英語をたくさん勉強してきたのに、うまく話せない。アウトプットって、いったどうすればできるの?そんなお悩みをお持ちではありませんか?イングリッシュ・ドクター西澤ロイの「英語健康診断」連載7回目では、英語の知識肥満症を治すダイエット方法をアドバイスします。さっそく、英語健康診断スタート!
検査:「豚に真珠」を英語で言えますか?
今回は、英語における「知識肥満症」を解消するためのダイエット方法についてお伝えします。英語の diet は「食習慣」を表し、「痩せる」という意味はありませんが、本記事での「ダイエット」は「痩せる」ことを意味する和製英語として使っています。
今回の検査では、2つの英作文に挑戦していただきます。
検査
次の日本語を、英語にして言ってください。
1.彼は頑固だ。
2.それは豚に真珠だ。
診断:解説と改善策
今回の英作文はちょっと難易度が高めです。検査のためにあえて、難しい英訳の問題を出しました。
実は、難しいと感じても、英訳にチャレンジしたかどうか?ということも検査の一部分なのです。
もし、英訳を試みずにそのまま、答え(処方)を読み進めようとしていたなら、あなたはすでに知識肥満症になっているかも!?
なぜなら、自分で何も表現しようとしないあなたは、寝転んでポテトチップスを食べながら、テレビを見ているようなものだからです。知識をインプットするだけでは、知識だけがぶくぶくと肥大化してしまいます!
大切なことは「体を動かす」こと。つまり、仕入れた知識をしっかりと使ってみるというアウトプットなのです。
答えが合っているかどうかは、もっと先のお話です。まずは、頭や手や口を動かして、自分の力で英語で表現してみることが重要なのです。
知識肥満予防ダイエット処方1:とにかく英語で表現してみよう
解答例1
まず、1問目の「彼は頑固だ」を直訳すると次のように表現することができます。
- He is stubborn.
解答例2
2問目の「豚に真珠」はいかがでしょうか。「豚に真珠を与える」と考えると次のように表現できるかもしれません。
- It’s like giving pearls to pigs.
和英辞典を引いたならば、casting pearls to swine のような、少し難しい表現が出てくるかもしれません。 cast は「投げる」という意味であり、swine は「豚」のちょっと難しい呼び方です。ちなみに「豚インフルエンザ」のことは swine flu と言います。
ただし、これらは全て「直訳」に過ぎません。英語での正しい(伝わる)表現方法は他にもたくさんあります。
知識肥満予防ダイエット処方2:文字通りに言おうとしない
「頑固な」という意味を持つ stubborn という形容詞をそもそも知らない人や、知っていてもパッと出てこなかった人もいるでしょう。知らなかったり、出てこなかったりする場合は仕方がありません。「頑固」という言い方にこだわってしまい、He is ... 以降が言葉にならないようでは良くありません。
また、「豚に真珠」は慣用句です。つまり、文字通りの意味ではなく、「無駄なこと」などの例えとして使われています。そのまま英語に訳しても、通じるとは限りません。
英語で言葉に詰まってしまう症状を、「直訳スピーキング病」と呼んでいます。そこから抜け出すためには、文字通りに表現しようとするのではなく、一度日本語を別の表現に言い換えることをおすすめします。
「頑固」であれば、例えば次のように言い換えができるでしょう。
私は彼のことが苦手です。彼は人の話を聞かない。
I don’t like him very much. He doesn’t listen to other people.
「豚に真珠」についても、発想を広げる必要がありますし、状況次第でさまざまな表現が可能です。例えば、次のように言い換えができるでしょう。
この時計は、彼には高価過ぎてもったいない。
This watch is too expensive for him.
彼女がそれをうまく使えるとは思わない。
ここでのポイントは、難しい言葉を使おうとしないことです。もちろん、洗練された単語がパッと使えたら、教養のある人に見られるかもしれません。しかし、ボキャブラリーというものは、「プロテイン(タンパク質)」に似ているのです。「基礎代謝」として、ある程度の表現力があるならば「筋肉」に変えられますが、ただたくさん取り入れるだけでは使いこなすことはできず、逆に自分の動きを重くする「贅肉」になってしまいやすいのです。
ですから、難しい単語はいったん捨てるというダイエットをおすすめします。中学校レベルの簡単な単語で、かなりのことが表現できますよ。
知識肥満予防ダイエット処方3:一言で終わりにしない
なお、ボキャブラリーに自信があって、「頑固」も「豚に真珠」もすんなり表現できたという人もいるかもしれません。そんな方であっても、「別に言い換えなんてしなくても大丈夫!」などと誤解してはいけません。
なぜなら、例えば、
He is stubborn.
It’s like casting pearls to swine.
