TOEICの勉強は実践的な英語力の向上につながるの?にお答えします【西田大】

西田大さん連載「英語力 スーパーメンタル養成法」

TOEICを勉強している人の中には、990点(満点)を取ればネイティブのように英語を使いこなせると考えている人も多いのでは?「通訳」でTOEIC 990点(満点)を20回取得した「英語講師」の西田大(にしだまさる)さんが、ご自身の実際の英語理解度とTOEICで勉強する意義について赤裸々に語ります!

TOEICの勉強は実践的な英語力の向上につながるのか?

前回もお伝えした通り、2018年度のTOEIC受験者は266万人でした。この記事の読者の中にもTOEICの学習を通して英語力の向上を目指す人も多いのではないかと思います。

TOEICを受験する人がTOEICのスコアを気にするのは当然ですが、同時に、「TOEICの勉強やスコアが、実践的な英語力の向上につながるのか?」ということを気にする人もいるでしょう。

今回は「TOEICで990点を取れば、英語が使えるようになるの?」「TOEICで勉強して大丈夫?」というTOEICにまつわる、よくある疑問にお答えします!

TOEIC 990点の私の英語理解度を大公開

TOEIC

まず、私自身の英語力について少し紹介させてください。私がTOEICの受験、およびTOEICの学習を本格的に始めたのは、およそ20年前の2000年前後でした。

その後、TOEICは2006年と2016年に改訂され、問題形式などが少し変更されましたが、私はこの20年間TOEICの受験を繰り返してきました。最高スコアも990点です。

そんなTOEIC 990点を取得している私の英語理解度は、次の通りです。

TOEICのリスニングとリーディング・・・理解度99%

リスニングセクションで固有名詞が放送された直後は「えっ?」と戸惑うこともありますが、音声が2、3秒進んだ後に前後関係から固有名詞であったことを理解できます。リーディングセクションで意味のわからない語句があっても、前後関係からかなり高い確率で意味を推測できます

成人向けの英字新聞や雑誌・・・理解度70~90%

いわゆる文構造や語法で理解できない箇所はほとんどありません。取り上げられている内容(特に、医学・科学系)によっては、意味のわからない単語が多く出てきてしまい、理解が浅くなることがあります。ただし、内容全体がわからなくなるということはありません。

CNNなど、テレビのニュース番組・・・理解度50~80%

テレビのニュース番組は、英字新聞よりさらに理解度が落ちてしまいます。TOEICでは100%に近かった聞き取りも、1文丸ごと意味が取れないケースも出てきてしまいます。

アンカーが視聴者に向けてはっきりと話してくれている場合は理解できることが多いですが、街頭インタビューなどで早口で答える通行人の話や、スポーツ中継の興奮気味のアナウンサーの話になると極端に理解度が落ちてしまいます。

字幕なしの海外映画・・・理解度10~80%

内容は映像を見ていれば大半は理解できます。映画の中で使用されている英語に話を絞りますと、理解度はジャンルやシチュエーションで大きく変わります

ディズニーアニメなどは90%以上聞き取れているかもしれません。しかし、自分になじみのないシチュエーションで早口で話されると大変苦労します。そうした場合、耳にしたことをディクテーションする(一語一語、聞いて書き留めていく)ときの平均正答率は50%以下になると思います。

英語を教えることを職業にしている立場として、上記の件を正直にお伝えすることは勇気がいりました。しかし、これがTOEIC 990点取得者の、日本でいう「英語上級者」の英語力なのです。

日本人が好きな「レベルの高すぎる教材」

日本人が好きな「レベルの高すぎる教材」

一般論になってしまいますが、日本で英語を勉強する人は、レベルの高すぎる教材を用いる傾向にあるようです。英字新聞や雑誌の購読、CNNやBBCなどのライブ視聴、字幕のない海外映画・・・。

TOEICの教材を例に挙げてみても、書店のTOEICコーナーにはTOEIC 900点台や990点を目指すような教材が多く並んでいます。日本におけるTOEICの平均スコアは、毎回580点前後です。900点以上のスコアは全受験者の2、3%のはずです。

海外映画を英語学習の素材にしたものの場合、英語のスクリプトのみで日本語訳が付いていないものもあります。また、学習用に限定はされていませんが、英語のみで書かれているペーパーバックも書店では数多く販売されています。

学習素材は自分のレベルに合ったものを選ぶことがとても大切です。レベルの高すぎる教材を用いて「いつかできるようになる」という考えは避けるべきです。

その点、TOEICは日常的に使用されている語彙や語法が多く使用されており、また、目標点数別に教材が分かれているため、自分の英語力に合った教材を選ぶことができます。こうした点からもTOEIC教材は非常にバランスの取れた学習素材だと思います。

「海外映画」で英語学習をするなら・・・?

