大学や英語専門学校で英検やTOEIC対策などを教える、Joyこと和泉有香さん。英検1級では優良賞を受賞し、TOEICでは満点を 取得した実力のカギは「語彙が豊富であること」だと言います。連載「英検1級の語彙を極める」では、語彙の魅力を徹底的に、わかりやすく、楽しく、カジュアルに教えます。5回目は「熟語」を掘り下げます。
英検1級のさりげない刺客「英熟語」を掘る
皆さん、こんにちは。Joyこと和泉有香です。さて今回は大問1の最後にさりげなく送り込まれる刺客・英熟語を掘ることにします。「4問だけだし勉強のしようもないので、英熟語は諦める」という勉強法(?)があるといううわさを聞いたことがあります。
しかし、ほかで正解数を稼ぐ自信がある受験者ならともかく、「滑り込みでいいから合格したい(涙目で合掌)」人や1問でも多く正解して「3000点CSEスコア *1 を取りたい(両手で握りこぶし)」人には重みのある4問です。そもそも英検1級合格を目指すなら大問1の25問中20問は絶対に正解したいところですし。ええ、20問は何が何でも。(←大切なことなので2回書きました)。そう考えると無視できないのが英熟語問題ですね。
「感覚系」熟語
単語はともかく、熟語はほんとに覚えられないんですよおぉ?、となぜか胸を張っているアナタ! 「なんでコレがこういう意味になるわけ!?」とツッコんだことはありませんか?
それです! そのツッコミこそが理解への糸口です。実は英熟語は英語への理解を深める大きなチャンスなんです。
「八百万(やおよろず)の神」や「江戸八百八町(えど・はっぴゃくやちょう)」で使われる「八百」とは実際の数ではなく「数が多いこと」の例えだと、日本語の知識が豊富な人間であれば判断できますね。英熟語の理解にもそれに近い感覚が必要になってきます(おお、いかにも英検1級っぽくてゾクゾクしますな!)いきなりですが、
leaf through
・・・という動詞句はどうでしょう? 先回りして単語本を調べると「(本などのページを)パラパラとめくる」という意味だと書いてあります。「丸覚え」は非常な美徳だと私は思っていますが、できれば理解して覚えたいのが人情なので、ちょっと立ち止まって考えてみましょうか。
leafはここでは動詞として使われていますが、名詞ではもちろん「葉っぱ」です。なんかこう、ピラピラしたものがたくさん、みたいな感覚。ここでハッと「ああ、本や雑誌のページが”葉っぱ”みたいなものか」と気付けばしめたものです。実際に名詞leafには「ページ」の意味があります(チラシや小冊子のことをleafletと呼ぶよなあ、と思い至ったアナタ、超センスがいいですね!^^)。 throughは最初から最後までず?っと貫き通す感じ。
・・・となると、すでに頭の中で動画が再生されていますね。「本のページを最初から最後まで(かどうか、知らんけど)パラパラと軽くめくって目を通す」のがleaf throughなわけです。
私たちのいつもの相棒・無料のオンライン辞書 Oxford Learner’s Dictionaries(OLD) でも leaf と through 、そして leaf through の3つを調べておくとさらに多くの知識に出合えますよ。
では感じをつかみやすい「感覚系」熟語をいくつか挙げてみますので、頭の中で動画が再生されるかどうかチェックした後、意味を確認してください。
waste away
bank on
chime in
fall through
boil down to
gloss over
さて、動画は再生されましたか? 簡単に感覚的に解説していきましょう。
熟語 | 意味 | 感覚 |
---|---|---|
waste away | (人・動物などが病気で)衰弱する、?を浪費する | wasteは「?を消耗する、無駄にする」、awayと共に用いられると“減っていく”感じ。 |
bank on | ?を当てにする | bankは名詞で「高い土手、岸」の意味。そこに on「依存している」。 |
chime in | (会話などに)割って入る | chime「チャイム」を鳴らして、in「入ってくる」。 |
fall through | 失敗に終わる | fall「倒れる」状態でthrough「終わってしまう」。 |
boil down to | 要約すると?ということになる | boil down「煎じ詰める」んです、to~「?というところまで」 |
gloss over | もっともらしく言い繕う | over「?に」、gloss「光沢をつける」んです。実際よりも盛る感じ。 |
「単語知識系」熟語
こちらの方は熟語の中心になっている単語の意味を知っていればどうにかなるものが多いため、覚えれば覚えるだけ即戦力となってくれます。いくつか例を挙げましょう。
熟語 | 楽勝ポイント | 意味 |
---|---|---|
spruce up | spruceを知っていれば楽勝 | 身なりを整える |
hunker down | hunkerを知っていれば楽勝 | しゃがみ込む、本腰を入れる |
eke out | ekeを知っていれば楽勝 | (生活を)辛うじてやりくりしている |
simmer down | simmerを知っていれば楽勝 | 静まる |
scrape together | scrape を知っていれば楽勝 | (苦労して金や人などを)かき集める |
さて。
「諦める勉強法」がある、と最初に紹介しましたが、こうして整理すると「単語のイメージをつかむ」ことと「それほど難しくない単語を覚える」ことが秘訣(ひけつ)っぽいので、ちょっとした努力で熟語問題に全勝できそうな気がしませんか? (私はそう信じています)これを読んだ皆さんはぜひ4問をカモにしてくださいね。
ところで上に挙げた12個の英熟語はいずれも比較的近年に出題されたものばかりです。もし知らないものがあれば、今この瞬間に覚えることを強くお勧めいたします。(言葉は刻一刻と変遷していくとは言え、一度覚えるとおそらく一生そのまま使えます ^^)
次回はいよいよ最終回です。英単語はいくら頑張って覚えても、まだ知らないものがある世界。学習者にとっての永遠の課題「知らない単語に出くわしたらどうするか?」について掘っていきます。ほかに、第1回から第5回の間に書けなかった小ネタも放出しますね。どうぞお楽しみに!
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