屋外席の流行、食料品の配達・・・ニューヨークの食の「今」をイラスト付きでレポート!

11月に行われるアメリカ大統領選を踏まえ、「アメリカの今」というテーマでお届けしているシリーズ。今回は、「アメリカの食の今」と題して、ニューヨーク在住の漫画家ヤマモトさんに、コロナ禍の中で変化するニューヨークの食事情を、描き下ろしのイラストとともにレポートしていただきます。

日本食スーパーで働きながら、ニューヨークの魅力を発信

皆さんこんにちは!

ニューヨーク在住のヤマモトと申します。福岡県出身の31歳です。

2017年の春にニューヨークにやって来ました。 日本食スーパーで社員として働きながらInstagramやWEB雑誌で漫画を発表しています

急な仕事の異動でやって来たニューヨークは、もともと縁もゆかりもない街でした。ですが、 生活していくにつれてこの街とここで暮らす人々にすっかり魅了されてしまい 、その魅力を皆さんに伝えたいという思いの下、生活していく上で起こった面白い出来事を漫画にして発表しています。

漫画を制作する上で、「日本食のスーパー」という職場がキーとなっています。職場には毎日本当にいろいろな人が来ます。年齢・人種・職業・見た目もさまざま。どんな人でもおなかが空くからです。慣れた様子で商品を選ぶ日本人もいれば、今までほぼ日本食を食べたことがなく、戸惑いながら買い物をしている人もいます。そんな皆さんを支えるのが私たち店員の仕事です。だからこそ、思わぬ人との思わぬコミュニケーションが生まれやすいのです。

ニューヨークに来る前は、デスクワーク中心のいわゆるOLを東京で5年間やっていました。今はまったく異なる仕事内容ですが、 ニューヨークの日本食を愛する人々を支えるべく、日々個性豊かな 同僚 たちと奮闘しています

スーパーでの買い物も様変わり

2020年3月、すさまじい勢いで広がるコロナウイルスの猛威によって街は様変わりしました。アメリカ国内でも感染者数が圧倒的に多かったニューヨークではいろいろなビジネスが営業停止になり、レストランやバーはデリバリー・持ち帰りのみの営業に制限。住民は家の中にいることを余儀なくされました。テレビでは毎日クオモ州知事による会見が放送されていましたが、感染者・死者ともに勢いは増すばかり。

そんな中でも職場はスーパーなので閉鎖対象にはならず、毎日電車に乗ってマンハッタンまで通っていました。いろいろな企業がリモート勤務に切り替える中、日々、電車に乗る人数が減っていき、明らかに目つきのおかしい人や挙動不審の人に出くわすことも増えていきました。人が減ったことでそういう人が目立つようになったのでしょう。

それにしても、あんなに自由で人の目を気にしないニューヨーカーたちがそろってマスクを着けている光景なんて誰が想像したでしょうか。 本当に異様なことが起こっているというのを日々肌で感じました。

スーパーでは私の職場を含めてレジにシールドが付けられ、場所によってはお客さま用にグローブや消毒液が設置されました。入場者数を制限することで社会的距離が保たれています。私の職場もランチタイムは人がいっぱいでしたが、そのようなことも一切なくなりました。その代わり、外に行列を作る姿が目立つようになりました。

また、感染対策として現金の取り扱いを一切中止する場所も増え、代わりにApplePayなどの接触の 少ない オンライン決済を選ぶ人が増えました。

私の職場では、圧倒的に グロサリー(食料品)の配達依頼が増えました 。グロサリーを毎週オーダーする方も増え、すべてをオンラインで補い、外に出ることは一切しない人が増えたのだと推測しています。米国スーパー大手の Whole Foods Marketに入ると、お客さまの代わりに商品を集める人が忙しく働いているのが見えました。街の異様さに比べて職場のスーパーは常に忙しく、家にいる時間が増えたことで自炊する人が急に増えた印象です。

レストランでは屋外席が流行したものの・・・

レストラン・バーの屋内での飲食はできなくなってしまいましたが、感染が少し収まってくると、屋外での食事のみが許可されました。3月は死んだように静かだった街にも徐々に人が戻ってきて、 初夏の頃から、ニューヨークのレストランは競って屋外での席の準備に力を入れ始めました 。屋外席は、ただ椅子とテーブルを置いただけの席から、植物や屋根を設置したすてきなものまで、多種多様です。座って会話と食事を楽しむ人が多く見られるようになりました。

しかし、外の席だけの営業では天気に振り回されてしまい心もとなく、見た目はにぎわっていても以前と同じような 売上 を保つのは難しいようで、いくつものレストランやバーが閉店を余儀なくされ、跡地が空になってそのままになっています。

屋外での食事のみでビジネスを続けることはニューヨークの冬の寒さでは難しく、秋には屋外営業は終了するという話でしたが、 9月になってようやく屋内での食事が許可されました

しかし、その条件もとても厳しく、最大収容人数の4分の1以下の人数しか店内に入れられず、入店時の検温や代表者の連絡先の通知なども必要になるようです。待ち時間も発生することが 予測 できます。長く、 厳しい ニューヨークの冬。 今年の冬を耐え抜くのはかなり難しい状況になることは間違いなさそうです

刺し身のテイクアウトまで登場!

厳しい 状況下で経営者たちが考えたのは食事のテイクアウトです。 刺し身やラーメンなど、テイクアウトが難しそうな商品もあの手この手で販売

また、完成品ではなく、客が一手間加えて完成させるピザやパンなど、家族みんなで手作り感覚を楽しめる商品も見られました。

街にはデリバリーの四角いリュックサックを背負った人が多く見られ、また、食品デリバリー事業自体も増えて、需要が大きくなっているのが感じられました。また、一切お店とコンタクトすることなくピックアップできるサービスなど、お店側も極力接触が減るように工夫をしています。

New York will come back.

ニューヨークのレストランやバーがとても 厳しい 状況にあるのは間違いありませんが、近頃、会う人会う人が口にするフレーズに “New York will come back.” というものがあります。

どんなに大変な状況でも、 ニューヨークはまた復活する という意味のこの言葉。同時多発テロやハリケーンといったつらい出来事を乗り越えてきたニューヨーカーたちが言うと、説得力があってなんだかほっとさせられるのです。

人とのつながりや地元のコミュニティーを大事にするニューヨーカーたち。この状況になっても 悲観的にならず、それぞれが新しくできることを工夫して考え、新たな定番として定着させられるよう前向きに切り替えて生きていっている 印象です。

私も渡米してまだまだ日は浅いけれど、この街の一部なんだという意識を持って仕事を頑張りたいと思います!

皆さまも感染対策に注意してお元気に過ごしてくださいね。

アメリカの「今」に迫る『ENGLISH JOURNAL』2020年11月号

ヤマモト ニューヨーク在住、1989年生まれ、福岡県出身の31歳独身女性。イケてない学生時代の経験と元の陰気な性格により、卑屈で疑り深い、要はめんどくさい性格である。東京で5年間働いた後、2017年からニューヨーク勤務。職場であるスーパーでの勤務中に起こる面白い出来事や、普段考えていることをInstagramやWEB雑誌で漫画にして発信中。好物は餃子とビール。趣味は漫画を描くこと、映画を観ること、筋トレ。絶望的に胃腸が弱い。
Official Website: https://www.yamamotoinnyc.com/
Instagram : https://www.instagram.com/yamamotoinnyc/

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