英語学習者必見!外国語を学ぶのに役立つ「言語学入門」

英語学習者必見!外国語を学ぶのに役立つ「言語学入門」

「英語を学び、英語で学ぶ」学習情報誌ENGLISH JOURNAL(EJ)の動画連動企画「Lecture」。7月号からは「人はどのように言語を学ぶのか」をテーマとしたレクチャーが始まります。今回は言語学者の藤田 保さんに「言語獲得に関する3つの考え方」について教えてもらいました。

人間の言語獲得に関する3つの考え方とは

「人はどのように言語を獲得するのか」――皆さんは考えたことがあるでしょうか。例えば日本で生まれた赤ちゃんは、母語である日本語またはそれ以外の第二言語をどのような過程で身に付けていくのでしょう?

今回は、1920年代から1970年代にかけて、世界でさまざまな学者によって唱えられてきた「言語獲得に関する3つの考え方」についてお話しします。「人がどのように言語を獲得するのか」について理解を深めることは、英語など外国語を学んでいる人たちにとって、より効率的に語学をマスターする手助けになるかもしれません。

ぜひ動画を見ながら、言語学について学んでいきましょう!

1. 1920年代~1950年代:行動主義的アプローチ(動画01:21~02:05)

Children have no previous knowledge of any language at birth, and they paint the[a] picture of a language on a blank canvas in their mind by listening to the speech of grown-ups.

Children repeat the process of listening and repeating the sentences again and again until they form a habit of saying the sentences right. This idea of language acquisition as a habit formation is based on behaviorist psychology, which was popular in the 1920s through (the) 1950s.

子どもたちは、生まれた時点ではどのような言語の予備知識も持っておらず、大人が話すのを聞くことで、頭の中のまっさらなキャンバスに言語の絵を描いていく、というわけです。

子どもたちは、文を正しく言う習慣が身に付くまで、その文を聞いて繰り返す過程を何度も何度も繰り返します。習慣形成として言語を獲得するというこの考え方は、行動主義心理学に基づいており、行動主義心理学は、1920年代から1950年代にかけては一般的でした。

「パブロフの犬」という有名な実験について、耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。これはロシアの心理学者パブロフによる実験で、彼は犬に餌を与える前にベルを鳴らしました。ベルの音と犬の餌には互いに何の関係もありませんが、このプロセスが何度も繰り返されると、犬はこの2つを関連付けて、食べ物が出されなくてもベルの音を聞くとよだれを出すようになります。

これと同じように子どもたちも、言語の音と対象の物、例えば「バナナ」という音と「長くて皮の黄色い果物」の2つを結び付けて考え、言葉を覚えていくそうです。この考え方を「行動主義的アプローチ」と呼びます。

2. 1950年代後半~1960年代:生得主義的アプローチ(動画6:20~6:54)

Babies are born with a “seed” of a language, and (when) they receive the water of the local language, the language will automatically sprout. Because people innately, or inherently, have this ability to develop language, people can acquire their first language in a very short period of time, whether your parents are talkative or quiet. This idea is called the innatist approach of language acquisition.

赤ちゃんは言語の「種」を持って生まれ、現地語という水を与えられると、言語(の種)が自動的に発芽するということです。人間には生来、すなわち生まれつき、言語を身に付ける能力が備わっているので、両親がおしゃべりであろうと無口であろうと、非常に短期間で第一言語を獲得できるのです。この考え方は、言語獲得の生得主義的アプローチと呼ばれます。

1950年代後半になると、ノーム・チョムスキーという言語学者がこれまでの「行動主義的アプローチ」の考え方に異議を唱え、人間には生まれつき言語を身に付ける能力が備わっているという「生得主義的アプローチ」という説を考え出します。