のように言えたとしても、実際の会話がその一言で終わるわけではありません。また、相手がノンネイティブの場合、stubborn という単語を知らない可能性だってあります。
つまり、直訳で He is stubborn. と言えたとしても、そこで終わってはいけないということです。続けてもう一言二言、情報を付け加えられるかどうかが実際の会話では大切なのです。例えば次は、言い換えた表現を続けた例です。
He is stubborn. He doesn’t listen to other people. And he never says he’s sorry.
彼は頑固だ。他人の言うことは聞かないし、決して謝りません。
このように続けると、頑固さがより具体的に相手に伝わりやすくなるでしょう。また、もし仮に相手が stubbornという単語を知らなかったとしても、その後の発言により、あなたの言いたいことは充分に伝わるはずです。
「豚に真珠」の方も、もう少し描写を加えて表現した例を次に示します。
He won an expensive watch, but he lost it following week. As the proverb says, “don’t cast pearls before swine.”
彼は高価な時計が当選したんだけど、翌週にはなくしたんだって。豚に真珠をあげちゃいけないって、ことわざで言う通りだ。
おまけの検査:Do you like soccer? にどう答える?
今回の「頑固」や「豚に真珠」という例は、あえて難しい言葉でしたが、そのせいで英語にしづらく感じた人もいるかもしれません。では改めて、おまけの検査をしてみましょう。
おまけの検査
次の英語の質問に、英語で答えてください。
・Do you like soccer?
いかがでしょうか。もしここで、Yes, I do. または、No, I don’t. といった表現しか出てこなかったのであれば、ちょっと問題がありますね。
日本語に訳すと分かりやすいかもしれませんが、
A:サッカーは好きですか?
B:はい。
という返事では、会話がそこで終わってしまいます。会話を楽しんだり、盛り上げたりするためには、さらに言葉を続けることが大切ですよね。例えば次のように、せめて一言は付け加えたいものです。
Yes. I’m a big fan of Takefusa Kubo.
はい、久保建英選手の大ファンです。
Yes. I am crazy for Juventus FC.
はい、ユベントスFCが大好きでたまりません。
サッカーが好きでないならば、それで全く構いませんが、やはり一言で終わってしまうともったいないです。代わりに自分が好きなスポーツの話をしてもよいですし、サッカーについて質問したりするのもありですね。
No. I prefer tennis. I’m a huge fan of Nishikori.
いいえ、テニスの方が好きです。錦織選手の大ファンです。
I’m afraid not. I always wonder why people are so fanatic about soccer. Please tell me why.
残念ながら違います。いつも疑問に思うんですが、なぜみんなそんなにサッカーに熱狂しているんですか? ぜひ教えてください。
日本人には「キャッチボール」より「ドリブル」が大事!
会話はキャッチボールだという例えは、よく耳にしたことがあるでしょう。しかし、英語での会話においては、その認識が逆に、日本人をコミュニケーション下手にしてしまっています。
キャッチボールは、双方向のコミュニケーションであることの比喩としては良いのですが、日本人は短い発言しかすることができず、すぐにボールを手離してしまう傾向があります。英語圏におけるコミュニケーションで大事なのはむしろ、サッカーなどで言う「ドリブル」。受け取ったボールを1人でしばらく保持し、敵陣へと果敢に切り込んでいく。それくらい積極的に話をする意識を持つことが実は大切なのです。
二言三言しゃべるのはもちろんのこと、興味深い情報や面白いエピソードなどをしっかりと語れるようになることを最終的に目指していただくとよいでしょう。ゴール前にドリブルで切り込んで、そのままシュートして点を取ってしまう。それくらい強い気持ちで、ぜひ積極的に英語をしゃべってください。
だからこそ、ドリブルで切り込めるだけの身軽さが必要です。言葉に詰まってしまったり、発言が一言だけで終わってしまったりすることがないように、ぜひ英語知識のダイエットを心がけ、「知識肥満症」を解消していきましょう。
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執筆:西澤ロイ
イングリッシュ・ドクター(R)(英語のお医者さん)。
英語への「苦手意識」や「英語嫌い」を解消し、英語が上達しない原因である「英語病」を治療する専門家。獨協大学英語学科卒業。TOEIC満点(990点)、英検4級。アメリカのジョージア州に1年間の留学経験あり。「英語感覚」や「英語の考え方」を分かりやすく日本語で伝えるスキルには定評があり、「長年の疑問がすっきり解消した!」「そんな風に英語を捉えたことがなかった」「目からウロコ!」という多くの感動や喜びの声が寄せられている。著書に「頑張らない英語」シリーズ(あさ出版)、「TOEIC L&Rテスト最強の根本対策」シリーズ(実務教育出版)など、計9冊で累計15万部を突破。メディア出演多数。木8(木曜夜8時)の英語バラエティ ラジオ番組「スキ度UPイングリッシュ」の他、コミュニティFMにてレギュラー番組・コーナーを4本オンエア中。
公式HP:http://english-doctor.co.jp/
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/user/990english
写真:山本高裕
編集:増尾美恵子