日本人っぽいとされる「主張し過ぎない」気質が国際社会で高評価!?【NGO職員 中島 玖さんインタビュー】

中島 玖さんインタビュー前編

英語を学び留学して専門分野を学ぶことで、国際機関で働く夢をかなえて今も奮闘中の中島 玖さんのインタビュー前編をお届けします。中島さんが活躍するプラン・インターナショナルは、毎年10月11日の「国際ガールズ・デー」の活動でも知られる国際NGOです。この日をきっかけに、世界や日本社会の課題に目を向けてみませんか?この記事ではまず、中島さんが海外に興味を持った理由や、留学、就職したときの話を紹介します。

中島 玖(なかじま ひさ)
神奈川県出身。小学校から山形県で育つ。2014年、東京外国語大学外国語学部欧米第二課程フランス語専攻卒業。大手出版社に就職し、映画配給の仕事に携わる。2016年、英国ブラッドフォード大学大学院に留学。紛争解決学を学ぶ。2017年、国際NGOプラン・インターナショナル入局。プログラム部公的資金チームに所属。外務省の助成金を主な資金とした、ジンバブエにおける中等教育の環境改善事業に従事。

小学生で知った少年兵の存在が、国際協力活動の原点に

私は地方の町で育ちました。海外への憧れはなんとなく子どもの頃から持っていたものの、都会と違って身近に国際的な環境があるわけではありません。学校でたまに外国人との交流活動をしたのですが、そういう活動が大好きな子どもでした。それ以外では、テレビの海外取材番組を見て、いつか私も日本の外の世界を見に行ってみたいなと漠然と思っていたくらいです。

英語についても、学校の授業と塾での受験勉強がすべてでした。好きな科目でしたから英語の成績はよかったのですが、外国人と英会話の練習をする機会はほとんどありません。外国人と出会うチャンスが多い、都会の人がうらやましかったです。

テレビ番組を通じて、アフリカの少年兵の存在を知ったのは、小学校高学年のときでした。自分とあまり変わらない、まだ十代の少年たちが、いや応なしに銃を持たされ戦場で戦っているというのです。みんな誘拐されてきた子どもたちで、脅されたり、残酷な行為を強要されたり、麻薬を摂取させられたりして行き場を失い、子ども兵士として紛争に巻き込まれていくといいます。

子ども心にも私は強い衝撃を受けました。でもその頃はまだ、インターネットも家にありません。少年兵について詳しく調べたくても、どうにかして彼らの役に立ちたいと思っても、小学生の自分に何ができるかなど、知るすべがありません。もどかしい気持ちでいっぱいでした。今、私は国際協力の仕事に携わっていますが、その原点は、まさにあの少年兵たちだったのです。

大学院進学を目指し、映画配給の仕事で資金をためた

大学ではフランス語を専攻しました。英語の基礎は中学・高校で身に付いたので、大学では違う言語を学びたいと思ったからです。それにフランス語は、アフリカなどを中心に、英語と並んで広く使われています。国際機関の公用語の一つでもあります。将来、国際協力の仕事をする際、フランス語ができれば役に立つと考えました。

平和構築のゼミに入って、同じ分野に関心がある人たちと出会い、仲間と一緒に学べるようになったことは、とてもうれしい変化でした。指導してくださった先生も、その分野の第一人者でしたから、大学時代もずっとモチベーションを維持できました。

とはいえ、卒業後に就職したのは、国際関係とは無縁の会社です。実は私には、映画や出版という別の関心分野がありました。それで出版社の映画配給部門で、社会人としてのスタートを切ったのです。

もちろん、最終的に国際協力の道に進むという気持ちに変わりはありませんでした。ただ、国連機関や国際NGOの採用条件として、大学院卒を求めるところも多くあります。修士号を持つ人が当たり前のように多数働いていますから、自分も修士課程に進んで専門分野を深く学ぼうと、疑問の余地もなく考えていました。その目的のために、まずは数年しっかり働いて、学資を稼ぐ必要があります。そして同じ働くなら、「もう一つの好きなこと」をやらない手はないでしょう。

多様性にあふれるイギリスの大学院で学んだこと

2年後、私はお世話になった会社を辞め、紛争解決というテーマを学ぶために、イギリスの大学院に留学しました。子どもの頃に見た少年兵の問題へと続く、最初の一歩がやっと踏み出せたのです。

ブラッドフォード大学大学院は、平和構築の分野で世界的に有名な大学院です。授業では、紛争発生のメカニズムや、どのようなプロセスをたどって紛争が収束するのかなど、さまざまな理論を学びました。

