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「Dry January」で始まるイギリスの1年【LONDON STORIES】

「Dry January」で始まるイギリスの1年【LONDON STORIES】

「多文化都市」と呼ばれるイギリスの首都ロンドン。この街で10年以上暮らすライターの宮田華子さんが、日々の雑感や発見をリアルに語ります。

12月は日本もイギリスもごちそう&お酒ざんまい

明けましておめでとうございます。今年も「楽しいけれど、ちょっと変てこ!?」なロンドンを生活者目線で紹介できたらと思います。本年もどうぞよろしくお願い致します。

 

「1月からダイエット」と宣言する人が多いのは、日本もイギリスも同じだ。12月頭からパーティーやディナーで散々飲み食いするので、クリスマス前から体はふっくらし始めているのだが、こんなのはまだ序の口。

先月号に書いたとおり12月24日の夜から26日のボクシングデーまで、人々は家から一歩も出ることなく高カロリーかつ糖質たっぷりのごちそうを食べ、お酒を飲み続ける。これで太らないわけがない(笑)。クリスマス終了時にはすでに大変なことになっているが、この時点では「即ダイエット!」とはならない。

理由は簡単、パーティーシーズンの締めは大みそかなので、この段階でダイエットを開始しても無意味だから。だぶつくおなかをひとまず見なかったことにして、大みそかまでに「動くのもツライ」状態から「ダンスができる」程度まで体調を整える。

「今年こそダイエット」という目標を毎年立てている

クリスマスは「家族の日」だが、大みそかは「友人たちとパーティーをする日」。大みそか前には実家から普段生活する場所に戻り、いつもの友人たちとカウントダウンを楽しむ。2021年は元日が金曜日なので、初出勤は1月4日の人が多いが、例年は1月2日が仕事始めだ。元日の朝方までパーティーを続け、元日は二日酔いに苦しみ、翌日は重過ぎる体をなんとか引きずって出社する。

わが家は日本人2人家族なのでクリスマスに「実家に帰ってごちそうざんまい」ではないものの、この国の年末飽食スケジュールはしっかり体得している。毎年イギリス人同様、深い後悔と共に新年を迎えている。

1月に友人に会うとたいてい「New Year resolution(新年の決意、目標)」の話になるが、ほぼ全員、「今年“こそ”〇キロ痩せる」「今年“こそ”ジムに週〇回行く」など、ダイエット関連の目標が入っていて笑ってしまう。1月はスポーツジムの新規入会者が多い月であり、公園もいつもよりランナーが増える。

「Dry January」だから“今日は”飲まない

加えてここ数年は「Dry January を実践中だから“今日は” 飲まない」と言う人にもよく遭遇する。Dry January とは、「1 月は禁酒しよう」という試み。2013年に飲酒習慣の改善推進するチャリティー団体「アルコール・チェンジUK」が始めたキャンペーンだ。

同団体はDry Januaryを「1カ月間の断酒は、依存症の防止と節約につながる。ライフスタイルを変えるきっかけにしてほしい」とうたっている。しかし耳なじみのよいこの言葉はやや独り歩きし、2016年ごろまでに「飲み過ぎた12月を反省して1月は断酒する」という意味で定着した。本来の意図とは少々ニュアンスが異なるものの、よい習慣として受け入れられている。

ダイエットは通年での目標だが、断酒は「1月だけ」として広まっているところが大酒飲みの国イギリスらしくてほほ笑ましい。大みそかのカウントダウンパーティーは「痛飲」レベルまで飲むものなので、元日には「もうお酒はしばらく見たくない・・・」と本気で思っている人が多い。だから1カ月間の断酒を決意するのはとても簡単。しかしすぐには減らない体重とは違い、断酒はある程度頑張るだけで「なんだかスッキリした!?」と錯覚するものなので、そんなに長くは続かない。

「Dry January」で始まるイギリスの1年【LONDON STORIES】

アルコール・チェンジUK のアプリ「TRY DRY: The DRY January」。断酒日数と節約金額が一目でわかる。

お酒好きなイギリス人は、パブが第二のわが家

この連載で何度かお酒の話を書いているが、イギリス人は本当によく飲む。パブを第二のわが家として生きている人たちなので、若い頃から鍛え方が違うのだ。私は来英時ほぼ下戸だったが、居住期間が長引くとともに鍛えられ、現在はビールもワインも1、2杯ならおいしく飲めるまでに成長(?)した。お酒が飲めるようになったことで、イギリス生活の「魅惑の扉」がもう一つ開いたようにも感じている。

とはいえ健康も気になるところ。最近イギリスでも低カロリーのワインがやっと出始めたが、まだ浸透するまでには至っておらず、日本ではどこでも買える糖質オフのビールも見たことがない。糖質制限はイギリスでも流行しているので、「糖質オフのビールがイギリスにもあればいいのにね」とパブ友に言ったところ、全員が声をそろえて「そんなんだったら飲まない方がマシ!」と一喝されてしまった。

散々飲んだ後に休肝月間を設け、ちょっとヘルシーな気持ちになるくらいがイギリス人にはちょうどいいらしい。残りの11カ月間は再びカロリーは度外視、気にせずグビグビ飲んでいる。

「Dry January」で始まるイギリスの1年【LONDON STORIES】

テムズ川の花火を眺めつつパーティーをして年明けという人は多かったはずなので、今年はちょっと寂しい。

この原稿を書いている11月現在、ロンドンはロックダウン中だ。12月1日までの予定だが、その後の制限はまだ発表されていない。恒例のテムズ川沿いでの新年の花火は中止が決定。大みそかにパーティーが可能かもまだわからず、2021年をどんなふうに迎えるのか現段階では不明だ。しかしこんなときだからこそ健康第一。元気に1年過ごせるよう、私も“1 月は” 節制して過ごそうと思う。

イギリスのロンドンってどんなところ?

イギリスの首都ロンドンはイギリス南東部に位置し、さまざまな人種・文化・宗教的背景の人たちが住んでいる「多文化都市」。ビッグベン、大英博物館など観光スポットも満載。

写真:宮田華子(アプリ)、Kevin Hackert(花火)

※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2021年2月号に掲載した記事を再編集したものです。

宮田華子(みやた はなこ)ライター/エッセイスト。2002年に渡英。社会&文化をテーマに執筆し、ロンドン&東京で運営するウェブマガジン「matka(マトカ)」でも、一筋縄ではいかないイギリス生活についてつづっている。