スウェーデンにも「本音と建前」文化が!?外国人の日本茶インストラクターが語る「母国の魅力」「英語力が高い理由」

連載「スウェーデン人ブレケル・オスカルの 僕と日本茶しませんか?」では、日本茶インストラクターであるブレケルさんが、自身のことや語学、日本茶について語ります。第1回は、「スウェーデンと日本の文化比較」「スウェーデン人の英語学習法」「スウェーデンのおすすめ観光スポット」です。来日して発見した両国の意外な共通点とは?

日本茶インストラクターのブレケル・オスカルです

ENGLISH JOURNAL ONLINEの読者の皆さま、初めまして。スウェーデン出身の日本茶インストラクター、ブレケル・オスカルと申します。

このたびは3回に分けて記事を書かせていただくことになりました。この第1回は、私の母国であるスウェーデンの生活や国としての特徴、そしておすすめの観光スポットについて書きたいと思います。英語をどうやって学んだのかについても少し触れます。

次回は、日本語の勉強や日本のことを中心に書き、最後の回は私の本業でもあり、生きがいとも言える日本茶について読者の皆さまにご紹介します。お付き合いのほど、 よろしく お願いいたします。

スウェーデン人から見た同国の最大の魅力

スウェーデンといえば、まずはIKEA(イケア)やVolvo(ボルボ)、H&Mなどの世界的に有名な企業を思い浮かべる人が多いでしょう。

世代によってはABBA(アバ)やThe Cardigans(カーディガンズ)の曲も脳内で再生され始めるかもしれません。ストリーミング技術で音楽の世界を変えたSpotify(スポティファイ)がスウェーデン発の企業であることからも、音楽が大好きな国民性がうかがえます。

ほかに代表的なイメージとしては、ノーベル賞や福祉国家なども挙げられます。

しかしスウェーデンで生まれ育った私に言わせると、国としての魅力はライフスタイルと生き方にあるように思います。

ワークライフバランスや女性の社会進出などは、日本のメディアにもそれなりの頻度で取り上げられていますよね。

逆にめったに聞かないのは、両国を比較して、日常生活において親近感を感じさせる共通点と、やはりまったく違うなと断言したくなるような場面です。せっかくのなので、驚きの具体例を紹介しましょう。

自室のラグを土足で踏まれた!

10年前に岐阜大学に留学したときのことです。暮らしていた寮で、ある事件が起きました。

アメリカ人の友人が資料を渡しに来てくれたのですが、なんと断りなく土足で部屋に入られました。しかもフローリングだけでなく、ラグまで何げなく踏まれて大ショックでした!

相手は悪気を持ってやったわけではないので、いくら心の中のマグマが動いているからといって、その場で噴火しても仕方がありません。もはや我慢勝負というか、とても複雑な気持ちになりましたが、なんとか爽やかな表情を保ちました。そして友人が部屋を出ると、モップを取り出して掃除に取り掛かりました。

この気持ちは、家で靴を脱ぐ文化の中で育てられてきた日本の人なら誰でも絶対にわかってくれると言い切っていいでしょう。

海外で暮らしたことがある方でしたら、もしかすると似たような経験をしたかもしれません。しかし、このエピソードは、スウェーデン人が主役である点で驚く人も多いでしょう。

外国人は皆、土足のままで家に入ると思われがちですが、実はスウェーデンにも日本と同じように靴を脱ぐ習慣があります。玄関に段差はないのですが、シューラックなどに靴を掛けて並べます。ハリウッド映画でよく見る、寝室でも靴を履いて過ごす風景はなかなか見掛けません。

スウェーデンにもある、本音と建前に似た文化

そのほかにスウェーデンのことでよく驚かれるのが、本音と建前を使い分ける日本の文化に少し似ている習慣についてです。

スウェーデンは非常に移民が多い国(人口の2割ほどが外国出身)なのですが、新しくスウェーデンに移住してきた外国人にとってかなり難しいとされるのは、スウェーデン人の本音を洞察することです。

なぜかというと、スウェーデン人はあつれきを避けるために、本音ではなくお世辞などを言うことがよくあるからです。日本に移住してきた外国人の中には、同じようなことに悩まされている人が少なくないでしょう。

「フラット」な人間関係は社会運動から

スウェーデンには日本と異なるところもたくさんあります。

例えば、日本は上下関係が 厳しい 国であるのに対して、スウェーデンはいわゆるフラット社会です。大学の学生が先生のことを「あなた」と言っても問題ありません。

これは昔からの文化ではなく、1960年代に始まったdu-refomen(直訳:あなた改革)という社会運動によってもたらされた変化です。

スウェーデン人の英語が流ちょうな理由

もう一つ日本に来て驚いたのは、海外に行ったことがない人の多さです。

パスポート保有率で言うと、日本は人口の4分の1ほどになっているのに対して、スウェーデンは90%です。

スウェーデン人は英語力が高いとされているのは、積極的に海外に行くのが一つの要因だと考えられます。英語圏の人を除いて、海外に行くとまず困るのは自分の母語が通じないことでしょうから。

それに加えてスウェーデンは、人口がわずか1000万人程度と東京都より 少ない ので、国内市場が小さいのです。そうなると国の経済を成長させるのに輸出が必要不可欠ですが、輸出に 取り組む にはまず外国語を学ぶのが 前提 となります。

おまけにスウェーデン人は舶来品に弱いこともあり、アメリカをはじめ、海外の映画やドラマをよく見ています。スウェーデン語圏が小さいことは子どもの頃に気付かされ、私も、小学校に通い始めてもいないのに英語を学ばなきゃと強く感じたのを覚えています。

もちろん、スウェーデン語と英語は同じゲルマン系の言語ですので、日本語母語話者と比べるとスタートラインが違います。しかし、スウェーデン人の外国語を学ぶアプローチは、日本の人が活用しても効果的だと思います。

文法などを勉強することはもちろん大事なのですが、せっかく学んだことを忘れないように、積極的に海外の映画(吹き替えは禁止!)を見たり、洋楽を聞いたり、外国人と交流してみたりするのをおすすめします。最初は恥ずかしいかもしれませんが、上達するにつれて強い達成感を覚えるようになります。そして何よりも、気付いたら外国語の勉強が楽しくなっているでしょう。

『魔女の宅急便』の舞台が観光におすすめ

今は実際に海外を訪ねるのが難しい状況ですが、行けるようになったときに向けておすすめしたい観光スポットがあります。

それは、1989年のスタジオジブリによるアニメ映画『魔女の宅急便』のモデルになった、スウェーデンの首都であるストックホルムです。特に旧市街の絵のような美しい風景と独特な雰囲気を、一度味わってみてほしいです。

国際便に乗るのが難しい昨今ですが、外国語の勉強に対してモチベーションが上がるように、まずはパスポートを持っておきましょう!

Till next time ...

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