「その仕事で食べていけるの?」という周囲の声に惑わされず夢に突き進む【NGO職員 中島 玖さんインタビュー】

中島 玖さんインタビュー後編

英語を学び留学して専門分野を学ぶことで、国際機関で働く夢をかなえて今も奮闘中の中島 玖さんのインタビュー後編をお届けします。中島さんが活躍するプラン・インターナショナルは、毎年10月11日の「国際ガールズ・デー」の活動でも知られる国際NGOです。この日をきっかけに、世界や日本社会の課題に目を向けてみませんか?この記事では、アフリカで実施中のプロジェクトや、効果のあった英語学習法、国際協力にまい進する理由などをお聞きしています。

中島 玖(なかじま ひさ)
神奈川県出身。小学校から山形県で育つ。2014年、東京外国語大学外国語学部欧米第二課程フランス語専攻卒業。大手出版社に就職し、映画配給の仕事に携わる。2016年、英国ブラッドフォード大学大学院に留学。紛争解決学を学ぶ。2017年、国際NPOプラン・インターナショナル入局。プログラム部公的資金チームに所属。外務省の助成金を主な資金とした、ジンバブエにおける中等教育の環境改善事業に従事。

▼インタビュー前編はこちら↓

ej.alc.co.jp

ジンバブエにある公立中学校のプロジェクトを担当

国際NGOプラン・インターナショナル(以下プラン)には、2017年12月に入局しました。

この5月まで、アフリカのジンバブエにおける「暴力のない中学校づくり」プロジェクトの日本側の担当として、日本の外務省とのやりとりを主な仕事としていましたが、5月から立場が少し変わりました。現地に駐在する事業責任者になったのです。

つまり、本当なら今頃、私はジンバブエにいたはずなのです。でも新型コロナで赴任が保留になってしまったため、現在はチャットやオンラインミーティングなどを介して、現地チームと遠隔で仕事をしています。

現地チームは全員ジンバブエの人たちですが、幸い、現地への出張を通してよく知っているメンバーばかりですから、遠隔でも仕事がやりやすくて助かっています。

私たちが取り組んでいる事業は、ジンバブエの2つの地域の公立中学校を対象とした、3年間のプロジェクトです。目標の一つはインフラの整備。2022年までに新しい中学校を丸ごと1校作り、既存の2校に教室棟を増設し、関連施設を整備します。

もう一つの目標は、体罰に頼らない指導法、Positive Disciplineの普及です。ジンバブエでは最近、ようやく学校における体罰が法律で禁止されました。これを受けて、先生たちの研修や、地域社会や生徒に対する啓発活動などを、現地スタッフと一緒に行っています。

そもそも私たちのプロジェクトは、外務省からの助成金と支援者の皆さまからのご寄付で実施しているものですから、「次はこういうことがやりたい」「このプロジェクトをこう変更したい」といった現地の要望を、手当たり次第に受け入れるわけにはいきません。ドナーである日本国政府が示す条件や規則とのすり合わせが常に必要で、その調整がなかなか大変です。

反面、この仕事の醍醐味(だいごみ)はなんといっても、自分が今やっていることが誰かの人生に直結していると、よくわかる点です。現地を訪れ受益者と顔を合わせて話を聞くと、ダイレクトに手応えが感じられ、しっかりやろうと思いますし、仕事が楽しくなります。

SDGsの中でも特にジェンダー問題を重視

日本では近年、SDGsがずいぶん浸透してきたように思います。SDGsとはSustainable Development Goals、国連が掲げる「持続可能な開発目標」のことで、17のグローバル目標と169の具体的なターゲットで構成されています。

私たちの団体は、国連と連携してSDGsの策定時から関わってきました。教育、子どもの成長、性と生殖に関する健康権利、生計向上、子どもの参加、子どもの保護、緊急支援といった分野での私たちの活動も、SDGsが目指す目標と密接にリンクしています。

プランは特に女の子や女性の権利に力を入れているので、とりわけジェンダー平等の達成という目標を重視しています。

ジンバブエでの事業でも、体罰の状況を調査する際に、女の子に特化したニーズを調べたり、中学校の新設トイレを男女別にしたりと、教育現場から女の子を排除しないというジェンダー視点が確実に入っています。女の子に教育を提供することは、未来の母親に教育を届けること。子どもの幸福を考えるなら、女性の問題と切り離すことはできません。

そんな中、今年も国連が定めた10月11日の「国際ガールズ・デー」が近づいてきました。私たちもこの日に向けて、日本や世界各地で、いろいろな活動やイベントを行います。国内特設サイト(記事最後に記載)を用意していますので、ぜひのぞいてみてくださいね。

夢をかなえるには心配し過ぎず目の前のことに集中

さて、この記事を読んでくださっている方の中には、いつか自分も国際協力の仕事を、と思っている方がいらっしゃるかもしれません。

NGOに就職すると言うと、「食べていけるの?」などと、周囲からいろいろ言われて心配されますが、もし本当にやりたいことがあるのなら、外野の声に惑わされず挑戦してほしいなと思います。

