TOEIC満点取得者であるJay(ジェイ)こと早川幸治さんの連載「3カ月でTOEIC200点アップ特訓法」。早川さんの豊富な受験経験から、最も効率的な対策法をTOEICスコア別に分けて伝授します!第6回は3カ月で700→900点アップを目指すための、リーディング問題で速く読むコツを紹介します。
この連載もいよいよ最終回となりました。
さて、この連載を読もうとしているまさにこの瞬間、PCやスマートフォンの画面にあなた宛ての仕事のメールの受信通知が表示されたとします。あなたはそのメールをどんなふうに読みますか?
まず確認するのは、差出人と件名の2つでしょう。そして、本文へと読み進めます。相手がメールを書いた目的をつかみ、徐々に内容へと入っていきます。その中には、依頼や提案、もしかしたら問題の報告や解決策の提示なども書かれているかもしれません。いつ、どこで、誰が、何をするのか、なども書かれているでしょう。
そして、読み終わったら、必要であれば返事を書いたり、依頼に対応したり、といった行動へと移します。
正解を「探す」のではなく理解しながら「読む」に変える
TOEICにおいて、Part 7の文書を読むときにも同じように読んでいますか?
設問を見て、求められている情報を本文から探すという読み方をしている方は多いと思います。もちろん、TOEICにおいては「正解すること」が目的ですから、どのような読み方であっても正解につながれば目的は達成されます。しかし、700点を超える方の中にも、たくさんの方が「最後まで終わらない」という悩みを抱えています。
ここで断言できることがあります。それは、スキルを上げ、スピードが上がれば、スコアも上がるということです。この、Skill(スキル)・Speed(スピード)・Score(スコア)こそが、TOEICテストで重要な3つの“S”です。
正解数に基づいてスコアが決まるTOEIC L&Rテストで、最後まで終わっていないということは、実力どおりの正解数が出ていないことを意味します。そのため、 最後まで終わらせるだけで正解数が上がる のは明らかです。それ以外にも、読むスピードが上がることが、スコアに直結する理由があります。
- 選択肢選びに時間をかけられるようになる
- 読む時間が短縮されることで疲労が軽減される
- ゆっくり読むよりも記憶できる
単語はだいたい知っているのに速く読めないとしたら、もしかすると、その原因は「文書の読み方」にあるのかもしれません。
700点台でスコアが停滞する多くの受験者に共通する特徴があります。それは、「聞けるのに聞いていない」「読めるのに読んでいない」というものです。いわゆる「テスト対策」でスコアを高めてきた学習者に多く見られる現象です。
リスニングとリーディングの両方において、求められている情報だけを特定するというアプローチには限界があります。答えの特定を優先するあまり、内容の理解がなおざりになっているのです。
もちろん、リスニング力・リーディング力ともに制限のある300点台の学習者にとっては、「聞ける中で正解を選ぶ」や「読める中で正解を選ぶ」といった目的のために、使える英語力をフルに生かす聞き方や読み方として、答えを特定するアプローチは有効です。
しかし、ある程度聞く力や読む力がついている600~700点台以上の学習者が、このやり方にとどまっていると、逆に足を引っ張ってしまう可能性があります。
自分宛ての文書だと捉えて、反応しながら読む
速く読もうとして、スピードは上がったものの理解度が下がってしまっては意味がありません。この絶妙なバランスを取るために必要なのが、「この先の展開を推測しながら読むこと」です。
日本語の文書を読む場合は、無意識に先の展開を推測しているはずです。例えば、「直前で申し訳ありませんが、明日の会議が、来週火曜日に延期されます」というメールを読んだとき、理由を知りたくなると思います。その後、「チームメンバーの多くが緊急の問題に対応することになりました」と続くと、どんな問題が起こったのかが気になります。英語においても、この展開を意識して読むことで、スピードが上がります。
前回の記事では、Part 2の質問や報告に対して日本語で返事をすることや、Part 3やPart 4では「なんで?」や「了解です」などのコメントを入れながら聞くことの効果をお伝えしました。
同じように、Part 7においても、すべて自分宛ての文書だと捉えて、内容を読みながらコメントを入れていく読み方がおすすめです。
例えば、店舗スタッフ向けのメールの冒頭に以下のように書かれているとしましょう。
As the holiday season is approaching, we are entering our busiest time of the year. Given, we need to work overtime the next three weeks.
