世の中に英語教材・サービスはあふれていますが、中でもNHKのラジオとテレビ(Eテレ)の語学講座はコスパ抜群。無料で聞けて、テキストも安く、短時間にぎっしりと学べます。その魅力・利点や講座ラインナップ、講座の活用法とは?小学校高学年から大学まで欠かさずラジオ英語講座にお世話になり、「英検1級への道もラジオの『基礎英語』から」を実践した、ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部員が紹介します。
目次
これを超える教材はない?!英語のラジオ番組
NHKの朝ドラ(連続テレビ小説)「カムカムエヴリバディ」は、ラジオ英語講座に関わった3世代の女性たちを描く物語ですが、それを見て、「NHKのラジオ英語講座」は、1925年に日本でラジオ放送が開始された年に始まったと知りました!
そんなに長い歴史のあるラジオ講座ですが、現代でもその学習効果は健在だと思います。 元祖にして最強 、それがNHKのラジオ語学講座なのです。
信頼できる講師陣が作った質の高いカリキュラムが用意されているのが最大のポイントの一つと言えるでしょう。そのプログラムに沿って、英語を耳から吸収し、自分でも言ってみることで、効率的に、しかも着実に力が付きます。
ほかにも魅力がたくさんありますが、ここではラジオ講座の5つのメリットを紹介します。
ラジオ英語講座の5つのメリット
【メリット1】毎日聞いて学習を習慣付けられる!
学習者にとっていちばんの利点は、わずか15分程度の番組を毎日聞き続けるだけで、着実に効果が出ること。15分なら、どんなに忙しくても捻出できそうですよね。
「たまに大量に」よりも「少しずつでも頻繁に」の方が語学力は上がることは、よく知られています。また、学習者としても実感できるところではないでしょうか?
【メリット2】いつでもどこでも!選べる聞き方
とはいえ、ラジオ講座に挑戦したことがある人はきっと知っているはずです。「わずか15分を毎日」続けることがいかに大変かを・・・。
でも大丈夫!おそらく今は昔ながらの「ラジオ」放送にリアルタイムで耳を澄ませる人は少ないでしょう。ご存じの方も多いと思いますが、今では、 ライフスタイルに合わせて選べる、複数の聞き方が用意されています。
リアルタイムで聞きたいなら、「らじる★らじる」でどうぞ。スマートフォンとタブレットでは無料アプリをダウンロードして聞けます。パソコンなら、サイトへアクセスしましょう。
▼「らじる★らじる」アプリ
▼「らじる★らじる」サイト
聞き逃した!ときにもご安心を。放送の翌週に、「NHKゴガク」のアプリやサイトで、「聴き逃し」配信を利用して番組を聞くことができます。ただし 、 1週間限定なので、必ず翌週には聞くよう注意しましょう。
▼「NHKゴガク」アプリ
▼「NHKゴガク」サイト
なお、使う人は少ないかもしれませんが、「別売CD」も販売されています。また、そのCDと同じ音声をMP3形式で、有料でダウンロードできる「音声ダウンロードチケット」というものもあります。
ちなみに私は、大昔はラジオ英語講座の放送時間に自分の生活を合わせて(!)、本物のラジオで聞いていました。夕食の時間と重なったり、風邪をひいているのに聞こうとしたりして、家族からはわりと顰蹙(ひんしゅく)を買っていました(笑)。
それでも、本当はちゃんと「毎日少しずつ」続けるのがいいと思うのですが、今では(英語ではなく別の外国語ですが)すっかり「放送の翌週の週末に焦ってストリーミングで5日分をまとめて聞く」というスタイルに・・・。「聞かないよりはまし」と自分に言い聞かせています。(しかも、それでも5日分すべて聞けない週もある・・・。昔は真面目でした)
【メリット3】毎月テキスト代たったの数百円!
