外資系トップコンサルタントであるエリック松永さんに、ご自身の体験から「オトコマエ」な仕事の極意を教えていただきます。最終回の今回は、受験英語をリサイクルして仕事でオトコマエを発揮する勉強法についてです。
こんにちは。エリック松永です。仕事で周りによい印象を与える人や、交渉がうまくいく人が使う言葉遣いには共通する秘訣があります。今回は皆さんにその方法をご紹介します。
英語がしゃべれない、外資系企業で働く人たちの悩み
先日、ある友人からこんな相談を受けました。「外資系企業にいるけど英語がしゃべれない」
有名な外資系企業で働いている人なら、きっと皆 MBA 持っていて、英語はペラペラで、ランチにリンゴをかじったりするんだろうな、と思っている人が多いのではないでしょうか?実は、全然そんなことないんです。
僕は、AT&T、Accenture、IBM、Deloitte Tohmatsu、PwC などの外資系企業で働いてきましたが、正直、英語の達人にはあまり出会ったことがありません。しかも TOEIC スコアの低さが昇進のボトルネックになる人が少なくないのが実態なのです。
これは不思議なことではなく、これらの外資系企業が日本でビジネスを成功させているからこそなのです。日本のクライアントに対して日本人社員が成果を挙げている証拠でもあるわけです。だから皆さんにも名前が知られている人気の企業なのです。
受験英語は無駄だった?
僕に相談してきた方もそうですが、外資系のトップ企業には高学歴の方が多いのは事実です。つまり、彼らは大学受験では英語で偏差値70台を平気でたたき出していた方々なわけです。それなのに英語はしゃべれないし、TOEICの点数には苦労している。このことからよく言われるのが、「受験英語は意味がない」説。果たして本当に受験英語は意味がないのでしょうか?
前回の記事「目標達成の極意はワークスマートにあり」では、ゴール設定と実行プランを明確にし、がむしゃらな Work hard ではなく Work smart な努力が重要であると申し上げました。その意味では大学受験は明確なゴール設定がなされています。では、その難関を突破したにもかかわらず英語に苦労している原因は何でしょうか。
受験英語は、大学の入試問題で合格圏内の得点をたたき出すことがゴールです。ここではビジネスのセンスとか問題対応能力とかは、全く必要ありません。点数が合格圏であればいい。だからその大学の英語問題の傾向を知り過去問を解いたりして対策します。過去問と実際の仕事がリンクしているはずもなく、受験英語の点数獲得が完全に実用英語とマッチすることはありません。だから、受験英語は無駄という話が出てくるのです。
しかし、ちょっと待ってください。受験英語として学んだ文法や単語は、本当に無駄なのでしょうか?
仕事で使う英語は、構文がしゃれてなくてもいい!
前回の記事で紹介した、米国人気ドラマ「ドクター・ハウス/Dr.HOUSE」に登場する天才医師グレゴリー・ハウスの言葉を今一度思い出してください。
Work smart, not hard.
頭を使って働け!一生懸命働くんじゃない。
ビジネスで使う英語と受験英語のそもそもの違いは、英語の使い方です。受験英語ではさまざまな問題に対応して回答することが目的ですが、ビジネスで使う英語は、自分の思っていることを表現することが目的です。それがきちんとできれば、英語の役割は終わりです。
交渉術は英語の問題ではありません。ビジネスの英会話では、誤解を生むような難しい構文で話す必要はありません。われわれノンネイティブは、極めてシンプルな構文を使うことが大事です。外国人なんですから、英語の構文がしゃれてなくてもいいんです。あとは、自分が思うことを表現できる単語力です。
ビジネスではリアルタイムかつプレッシャーの中で自分を表現しなければなりません。単語は、体に染みつくくらいのレベルで暗記しなければ、頭の中に入っていないも同然。英単語を見て、しばらくうなって日本語の意味が分かるような単語は、ビジネスの場では使えないのです。
最強過ぎる!受験英語リサイクル学習法
では、具体的にどうすれば smart に勉強できるのか。ここでは受験英語の活用法を伝授しましょう。ここでのポイントは、ビジネス英語は、とどのつまり単語力であると肝に命じてください。
基本5文型をおさらいしよう
まず受験のときに使っていた文法の参考書か、できれば問題集を1冊用意してください。チェックするのは基本5文型です。例文を口に出して言ってみましょう。
第1文型 S + V(~は・・・する)
He works at a publishing company.