ここまで読んだら、「忙しい時期がくるなぁ。3週間頑張ろう!」のように、自分宛てのメールと思って反応するのです。「頑張ろう!なんて、そんなにポジティブに捉えたくない!」という方は、「忙しい時期かぁ。めんどくさいなぁ」という反応でも大丈夫です(笑)。
いずれにせよ、店舗スタッフになりきって読むことで、感情を使いながら読めるようになります。これが、理解度アップに効果的なのです。自分は店舗スタッフだという意識で読み進められるため、当然この後に書かれている情報も推測しやすく、読みやすく感じるはずです。
日本語訳
休暇シーズンが近づくにつれて、1年で最も忙しい時期に入ります。この状況を考えると、今後3週間にわたり残業をする必要があります。
では、次の英文を読んで1文ごとに反応してみてください。
As you know, our reputation has declined over the past year.(反応1) This is largely due to emergence of our competitors.(反応2) To restore customer satisfaction, the management has decided to conduct extensive research.(反応3)
例えば、反応の仕方はこんな感じでしょうか。
- 反応1:「なんで?」「落ちちゃったか」「あちゃー」「そうだね」など
- 反応2:「強敵だ」「そういう理由ね」「なるほど」など
- 反応3:「調査大切だね」「いい決定だ」「効果あるかな?」など
日本語訳
ご存じのように、過去1年間にわたって私たちの評判が落ちています。これは主に、競合他社の台頭のためです。顧客満足度を回復するために、経営陣は大規模なリサーチを実施することを決定しました。
反応しながら読むことで、その先の展開を推測しながら読めるようになってきます。また、感情を使いながら読むことで、記憶にも残りやすくなります。こうして読むスピードを上げながら理解度が上がっていくのです。
「速く読む」習慣作りのススメ
自分事として反応しながら読むことの効果をお伝えしてきましたが、読むスピードは一朝一夕で上がるものではありません。そこで「速く読む習慣を作ること」が大切です。
もし「TOEICの教材を使うと、どうしても答え探しになってしまう」という方は、TOEIC以外の教材を活用するとよいでしょう。洋書を読むということでも構いませんが、本1冊というのは量が多いために終わりが見えず、スピードが速くなったかどうかもわかりません。
そこでおすすめなのが、制限時間の中で記事を読むことです。例えば、5分間という制限時間を決めたら、5分間で読めるところまで読みます。記事の長さによっては、制限時間は2、3分でもよいでしょう。逆に、読み終わるまでの時間を測るやり方もよいと思います。タイムアタック方式ですね。
いずれにしても、ここで大切なことは、難しすぎる記事を選ばないことです。ざっと眺めてみて、知らない単語が少ないことを確認してください。
例えば、手始めに英字新聞『Japan Times』のサイトにある、日本の大学で学びたい留学生向けのページから読んでみてはいかがでしょうか。
日本の大学で学ぶ留学生や、日本の大学で教える教授らのインタビューが掲載されています。個人の経験が書かれているため興味を持ちやすいですし、TOEICによく出る単語も多く使われているのでおすすめです。
どのインタビューも短いので、1記事あたり1分、2分程度で読めます。意識的に速く読みながら、「へー!」や「そうなんだ」など反応しながら読んでみてください。
A GUIDE TO JAPANESE UNIVERSITIES AND COLLEGES
education.japantimes.co.jpまた、さまざまな英文を使って読解スピードを測れるサイトもあります。
例えば、Free Reading Speed Testというサイトでは、「テーマ」「レベル」「内容」の選択肢からそれぞれ選択します。読み始めるときに“Begin”を押し、読み終わったら“Done Reading”を押すだけで、どのくらいのスピードで読めたかを測定してくれます。
なお、読み終えた後には理解度テストもあります。“View Results”を押すと、「正解数」とともに、読むスピードを表す単位であるWords per Minute(WPM)が表示されます。これは1分間にどれだけのワード数を読めたかを示すものです。TOEICにおいては、180WPM以上を目指してください。
Free Reading Speed Test
www.freereadingtest.com読むスピードはスキルでもありますが、習慣でもあります。普段から 英文を読む習慣 をつけておくと、TOEICに取り組む際にも読むスピードが変わります。
終わりに
突然ですが、私が尊敬する野村克也さんの、ヤクルトスワローズで監督を務めていた頃のエピソードをお話しします。その頃はまだ現役だった、スワローズの現監督である高津臣吾さんが、対戦するジャイアンツのメンバーを見て、こうつぶやいたそうです。
「すごい打線だなぁ・・・」
そのとき、野村監督は高津さんにこう説明したそうです。
「全体で見たらすごい打線かもしれない。でも、一人一人を見ろ。必ず弱点があるんだ」
TOEICにおいても200問だと考えると大量の英文に見えるかもしれません。リーディングの100問だけを見ても、もしかしたらPart 7の54問だけを見ても、大量の英文を読まなければいけないと感じるかもしれませんし、実際にPart 7で読むべき文書は、シングルパッセージ9個、ダブルパッセージ2セット(4個)、トリプルパッセージ3セット(9個)の22個もあります。
しかし、文書1つずつで考えるとほとんどが250ワード以下(100ワード程度のものもあります)で、本文だけであればそれぞれ1~2分以内に読み終えられるものなのです。2分で読めてしまうものであれば、「長文」という感じではありませんよね。
今回の内容の実践を通して、Part 7への見方が変わり、取り組み方が変わり、スキルアップ、スピードアップ、そしてスコアアップへとつながることを願っています!
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