実は2021年度から、テキストが値上がりしました [1]。番組によっても異なりますが、「ラジオ英語月刊テキスト」は定価495円から定価550円に。高い!と思ってしまいますが、いえいえ、それでも、 スクールに通うとかより断然安いわけです。
放送を聞くのは(機器や通信費などは必要ですが)無料ですし、テキストを買っても数百円。しかも効果が高い。これがコスパよしのゆえんです。
なお、テキストは電子版もあります。こちらは紙版より少し安価に入手できるようです。紙版550円のところ、Kindle版は459円など。
【メリット4】各界のプロが執筆する連載も充実
手頃なテキストですが、読み物の連載も載っています。毎月しっかり読めば、学習に役立つはず!
TOEIC分野でおなじみの濱崎潤之輔(HUMMER)さんも連載していました。
2022年度は例えば、「ラジオ英会話」で翻訳家の鴻巣友季子さんによる連載「名著への招待 海外文学の本棚から」が、「ラジオビジネス英語」で早川幸治(Jay)さんによる連載「TOEIC L&Rテスト Study Booster 書き込み式ドリル」が読め・使えます。
「ラジオビジネス英語」で連載が継続している「The Writers’ Workshop」は、日本語の文章を英語で表現する課題が出され、その応募作品から優秀な作品が選ばれ、講評が掲載されるコーナーです。この連載を長年担当なさっているのは、ジャーナリストで翻訳家の佐藤昭弘さん。
このコーナーは毎月読んでいましたが、やっとの思いで応募できたのは、大学生のときの数回ほど。到底、選ばれることはありませんでした。優れた作品の応募者は毎月名前が掲載され、常連の方もいて、ひそかに憧れていました!
応募できるのがもちろんいちばんですが、毎月読むだけでも、「こんなふうに英語で表現できるのか!」という大きな発見があり、勉強になります。
【メリット5】総合力が身に付き、上級までレベルアップできる
安くて内容が濃いのはわかったけど、本当に効果があるの?と思ったあなた。あります!
向き不向きはあるかもしれませんが、そもそも語学はコツコツ努力できる人が上達するもの。 コツコツ継続して聞くカリキュラムを提供してくれるラジオ講座が性に合えば、または習慣付けに成功すれば、日々少しずつでも向上し、あるとき大きな成長を感じられるでしょう。
子ども向けの講座を入れれば入門から、初級、中級、そしてほぼ上級の講座がそろっているのもポイントです。今聞いている講座が楽に聞けるようになったら「卒業」して1つ上の講座に進み、上達を実感しながらステップアップできる* からです。
これは大きなメリットですが、私はいちばん上のレベルの講座に慣れてきたとき、「次は何を使って勉強すればいいのだろう?」と、なかば本気で悩んだくらいです(笑)。(自分で出した答えは、「実際に使われている英語で学ぶ」でした)
さらにすごいのは、「リスニング」はもちろん、「スピーキング」「語彙」「文法」のスキルや知識も身に付き、ひいてはそれが 「リーディング」「ライティング」力の土台につながっていく点です。
15分間に、これだけ充実した内容が詰まっているのは驚異的だと思います。15分だからこそ、経験豊富な講師たちが練りに練ったカリキュラムを組んで、学習者であるリスナーを迎え入れてくれているとも言えるでしょう。
ラジオ講座を聞き続けつつ、 英語のニュースや映画、ドラマ、小説、SNSなどに触れれば、相乗効果で英語がわかるようになっていきます。
レベルやジャンルで選べる!おすすめのラジオ英語講座
NHK語学講座では、 「CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)を土台にNHKが独自に設定した『A1』から『C1』までのレベルの講座」 [*2]が用意されています。
「英会話タイムトライアル」
スティーブ・ソレイシィさんが講師を務める、日常英会話を練習できる1回10分の講座です。悩んでしまって言葉が出てこない人のために、テンポよく話せるようになるコツを教えてくれます。楽しいトレーニングにチャレンジ!
