春ですねえ。「英語、頑張るぞ!」とやる気まんまんの人にもそうでない人にも、ぜひ手に取ってほしい書籍を紹介します。腰を据えてじっくり 取り組む もよし、パラパラめくってみるもよし。英語に関する情報がぎっしり詰まった、読んで損なしの1冊です。
語源を軸に「英語の知識」を増やす本
語学書としては珍しい横長のデザインで、ずっしりした重みのある本書。中にはイラストや写真、文章が、すき間なく詰まっています。
どんな本かと言われれば、英単語に関する知識を増やす本なのですが、ただゴリゴリと単語を覚えるわけではありません。キーワードは「語源」。 「その単語はギリシャ語由来なのか、ラテン語由来なのか」という点に注目して、英単語のなりたちをビジュアルで解説してくれる ため、丸暗記しなくても語彙力を高められる本です。
「なんか難しそうだからもういいや」と思った方、ちょっとお待ちを。ともかくこの印象的な誌面を見てください!
この1ページを見ただけでも、「へぇー」と思いませんか?
ラテン語由来の接頭辞ex-と、ギリシャ語由来の接頭辞ec-やex-は、どちらも「外に」という意味。education(教育)と、exotic(外来の、外国産の、エキゾティックな)は、まったく関係ないような気がしますが、もとは同じところから来ているんですね!
それにしても、ラテン語由来かギリシャ語由来か、日本の読者はあまり気にしないのではと思いますが、著者はエピローグで次のように述べています。
多くの読者にとって、由来がギリシャ語かラテン語かといった問題は、あまり意識に上ることがないかもしれません。しかし、もしこれが日本語の語源の本で、日本語の言葉の由来が漢語か、本来語である和語か、それとも西洋由来のカタカナ語かを区別せず、混同して解説しているなら、読むに値しないと感じるはずです。おっしゃる通り。例えば、「夕食、晩飯、ディナー」はすべて「夜に取る食事のこと」ですが、それぞれ語源が違い、ニュアンスも微妙に異なります。「恋人と晩飯を食べる」とはあまり言わないでしょうし、「残業したのでディナーが夜中になった」は、ないとは言えませんがちょっと不思議な感じがします。
語源を学ぶなら、やはりその種類も意識しておいた方が、あとあと役に立ちそうですね。
さらに本書では、TOEICなどのテストや英会話でも役立つ単語や表現を、語源に関連付けて紹介しています。
こちらは、先ほどのページと対になるページです。
ex-から派生してできた extra -が付く単語には、日ごろよく目にするものが多いですね。
extraordinaryは「ふつうでない、並外れた」という意味で、TOEICにもよく出る単語。また、門やフェンスなど家の外側の設備を意味する exterior は、最近では「エクステリア」として日本語でもよく使われています。
ついでに、ex-wife(前妻)やex-boyfriend(元カレ)といった表現も。ex-の後に職業や関係性を表す言葉を続ければ、ex-con(前科者)からex-president(元大統領)など、「元〇〇」を表現できるそう。 ちなみに 、ex-と、ハイフンを付けるのがポイントです。いつか使う かもしれない ので、覚えておきましょう。
「語源にこだわった本」というと難しそうな感じがしますが、 決して堅苦しいわけではなく、実用的でもある ことがよくわかりますよね!
あの単語とこの単語が、実はつながっている!
ページをめくるたび、思わず「へぇー」がもれる本書では、「あの単語とこの単語がつながっていたとは!」と驚くことがよくあります。
私が「へぇー」と思ったのはこちら。「大~」を意味するmagni-やmega-のページです。
地震のマグニチュードとマキシコートが同じ語源から来ていたとは!majority(大多数、過半数)と major (大きな、主要な)が近いのは何となくわかりますが、 majesty (尊厳、威厳、陛下)も同じなんですね。
さらに、これに続くギリシャ語由来のmega-のページを見てみると・・・。
ギリシャ語由来のmega-からは、megaton(メガトン、Mt)やmegabyte(メガバイト、MB)など、「なるほど、大きいですよね」という感じの単語が派生。
さらに、右下を見てください。サンスクリット語のmaha-(偉大な)も、magni-やmega-と起源は同じ。マハラジャ(本書ではマハーラージャと表記)の「マハ」とmegabyteの「メガ」は、もともと同じなんですね。
歴史や地名の知識も増やせる
英語圏の歴史や地理についても言及 しているのが、本書がいわゆる英単語集とは違うところです。
古英語にhamという言葉があります。現代英語のhome(家)のもとになった語で、ドイツ語のheim(ハイム)もその仲間だそう。
さて、このhamの前後にいろいろくっつけるとどうなるでしょう?
「アングロサクソンの族長Beorma」+「村」で「バーミンガム」、「サクソンの族長Snot」+「村」で「ノッティンガム」!
イギリスには~hamという地名がよくあると思っていたら、そういうことでしたか。もとは「誰々が治める村」という意味だったんですね。さらに、「アングロサクソンの族長Bucca」+「村」で「バッキンガム」。なるほど~。
また、本書にはアルファベットの歴史も載っていました。それも一文字ずつ。Dについてのページがこちら。
テントの入り口の形が三角形だったところから、フェニキア文字「ダーレト」が生まれ、ギリシャ文字の「デルタ」に進化。そしてローマ字の「D」へ。
また、「デルタ」が三角形をしていることから、delta(デルタ地帯)やdeltoid(三角筋)など、三角形を表す単語が生まれてきたのだそうです。
古代の人たちの暮らしやそこから生まれた文字・言葉が、現代にもつながっているんですね。いや~、語学ってロマンですねぇ!
こんな人におすすめ
こんな具合に、読めば読むほど「へぇー」が止まらない本書。読んでいる間、何度も「これ知ってる?」と人に話したくなり、実際に家族相手にそうして「もういいから」と言われました。
さて、この本はどんな人に薦めたら喜んでもらえるでしょう?ちょっと考えてみました。
- 英語を学び始めた小学生
- 「なんでこうなるの?」と英語に疑問が出てきた中学生・高校生
- 英語を学んでいる大学生~社会人
- ちょっと疲れてしまって英語学習をお休みしている人
- 英語を教える先生、講師
イラストや写真たっぷりなので小学生でも十分楽しめますし、中学生や高校生なら芋づる式に単語をたくさん覚えられそう。
今、ばりばり英語学習を頑張っている人が読めばさらにやる気が増すでしょうし、思ったように力が伸びず悩んでいる人にとっては、気楽に英語を楽しむ きっかけ になるかもしれません。
そして英語を教える職業の方は、この本を読んでおけば英語ネタには当面不自由しません。生徒たちがボーっとしてきとき、本書で得た知識を披露したら、彼らの目が輝くかも。
ともかく、英語を学ぶ人も教える人も、読んで損なしの本書。ぜひ一度、手に取ってみてくださいね。
尾野七青子 都内某所で働く初老のOL兼ライター。
【トーキングマラソン】話したいなら、話すトレーニング。
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