語の文法や発音が正しい かどうか よりも(中略)柔軟な発想や、その発想を論理的かつ平易な言葉で伝えるコミュニケーション力に注目しましょう」と解説しています。おっしゃる通りですね。

忙しいとか、はそれどころではないとか、言い訳はいくらでもできますが、「英語の勉強を頑張ろう」という気になりました。

まとめ

いいスピーチができることと、政治家として有能 かどうか は別のことです。特にコロナ対策については、長期的な視野に立たないと評価ができない面もあるでしょう。

しかし、世界的な大混乱のなかで決断を下し、それを国民に理解してもらおうとする各氏のスピーチには、リーダーに必要なものが凝縮されている気がします。

新型コロナウイルスの動きや、それに対して世界のリーダーたちが見せる対応は、これからもまだまだ注視していかなくてはなりません。

世界各国から発信される情報を正確に吸収できるよう、英語力を磨いていきたいものです。 

危機時のリーダーの英語 [音声DL付]
  • 発売日: 2021/01/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
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尾野七青子 都内某所で働く初老のOL兼ライター。

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