【放送】NHKラジオ第2、月曜~金曜 午前8:30~8:40
【再放送】NHKラジオ第2、月曜~金曜 午後11:00~11:10ほか
「ラジオ英会話」
大人気講師の大西泰斗さん(東洋学園大学教授)による注目講座がパワーアップして継続。英文法の知識をスピーキングにつなげるための、親しみやすくわかりやすい解説が盛りだくさんです。語彙・文法と、ネイティブの英語イメージも身に付きます。
【放送】NHKラジオ第2、月曜~金曜 午前6:45~7:00
【再放送】NHKラジオ第2、月曜~金曜 午後0:25~0:40ほか
「ラジオビジネス英語」
神田外語大学特任教授の柴田真一さんが講師を務める「ラジオビジネス英語」。会話に加えて、メールの書き方も学べて、識者のインタビューでリスニングもできます!言いたいことを的確に、過不足なく表現するための実践的なテクニックが学べます。
【放送】NHKラジオ第2、月曜~金曜、午前9:15~9:30
【再放送】NHKラジオ第2、月曜~金曜、午後0:40~0:55ほか
いかがでしたか?
ほかにも、1日5分、ナビゲーターの関根麻里さんと一緒に英語のストーリーを聞いて学習できる 「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」 、5分で単語が学べる 「ボキャブライダー」 、 「中学生の基礎英語」 などが開講されています。気になる番組は、どれですか?聞くのはタダです!面白そうと思った講座をまずは試してみましょう。
番外編:杉田敏さんの「実践ビジネス英語」など過去コンテンツで学ぶ方法
放送中の番組で学ぶからこそ学習を継続しやすいとは言えますが、NHKラジオの語学講座は過去の番組にもよいものがたくさんあります。
その筆頭が「実践ビジネス英語」でしょう。杉田敏さんの講座を聞きたい!懐かしい!終わっちゃって悲しい!杉田先生ロス!という方には、ムック『杉田敏の 現代ビジネス英語 2022年春号』がおすすめです。2021年3月、6月、9月、12月の年4回刊行予定。 最新ビジネス事情を反映した書き下ろしのビニェット* で学べます。番組放送はありませんが、音声をダウンロードできます。
また、これも有料ですが、 NHKの語学学習アプリ「ポケット語学」を使う手もあります。月額または年額のサブスクリプション(定期購読)型。コンテンツは、過去に放送されたNHK語学講座のテキストとCD音声を編集・再構成したものです。2022年4月現在、「ラジオ英会話」「入門ビジネス英語」「実践ビジネス英語」「中学生の基礎英語」など、6講座が収録されているそうです。
▼有料アプリ「ポケット語学」
ラジオ英語講座のおすすめ学習法
継続できれば、ラジオ英語講座は入門レベルから初級、中級へとステップアップするのに役立ち、そして上級への橋渡しをしてくれるでしょう。講座の活用法はさまざまですが、一例として、私が実践して効果のあった、おすすめの方法を紹介します。
【1】2つか3つの番組を同時期に聞く
1つの番組を聞き続けられるようになったら、レベルが隣接する2つか3つの番組を聞くようにしてみましょう。 少し簡単に感じられるもの、自分にちょうどいいレベルのもの、少し難しいもの* 、というふうに3つを聞くのです。
簡単な番組は、あまり文字を見ずに、耳から聞こえる英語を口に出したり、スキットなどを暗唱したりする。自分にちょうどいいレベルの番組は、正確な聞き取りを目指して全神経を集中する。難しい番組は、復習を手厚くする。というように、 レベルごとに力の入れどころや学習法を変えてみると、多角的に英語力を鍛えられます。
ちょうどよいレベルだった番組が簡単に感じられるようになったら、さらに 上のレベルの講座にスライドしましょう。そうして1つずつステップアップしていくことができます。
【2】聞く前にスクリプトは見ない
予習として、番組を聞く前に英文に目を通す、のは少しもったいないです。
もちろん、歯が立たない講座であれば、全然わからなくて挫折するより、 事前に内容を確認して講座に臨む方がいいでしょう。
しかしそうでなければ、事前準備ではテーマを確認するくらいにしておいて、スクリプトは見ないで音声を聞き、どのくらい聞き取れるかをチェックして、学習を進めるのが効果的です。その方が緊張感を保てますし、徐々に聞き取れるようになっていくことに気付きやすくなります。
また、聞き取れなかったところは気になるので、英語を文字で確認し、解説を聞く・読むと、頭に入りやすいでしょう。
【3】番組中は、聞こえてくる英語をすべて声に出す
「リピートしましょう」と言われたらリピートするのは当たり前!
