大学や英語専門学校で英検やTOEIC対策などを教える、Joyこと和泉有香さん。英検1級では優良賞を受賞し、TOEICでは満点を取得した実力のカギは「語彙が豊富であること」だと言います。連載「英検1級の語彙を極める」では、語彙の魅力を徹底的に、わかりやすく、楽しく、カジュアルに教えます。最終回の6回目は「知らない語彙をどう料理するか」を掘り下げます。
永遠の課題「知らない語彙をどう料理するか」を掘る
皆さん、こんにちは。Joyこと和泉有香です。さて最終回の今日は、英検1級受験者のみならず英語学習者にとっての永遠の課題「知らない語彙をどう料理するか」を掘ってみたいと思います。今回も無料のオンライン辞書 Oxford Learner’s Dictionaries(OLD) を相棒に話を進めていきましょう。
「必要な語彙は全部覚える」のが基本中の基本ですが、1万語から1万5千語と言われる英検1級合格に必要とされる語彙(1万語と1万5千語って大違いやんっ!というツッコミはちょっと置いといて・・・)を完全習得するのはご存知のとおり至難の業です。
本番の試験で知らない語彙に出くわすことはほぼ確実。だからと言って「知らないも?ん♪」と諦めていては合格できません。ガラスの壁に爪を立てても登って行っちゃる!という気概とそのための手立て、そして読解力が必要です。その「手立て」の1つをご紹介するのが本日の1つ目のメニューです。
「接頭辞+語幹+接尾辞」の知識と「別品詞」の知識
さてここで1つ、告白しようと思います。ワタクシ、英検1級合格時に「優良賞」なるものをいただいておるもので偉そうにこういう記事を書き散らかしておりますが、実は大問1(語彙問題)の正解数は21問でした・・・。合格者の平均正答数よりも少なかったかもしれません。さらに忘れもしませんが、恥ずかしながら単語を知っていて正解した問題は11問。あとの10問はこれから書く知識でガラスの壁に爪を立ててよじ登り、正解に、そして合格にたどり着きました。そのほとんどは何かと言うと
「接頭辞+語幹+接尾辞」の知識
と
「別品詞」の知識
・・・です。平たく言うとアレです。
undeniableを「un-(否定を表す接頭辞)」+「deny(?を否定する)」+「-able(可能を表す接尾辞)」分解するアレと、「distortの名詞形がdistortionね」みたいなアレですな。
最近の出題語彙から前者の例を出してみましょうか。
「接頭辞+語幹+接尾辞」の知識
単語 | 接頭辞 | 語幹 | 接尾辞 |
---|---|---|---|
antithesis 正反対(のもの)、 対照(物) | anti- 反?、対?、抗?、非? ※反対・敵対・抵抗・排斥を表す | thesis 命題、主張 ※ちなみに複数形は theses です | |
submersion 水没、潜水 | sub- 下の、副? | -sion 名詞を表す接尾辞 | |
condescending 見下すような、 上から目線の | con- ( = com-) まったく | descending 下っていく、 下向きの | |
insurmountable 乗り越えることができない | in- 「無?、不?」 ※ surmount 「乗り越える」・・・なんかこう、「お山を超える」感じがします | -able 形容詞を表す接尾辞 |
「別品詞」の知識
「別品詞」の知識の例も最近の出題から少し挙げておきましょう。
・ renunciation 「放棄、断念」
ははぁ?ん、renounce「?を放棄する」の名詞形だな、と気付きますか?
動詞つづり-nounが名詞つづりになると-nunになる例は、ほかにも「 pronounce (発音する)? pronunciation (発音)」などがありますね。
・ exemplary 「他の模範となる、称賛すべき」
これは毎度おなじみ example 「例」の形容詞形ですね。(この語も母音部分が変化しています。)ついでに動詞形の exemplify 「?のよい例となる」も覚えておきたいところです。と、こんな感じです。
接頭辞と接尾辞は主要なものだけでも覚えておくと、イザというときにアナタの身を救ってくれます。
別品詞に関しては、高1の時、英語の先生が「名詞・動詞・形容詞・副詞の4つをセットにして覚えておくと語彙が驚異的に増えるから、そうしなさいね。」と繰り返し言っておられましたなあ、そう言えば。(遠い目)その当時はまさか自分が将来、英語を教えるヒトになるなどとは夢にも思わず「あ、そ。」と聞き流しておりましたが。今になってみれば正しく、かつ貴重な助言だったなとわかります。溝端先生、アリガトウ!
さて残り字数も少なくなってきたので、ココからは第1回から第5回までに書けなかった小ネタを箇条書きにしていきますね。
急がば回れ系
・画像検索する!
「なかなか覚えられない語」はGoogleで画像検索を!名詞だけに限らず動詞や形容詞もぜひ。どの単語を引いても見事に画像化してあって感心します。 「文字」ではなく「カラー画像」のインパクトは強烈なので、頭に焼き付きやすくなる ことでしょう。
・耳単語!
「見ても書いても覚えられない語」は耳から! 主要な単語集には音声が付属していることが多いので、使わない手はありません。通勤・通学時に電車内で本を開きにくい方は特に「耳読書」ならぬ「耳単語」をぜひお試しください。「あれ? 覚えたつもりはないのに覚えてる!」と驚く方も多いはずです。
ちょい耳寄り情報系
・過去問が再出題される!
良いか悪いかはともかくとして、英検にはReadingにもListeningにも過去問が出題されます。最新6~9回分の問題は本と 英検サイト で簡単に手に入りますが、もう少しさかのぼって解いておくとお得かも。
古本屋(BOOK○FFのような・・・伏字にほぼなっておりませんが)を探すと、運が良ければ超安価で古い問題集に出合えます。また学校や近所の図書館の閉架図書に古い問題集が収められている可能性も大です。開架図書とは違って本棚には並んでいないので、ぜひ係の方に尋ねてみてくださいね。
・どの語彙が出されたか知りたい!
まずはTwitterで「 出た単 英検1級 」をフォローしましょう。「○回出題された」「○回正解になった」という情報が最新の状態に保たれていて、その情熱に頭が下がります。「おお、これは!」と気に入った方にはiPhoneアプリ(有料)もあります。
・接頭辞・接尾辞について知りたい!
ぜひTwitterで「 英・語・源 」をフォローしてください。私のような「なんちゃって」ではなく、正確な知識を提供してくださっています。 PCサイト「英・語・源」 ではさまざまな語の成り立ちを検索することもできるので、活用しない手はありません。
さて、9月から6回にわたって連載してきた「英検1級の語彙を極める」もこれにて終了。たくさんの方々にお読みいただいたことに心から感謝しています。果たして「極める」お手伝いができたかどうかは自信がありませんが、1級に挑戦される方だけではなく準1級や2級を受験される方にも学習のヒントと情報を少しばかりご提供できたかな、とは思います。
これからも皆さまの英語学習の道に苦難はあったとしても、楽しく実りあるものとなりますように。そしてまたいつかどこかでお目にかかれますように!^^
大好評につき、本連載がEJ新書化!
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