彼は出版社で働いている。
第2文型 S + V + C(~は・・・である〔になる〕)
一緒にお仕事できてうれしいです。
第3文型 S + V + O(~は-を・・・する)
I enjoyed business trip to Okinawa.
私は沖縄出張を楽しんだ。
第4文型 S + V + O + O(~は-に-を・・・する)
He showed us how to use the new copier.
彼は新しいコピー機の使い方を教えてくれた。
第5文型 S + V + O + C(~は-を〔が〕-と〔に〕・・・する)
His polite reply made his client happy.
彼の丁寧な返事が取引先を喜ばせた。
時制に気を付けて!
まずは、現在形と3単現(3人称単数現在には s が付く)、過去形、未来形の作り方に取り組みましょう。
そして、それぞれ、肯定文、否定文、疑問文を正しく作れるように、じっくり取り組みましょう。文法はこれだけ。これらの文は、3単現の s や、不規則動詞の過去形など、基礎的なことだけ注意すれば OK。
眠っている単語力をよみがえらせよう!
ここからは単語力を強化する筋トレです。まずは、受験英単語をインプット、次に覚えた単語を基本の5文型に入れて反復練習。慣れてきたら仕事で使う英単語を使って、基本の5文型に入れて反復練習。ここまできたら、プレゼンや仕事のメールで練習した単語をどんどん使っていきましょう。
Step 1:受験英単語をおさらいしよう
受験で使ったなじみの単語集を手元に置き、ノートの右側に単語集の日本語を一列縦に並べていきます。日本語を見て瞬時に英単語が思い浮かび発音ができたらOK。できるようになるまでは、英語を見て、発音記号を見て、ひたすら反復練習。
Step 2:おさらいして覚えた英単語を基本の5文型で使う練習をしよう
言いたいことを書けるようにしよう!これを完璧にします。step 1で覚えた単語を、さきほど頭にインプットした5つの文型に当てはめていけば、自分の言いたいことはかなり書けるようになるはずです。
Step 3:社内のメールなどを英語教材にして、さらに単語力を高めよう
ボキャブラリーを充実させていこう!筋トレの癖がついていれば難しくないはずです。外資系にお勤めの方であれば、社内のメールやプレスリリースを英語教材にしてしまいます。
分からない単語、特殊な使われ方をした単語を書き出し、自分で最適なしっくりくる日本語を当てはめ、最初の単語学習と同様にノートに日本語を書き出し、英語がすらすら出てくるようにします。
Step 4:社内で使われる頻度の高い単語を自分でも積極的に使っていこう
Step 3で出てきた単語は特に重要です。単語を仕事のメールやプレゼン資料で積極的に使うとよいでしょう。相手がよく使う単語を多用することで、こちらのメッセージが伝わりやすくなりますし、メールを英語教材として読み込むことで、会社の戦略や考え方も理解し身に付くようになるはずです。
終わりに
英語でコミュニケーションできるようになるには、このように、受験英語で基礎を身に付けて、あとは実際にビジネスで使われているものから吸収して、それを自分で使ってみるのが一番です。あとで、ライバルにすごい差をつけることになります。
この基礎体力があれば、近い将来、TOEIC スコアを上げたり、英語の交渉ができるようになるためのステップアップが可能です。大事なのは受験英語を最大限に生かした smart な勉強方法。語学もスポーツも、そして仕事も、地道な努力をした者こそオトコマエで、次々と実績を上げていくことができるのです。努力を惜しまず、皆さんもオトコマエ受験英語活用にチャレンジしてみてください。
Peace out,
エリック
エリック松永さんの本
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文:松永 エリック・匡史
アバナード株式会社 デジタル最高顧問。バークリー音学院出身のプロギタリストという異色の経歴を持つアーティストであり、放送から音楽、映画、ゲームから広告まで、幅広くメディア業界の未来をリードするデジタルメディア戦略コンサルティングのパイオニア。アクセンチュア、野村総合研究所、IBM、デロイトトーマツコンサルティング メディアセクターAPAC統括パートナー(執行役員)、PwCコンサルティング デジタルサービス日本統括パートナーを経て、ONE+NATION Digital & MediaのCEOとしてデジタル時代のイノベータとして活動。2019年より青山学院大学 地球社会共生学部 教授。青山学院大学国際政治経済学研究科修士課程修了。
編集:増尾美恵子