最初にスキットなどを聞くときは聞くことに集中しますが、その後は、ただ聞きましょうと指示されたところでも声に出したり、解説中の英語の部分を言ってみたりと、口と舌をフル稼働させることをおすすめします。
【4】声に出してじっくり復習
復習は欠かせません。15分の番組でも、聞いた直後に10分くらいは復習に使ってもいいと思います。
解説を読み返すのはもちろん、英語の部分は、フレーズの部分も含めて、すべて音読しましょう。音読が大事ということは言い古されていますが、それだけ真実なのです(笑)。
音読せずに外国語を身に付けるということがどういうことなのか想像できなくなるほど、音読を繰り返してみてください。音読は(きっと)裏切りません!
【5】ラジオ講座以外にも英語を聞く・読む
ラジオ講座を聞く「だけ」でも素晴らしいのですが、やはりそれだけでは足りません。
英語の ニュースサイトや映画、ドラマ、本、音楽など、楽しめるものや関心のあるものに触れることで、 講座に出てきた表現や構文やテーマに再会できて、学びが定着します。
もちろん、それらに加えて、語彙力や文法力、読解力を磨くこともとても大切ですね。その点、学校の授業や受験勉強の暗記や問題演習もかなり役立ったと思っています。
気軽に楽しむ!英語のテレビ番組
肩肘張らずに週1回から数回、なんとなく見るだけでも、少しずつフレーズが頭に入ってくる!のが、テレビの講座のよさ。入門レベルから無理せず英語に親しめます。
「こういうときはなんて言うのでしょうか?」「この表現の意味は?」と 問い掛けられたときにきちんと考えて言ってみる と、学習効果が増します。
テーマや出演者で選べる!おすすめのテレビ英語講座
「この芸能人が好き!面白い!」という興味から英語講座を視聴するのもアリです。ポジティブな気持ちが継続につながります。
「太田光のつぶやき英語」
「ひとつのつぶやきから 世界が見える!」がキャッチフレーズ。SNS(Twitter)の投稿を題材に、身近なことから世界で起こっていることに迫ります。解説は、同時通訳者として活躍した、立教大学名誉教授の鳥飼玖美子さん。
爆笑問題の太田光さんは、最後のつぶやきを英語で言えずに日本語で言って訳してもらっていますが(笑)、英語とともに今はやっていることを深く考えていきます。SNSで英語を使うことが目標という、女優の森川葵さん も出演。
「文法などが間違っていても、まずは伝えてわかり合うことが大切」と鳥飼さんが繰り返し説く、心優しい番組です。
※テキストはありません。
【放送】Eテレ、土曜 午後10:30~23:00
【再放送】Eテレ、金曜 午後2:30~3:00
ほかには、「エイゴビート2」や「キソ英語を学んでみたら世界とつながった。」が開講されています。
講座選びに迷ったら「NHKテキスト英語力測定テスト2022」に挑戦!
どの講座を選べばいい?自分に合った講座は?そんなふうに悩んだときは、 *無料で受けられる英語力測定テストで、ぴったりなテキストを探してみましょう。
▼NHKテキスト英語力測定テスト2022
▼NHKテキストホームページ:「2022年度 英語テキストマップ」が見られます
春、毎日少しずつ日常生活に取り込めるラジオ・テレビの語学講座で、英語学習の新たなスタートを切ってみませんか?
リスニング・スピーキング関連のおすすめ記事
▼杉田敏さんと大西泰人さんが語る、耳で英語を学ぶことの重要性や、Podcast やラジオを使った効果的な学習方法
[*2]: https://dls.nhk-sc.or.jp/user_data/course_level(https://dls.nhk-sc.or.jp/user_data/course_level)
[*3] :「各資格・検定試験とCEFRとの対照表」(文部科学省)(https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/03/__icsFiles/afieldfile/2019/01/15/1402610_1.pdf)
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