地域に特化したアフリカン・スタディーズのクラスも、有意義でした。アフリカで起きた紛争例を分析し、実際にアフリカを訪れて現地NGOの取り組みも見学しましたが、このとき行ったガーナは比較的平和で、町には活気があり人々もおしゃれでした。初めて見るアフリカに、私はポジティブな印象を持って帰ってきました。

最終的に、少年兵に関する修士論文でMAを取得しましたが、この留学で得たものは学位だけではなかったと、振り返って思います。この点について少し詳しくお話ししてみますね。

留学してまず驚いたのは、先進国からも途上国からも、本当に多様な学生が集まっていたことです。大学にもよるかと思いますが、少なくとも私がいたブラッドフォード大学の大学院は、すごくダイバーシティーのある場所でした。

これだけ多様性があると、ちょっとした議論をしても、出身地域によって考え方が大きく違うことが、とてもよくわかります。紛争当事国から来たクラスメートと話していて、自分の考えの甘さに気付かされることも多く、非常に勉強になりました。こればかりは、留学しなければできない経験だったと思います。

クラスでのロールプレイやディスカッションでは、よくこてんぱんにされました。英語力の差もあって、言いたいことが十分に言えないのです。説得力のある主張展開するための、理論の立て方自体にも経験不足を感じました。

そもそも私や日本人のクラスメートは、「人と争いたくない」という気持ちが先に立って、誰かを怒らせるくらいなら言わない方がいいと、つい意見をのみ込んでしまうのです。他国の学生には、強引な自己主張をして一歩も引かない人や、それを見て眉をひそめる人などもいました。

でも、今、こうしていろいろな国の人と仕事をしていると、強く主張できない、言い争いはできるだけ避けたいといった、コミュニケーション上の自分の「クセ」が、意外にも前向きに評価されることがあるのです。

「議論が白熱しても、Hisaは絶対アグレッシブにならないね」

「みんなの頭に血が上っているときでも、冷静に話してくれるから助かるよ」

弱点だと思っていたことが、そんなふうに褒められるのですから、面白いものですね。

国際NGOプラン・インターナショナルに入局

大学院課程修了後、国際協力の仕事を探すときに気を付けたのは、紛争解決というテーマで間口を絞り過ぎないこと。背景にある「子どもの保護」や「子どもの権利」といった問題にも、関心を広げることでした。

国際NGO「プラン・インターナショナル」は、「子どもの権利」を推進する活動で知られており、私の希望にぴったりでした。しかし、新卒採用を行なう国際NGO・NPOは少なく、たいていの場合、関連分野について最低2、3年の就労経験を要すると、応募要項に書いてあります。

そう言われても、私には「関連分野での就労経験」などありません。条件を満たそうとすれば、これから最低2年はどこかで経験を積むことが必要です。それでは、いったいいつになれば、NGOで希望の仕事に就けるかわかりません。

考えてみると、私は映画配給の仕事でなら実務経験があります。社会人としての2年間の経験は、NGOのオフィスでも役に立つのではないでしょうか。何よりも、紛争解決や子どもの権利への関心とやる気では、誰にも負けません。そこで思い切って、応募要項にとらわれず、とにかく「プラン・インターナショナル」の求人に応募してみることにしました。

募集中のポストは、やはりその分野の経験がないと、こなせない仕事でした。ところがそこから、思いがけず話がつながっていきました。「現在募集中のものではありませんが、関連した仕事がありますよ。やってみますか?」と言ってもらえたのです。

こうして私は、プラン・インターナショナルの日本事務局、公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンに入局することになりました。あのとき諦めず、勇気を奮って応募して本当によかったと、今でも思います。

▼インタビュー後編はこちら↓

ej.alc.co.jp

スプツニ子!さんと大崎麻子さんが登壇する「国際ガールズ・デー」関連オンライントークイベント

国際NGOプラン・インターナショナルは、「国際ガールズ・デー」に先立ち、トークイベントをライブ配信します。

テーマは、「THINK FOR GIRLS/コロナ禍の女の子たちのために私たちができること」

登壇者は、アーティストのスプツニ子!さんと、Gender Action Platform理事の大崎麻子さん

コロナ禍そしてポストコロナの時代に、世界の人々が手を携え、世界をよりよい方向に導くことができるよう、日本の私たちができるアクションについて考え、途上国の女の子たちを応援するメッセージを発信します。

日時:2020年10月7日(水)19:00~20:00

視聴方法:プラン・インターナショナルのTwitterまたはInstagramにアクセス

▼詳細はこちら↓

www.plan-international.jp

取材・文:田中洋子

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