日本人が英語を学ぶ方法として「動画」を活用する人が増えてきているようです。最近ではYouTubeがますます広がりを見せ、「動画」を用いた勉強法は誰にとっても非常に身近なものになっています。また、英語学習を始める目的として「いつか海外映画を字幕なしで見られるようになりたい」という声を聞くこともよくあります。

しかし、勉強の効率性から考えるとどうでしょうか?先述の通り、私の場合、TOEICのリスニングセクションの音声は100%近く聞き取れても、海外映画の聞き取りには大変苦労します。

もちろん海外映画を使った勉強は楽しいですし、モチベーションを上げることで勉強への集中度は高まります。しかし、映画を使って楽しむだけではなく、同時に英語力も高めたいなら、それ相応の準備が必要となるでしょう。

もし、海外映画を使った勉強をするなら、具体的には、字幕は英語・日本語共に利用可能なものがいいでしょう。聞き取れなかった箇所は何度も聞き返す必要があるので5秒巻き戻しと10秒巻き戻しなどの2種類の巻き戻し機能がついているアプリなどを用いると便利です。

「海外映画を字幕なしで」楽しんだとしても、英語が理解できていなければ英語力のアップにはつながりません

「TOEICで勉強して大丈夫?」の疑問に答えます!

冒頭で触れた質問、「TOEICで990点を取れば、英語が使えるようになるの?」についてですが、この答えは非常に難しく、Yesでもあり、Noでもあると言えます。その人によって、得意分野とそうでない分野があるからです。

留学経験なしで、ずっと日本で英語を学んできてTOEIC 990点を取得した私の英語力と、数十年間の海外生活を経て、現地の人との交流を中心にして英語力を高められる環境でTOEIC 990点を取得した人の英語力は全く別物なのです。

おそらくその人は私の苦手としている海外映画の音声を私よりもずっと理解していると思います。この二人の比較は、ミシュランガイドに載っている日本料理店の料理長とフランス料理店の料理長を比べるのに似ているかもしれません。

「TOEICで勉強して大丈夫?」については「大丈夫!」と言い切れます。今までの連載の中でTOEIC教材を用いた勉強の有効性について、たびたび触れてきました。また、TOEICテストを受験し続けることのメリットについてもお伝えしました。

どうしても、英字新聞や雑誌の購読、CNNやBBCなどのライブ視聴、字幕のない海外映画・・・など、実用的で楽しい教材を手にしてしまいがちになりますが、自分に合った英語教材を用いることも同じくらい大切です。

最後にお伝えしたいのは、「TOEIC 990点を目指してください!しかし、990点がゴールではなく、その先も英語学習が続くのです」ということです。

私と一緒にさらなる英語力の向上を目指しましょう!

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英語力はメンタルで決まる

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西田大

西田大(にしだまさる)
1973年生まれ。関西大学文学部英文学科卒業。TOEIC 990点(満点)、英検一級、全国通訳案内士。23年間にわたり県立高校教員として勤務した後、通訳、英語講師として独立。通訳としての技量は高く評価され、国際会議や各国の大臣クラスの通訳にもアテンド。英語講師としては、TOEIC・英検などの検定試験から実用英語まで、幅広い分野の英語学習に精通し、その学習法・対策法は注目を集めている。著書に『「音読」で攻略TOEIC(R)L&Rテストでる文80』(かんき出版)、『英語力はメンタルで決まる』(アルク)、『TOEIC(R)テストに必要な文法・単語・熟語が同時に身につく本』(かんき出版)など。

プロフィール写真:山本高裕