この連載では、イギリスの大学の授業をオンラインで受講したり、オンラインの観光ツアーに参加したり、全国通訳案内士の鹿目雅子さんが実際に体験し、「おうちでUK留学する方法」をレポートしてくれます。今回はイギリスの新たな一面が知れるバーチャルツアーのご紹介。
おうちでUK留学の最終回は、イギリスの雰囲気を味わうためにロンドンのバーチャル観光を体験しました。イギリス初心者の私は、バッキンガム宮殿やロンドンタワーのようなメジャーな観光地を想像していましたが・・・、 いい意味で想像とは違うツアー でした。
ツアーを提供しているのは、ロンドンにあるウォーキングツアー団体、 FOOTPRINTS OF LONDON です。 有資格ガイド30名によって組織され、この夏で10周年を迎えます 。昨年6月にコロナの 影響 を受けてバーチャルツアーをスタート。 予想 以上の反響があり、これまでに 約3万5千人が参加 したそうです。 Tripadvisorでも高評価 な上に、イギリスの 大手大衆誌The Guardiaが選ぶ2021年向けバーチャルツアーのベスト10 に入っています。
footprintsoflondon.com一味違うバーチャルツアー
FOOTPRINTS OF LONDON のホームページを見ると、一般的な観光ツアーとは違って、 ユニークなテーマのツアーが多い ことに気付きます。というのも、 それぞれのガイドが得意な分野を掘り下げて、ツアーを作成している のだそうです。
例えば、チャールズ・ディケンズの作品に描かれるロンドンを巡るツアー、地下鉄のタイルデザインを楽しむツアー、ローマ帝国時代のロンドンを垣間見るツアー、ウェスト・エンドの有名な飲食店の歴史を学ぶツアーなどがあります。
FOOTPRINTS OF LONDONでは、 ほかの観光ツアーでは得られない体験や知識を提供することを大切にしている そうです。
ツアーは 基本的に1時間で、料金は一人6ポンド(日本円で約1000円) です。同じディバイスから2名以上のグループで参加する場合は、1グループ12ポンドです。
申し込みの際は、参加したいツアーを選択し、チケット購入画面(下図)からチケット数を選んで「Checkout」をクリックします。支払いにはクレジットカードやPayPalが利用できます。支払い 手続き が済むと、Eventbriteから当日の案内(ZoomのURLなど)が記載されたメールが届きます。その後も、 ツアーの前日、2時間前、直前にリマインドメールが来ますので、忘れずに参加できる と思います。
大人気ガイドからテムズ河口の歴史を学ぶ
私は、内容と時差を考慮してThe Thames Estuary(テムズ河口)ツアーに参加しました。ツアーガイドはガイド歴10年の Rob Smith さんです。 実は彼の名前は、 Tripadvisor の絶賛コメントにたくさん出てきます 。FOOTPTINTS OF LONDONの看板ガイドのようですね。ガイドの傍ら、継続教育カレッジ *1 で歴史を教え、『Industrial History of the Lower River Lea: A Walking Guide』という本も出版されています。
当日のツアーには、イギリス在住の方を中心に10名の参加者が集まりました。テムズ川といっても河口なので、タワーブリッジのような有名な観光地を巡るものではありません。出発地はケント州のノースフィート(Northfleet)で、そこからロンドン市街とは逆方向に向かい、北海に注ぐ河口まで進みます。
ツアーでは、Robさんがパワーポイントを使って、川沿いの街にある建造物の歴史やそれにまつわる興味深いエピソードを話してくれます。ケント州グレーブゼンドにあるというポカホンタス像(グレーブゼンドはポカホンタスが亡くなった場所)以外は、初めて聞くことばかりでした。
例えば、海抜0メートル以下にあるキャンベイ島。17世紀初めにオランダ人が埋め立てた人工の島で、その時に移住したオランダ人の家(Dutch Cottage)が今も2軒残っています。八角形のかわいらしい家で、そのうちの1軒は現在、博物館として使用されているそうです。
下の写真はテムズ河口を見下ろす場所にあるハドリー城(Hadleigh Castle)。