子どもたちは言語の予備知識を持っていないまっさらな状態で生まれてくるわけではなく、LAD(language acquisition device:言語獲得装置)を持って生まれてくるという考えです。英語の「white house」のように形容詞は名詞の前に付けるとか、スペイン語の「casa blanca」のように形容詞は名詞の後に付けるなど、文法に沿ったルールを自分の頭の中で作り上げることができるといった力を人間は生まれつき備えているようです。

3. 1970年代~:相互作用主義的アプローチ(動画8:48~9:34)

Another psychologist, named Lev Vygotsky, who was from Russia, also emphasized the importance of the environment in which children grow up. He argued in his sociocultural theory that children develop their language through social interaction among children and between children and adults. As they talk, children receive supportive interaction, or “scaffolding,” from others; this helps them develop their vocabulary and grammatical structure. Also, through conversation, they acquire new knowledge.

もう一人、ロシアの心理学者レフ・ヴィゴツキーもまた、子どもが育つ環境の重要性を強調しました。彼は、その社会文化理論の中で、子どもたちは、子ども同士、または大人との社会的交流を通じて言語を身に付けると主張しました。話をする中で、子どもたちは他者から、助けになるやりとり、「足場」を受け取ります。これが、子どもたちが語彙や文法構造を身に付ける助けになります。また、会話を通じて新たな知識を得ることもあります。

1970年代になるとスイスの心理学者ジャン・ピアジェが、ノーム・チョムスキーの主張する「行動主義的アプローチ」ではなく、子どもは自分の置かれた環境から言語を学ぶものであり、言語は子どもの認知能力が発達する過程で身に付けられるという説を唱えました。この考え方を「相互作用主義的アプローチ」と呼びます。

それからロシアの心理学者レフ・ヴィゴツキーも同様に、子どもたちは大人など他者との交流を通じて言語を獲得するという考えを主張しました。言語の発達には、育つ環境と社会的交流による手助けが必要不可欠というわけです。

言語学にまつわる語句を要チェック!

「言語獲得に関する3つの考え方」に関する英語レクチャーはいかがでしたか?動画の中で登場する、言語学にまつわる表現を下にまとめました。

    • behaviorist:行動主義者(の) 
    • applied linguist:応用言語学者
    • acquire:~を習得する、~を獲得する
    • imitate:~をまねる
    • form a habit:癖を付ける、習慣を身に付ける
    • innatist:生得主義者(の) 
    • intuitive:直観的な、直観的に理解できる
    • ungrammatical:文法的に正しくない
    • babble:(子どもが)意味のない音を発する
    • inherently:生得的に、本来
    • talkative:口数が多い、おしゃべりな
    • interactionist:相互作用主義者(の)

皆さんもぜひ、これらの語句を使って「言語学」について人と話したり、説明したりできるようになりましょう!

この動画の全スクリプトと和訳はENGLISH JOURNAL 7月号で!

動画での学習は、視覚情報を伴い、英語でどんな内容を話しているかをより理解しやすくなるため、初級者の方にもおすすめです。レクチャー動画を実際に見ながら、「言語学」についてぜひ英語で学んでみてください!

英語レクチャーが充実! EJオリジナル動画はこちら

ENGLISH JOURNAL の連載「Lecture」ではこれまで、ロッシェル・カップさん(経営コンサルタント)に「英語での働き方」、ギャヴィン・ブレアさん(ジャーナリスト)に「Brexit問題」、ソンヤ・デールさんに「ジェンダー/LGBT」、勝又泰洋さんに「神話」、フー・ユィーングさんに「身近な医学」についてレクチャーしていただきました。ぜひこちらも併せてお楽しみください!

藤田 保(ふじた・たもつ)
東京生まれ。言語学者。日本全国で幼稚園、小学校、中・高、大学とあらゆる校種の英語教育やバイリンガル教育に関わり、文部科学省や東京都教育委員会等で各種委員を歴任。現在、上智大学言語教育研究センター教授、副センター長を務める。

写真・動画:田村 充
構成・文:須藤瑠美(ENGLISH JOURNAL編集部)