国際NGOで働く上で、語学はできるに越したことはありません。でもそれ以外は、まず今の自分の仕事や勉強を頑張って、成果を上げることを大切にした方がよいと、個人的な意見ですが思います。一見、国際協力とは関係なさそうな分野であっても、仕事で得た堅実な実務経験の方が、のちのち現場でよほど役に立つからです。

語学のポイントは自分のタイプに合った学習法の実践

英語修得のコツに関して、私の経験の範囲でお話しするなら、自分が英語を「書いて覚える」タイプか「聞いて覚える」タイプかを知っておくといいと思います。

私は完全に「書いて覚える」タイプです。

洋画も洋楽も大好きで、ずいぶんたくさん見たり聞いたりしましたが、それだけで外国語がうまくなったという実感はまったくありません。

勉強法としては、「聞く・話す・書く」を同時に行いました。英文を聞きながら発話するシャドーイングに加え、その英文をノートに書き出します。単語も、チラシの裏などにどんどん書いて覚えました。

自分のタイプを知っておくと、自分に合ったやり方で効果的に勉強できると思います。

もう一つ私自身の経験で面白いと思ったのは、大学ではフランス語を専攻して、英語は一切勉強しなかったにもかかわらず、卒業時のTOEICの点数が入学時より上がっていたことです。

外国語は相乗効果で身に付く面もあると思うので、英語で伸び悩んだら、別の言語を並行して勉強してみるのもいいかもしれません。

でも考えてみると、結局、仕事に勝る勉強法はなかった気がします。必要に迫られて英語を使っていれば、嫌でも身に付きますものね。その応用編として、英語の試験に申し込んで自分を追い込むのも手だと思います。

留学を考えている方もいるかもしれませんが、外国へ行くと、だまされそうになったり、言葉が通じなくて困ったり、嫌なこともいっぱいあります。でも、そこで引きこもっていては、進歩はありません。どんどん外に出て人と話し、生活を丸ごと楽しむ気持ちで頑張ってほしいです。

どの子どもにも公平な、差別のない世界を作りたい

今の国際協力、国際支援の分野では、支援を受ける側の国にも、相当のスキルや知識を持つ人や、高学歴の人が増えています。ひと昔前のように、先進国がリーダーとして牽引(けんいん)する時代ではなく、私たちは地元の人たちが力を発揮できるよう、サポートをする立場からさまざまなプロジェクトに関わっています。

こうした現代のグローバル環境では、協調性や公平性、また、みんなの気持ちを一つにして、その力を引き出すリーダーシップなど、よいチームワークを築くための資質が求められていると思います。

前回、少年兵を取り上げたテレビ番組を小学生のときに見て、国際協力の仕事に関心を持ったとお話ししました。その番組では、ストリートチルドレンや、奴隷として働く子についてもリポートしていて、最後にリポーターが、「将来の夢は?」と子どもたちに尋ねたのです。

「家族と一緒に暮らしたい」「大きな家に住みたい」。いろいろな答えが返ってくる中で、少年兵の「夢」は異彩を放っていました。「敵を全員殺したい」と、彼は答えたのです。雷に打たれた気がしました。「私はこの世界のことを、何も知らないんだ」と思い知らされたのです。

もちろん、そのことばかり考えて今日まで生きてきたわけではありません。飛行機の客室乗務員になりたいと憧れたこともありますし、大好きな映画に関わる仕事もしました。でも人生の重要な転機では、なぜかあの少年兵の言葉がよみがえってくるのです。

私はこの世の中が、彼を含むすべての子どもにとって、生まれた場所や、性別や、人種などで差別されない世界、不条理が通らない公平な世界であってほしいと思います。だから、その実現に向けて貢献できる仕事を、自分なりにこれからも続けていきます。

まずは一日も早くジンバブエに赴任して、現場に近いところで働きたいです。そして、関わっているプロジェクトが人々にどんな影響を及ぼすのか、自分の目でしっかり見極めたいと思っています。

スプツニ子!さんと大崎麻子さんが登壇する「国際ガールズ・デー」関連オンライントークイベント

国際NGOプラン・インターナショナルは、「国際ガールズ・デー」に先立ち、トークイベントをライブ配信します。

テーマは、「THINK FOR GIRLS/コロナ禍の女の子たちのために私たちができること」

登壇者は、アーティストのスプツニ子!さんと、Gender Action Platform理事の大崎麻子さん

コロナ禍そしてポストコロナの時代に、世界の人々が手を携え、世界をよりよい方向に導くことができるよう、日本の私たちができるアクションについて考え、途上国の女の子たちを応援するメッセージを発信します。

日時:2020年10月7日(水)19:00~20:00

視聴方法:プラン・インターナショナルのTwitterまたはInstagramにアクセス

▼詳細はこちら↓

www.plan-international.jp

取材・文:田中洋子

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