1215年、ジョン王の忠臣であったヒューバート・デ・バーグが築城し、その後、エドワード三世がフランスとの百年戦争(1337~1453年)で要塞とし使用していたそうです。百年戦争は高校の世界史で勉強した記憶があります。城のごく一部しか残されていない廃墟ですが、その歴史を知って実際に訪れたくなりました。
河口に出ると、第二次世界大戦の遺物が見られます。マストだけを水上に残して沈んでいるアメリカの難破船SSリチャードモンゴメリー、ノルマンディー上陸作戦で建造されたマルベリー港の残骸、海上の要塞として使われ、その後海賊放送の 拠点 になったレッドサンズ・マンセル要塞・・・。
オンラインとはいえ、戦争の廃墟から異様な雰囲気が伝わってきます。それぞれがどのように造られ使用されたかを、Robさんがわかりやすく説明してくれ、戦争中のテムズ河口での状況を詳しく知ることができました。
マルベリー港の残骸
レッドサンズ・マンセル要塞
上記はツアーのごく一部ですが、実際はもっと多くの場所が紹介され、イギリスの玄関口であるテムズ河口が歴史的にいかに重要な場所であったかがよくわかります。
今回のツアー体験は、観光でリフレッシュするという当初の目的から離れ、学び中心の中身の濃い1時間となりました。
新たなイギリスを発見したい方に
FOOTPRINTS OF LONDONが提供するバーチャルツアーは、 イギリス在住の方でも初めて知る内容が多い そうです。メジャーな観光スポットではない新たなイギリスを発見したい方や、歴史やアートが好きな方はきっと楽しめるツアーだと思います。
再びイギリス旅行ができるようになったときに、訪れたい場所が増えるかもしれませんね。現在はウォーキングツアーが復活したため、バーチャルツアーの 割合 は減ってきていますが、もし気になるツアーがあれば、レクチャーを受ける感覚で体験してみてはいかがでしょう?
イギリスのほかのバーチャルツアー
英国議会主催のウェストミンスター宮殿のガイド付きオンラインツアー(45分間、無料)。上院・下院などのいくつかの部屋の内部を詳細に見ることができ、ガイドが宮殿の歴史や現在の様子を説明してくれるようです。参加するには、名前やメールアドレスのほか、電話番号や住所、簡単な アンケート を入力します。興味のある方はぜひ参加してみてください。
ukparliament.seetickets.comイギリス英語を強化したい人におススメの参考書はこちら!
鹿目雅子 早稲田大学商学部卒。在学中2年間アメリカに留学。英会話学校の講師を経て、2002年に気象予報士資格を取得。約10年間、日本気象協会の気象キャスターとしてラジオやテレビに出演。その後、海外の気象局に専門家として派遣され、再び英語に目覚める。2015年に全国通訳案内士資格を取得し、外国人観光客(個人・団体)向けのツアーガイドになる。観光庁主催のインバウンド対応研修、通訳案内士受験講座、よみうりカルチャーで講師を務める。
stand.fm :「やさしい英語で日本文化」配信
Twitter: @kanome_tsuta
【トーキングマラソン】話したいなら、話すトレーニング。
語学一筋55年 アルクのキクタン英会話をベースに開発
- スマホ相手に恥ずかしさゼロの英会話
- 制限時間は6秒!瞬間発話力が鍛えられる!
- 英会話教室の【20倍】の発話量で学べる!
SERIES連載
思わず笑っちゃうような英会話フレーズを、気取らず、ぬるく楽しくお届けする連載。講師は藤代あゆみさん。国際唎酒師として日本酒の魅力を広めたり、日本の漫画の海外への翻訳出版に携わったり。シンガポールでの勤務経験もある国際派の藤代さんと学びましょう!
現役の高校英語教師で、書籍『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』の著者、大竹保幹さんが、「英文法が苦手!」という方を、英語が楽しくてしょうがなくなるパラダイスに案内します。
英語学習を1000時間も続けるのは大変!でも工夫をすれば無理だと思っていたことも楽しみに変わります。そのための秘訣を、「1000時間ヒアリングマラソン」の主任コーチ、松岡昇さんに教えていただきます。