「発音が難しいから英語を話すのは苦手……」ではもったいない! 英語の子音や母音の発音について、久保岳夫先生が解説してきたこの連載も今回が最終回です。有名なあの建物を例に、「伝わる発音」について考えてみましょう。
意外に難しい? あの建物の名前
突然ですが、アメリカ大統領が住んでいる建物は何と呼ばれているか知っていますか。白いたたずまいで有名なホワイトハウス(White House)ですよね。White Houseは中学1年生で習う簡単な単語でできていますが、 正しく発音できていない人が意外と多い ような気がします。それは、whiteの発音で使われている[h]の発音ができていないとか、houseの発音で使われている[a?]の発音ができていないといった、「ひとつひとつの音の出し方」ができていないという意味ではりません。あのホワイトハウスの話を英語でしたいとき、この発音のどのようなところに気をつけなければならないのでしょうか。
White Houseはwhite house?
突然ですが、下の英文を正しく声に出して読むことができますか。
White House is a white house.意味のシンプルな文ですね。しかし、 「ホワイトハウス」と言うときと「白い家」と言うときでは、発音の仕方が若干異なる ことを知っていましたか。whiteとhouse。同じ単語を使っているのに、発音の仕方が違うというのはどういうことなのでしょうか。(ホワイトハウスは白い家だ)
WHITE houseとWhite HOUSE
結論から言うと、アメリカ大統領の邸宅であるWhite Houseは、WHITE houseという風にwhiteのほうにアクセントを置いて発音します。また、「白い家」を表すwhite houseはwhite HOUSEという風にhouseのほうにアクセントを置いて発音します。
ここでいうアクセントというのは、Whiteのところで声の高さが大きく変化するという意味で、音程が比較的高いところから低いところへと落ちることになります。辞書などの表記では、Wh??te Ho? use や wh??te ho? use というように、1番目立ったアクセントがある単語の母音の上に[ ? ]という記号をつけて表しています。ぜひチェックしてみてください。この記事では、より直感的にアクセントを感じられるようにWHITE houseやwhite HOUSEのように大文字を使って表しました。
それでは、それぞれの発音を練習してみましょう。
以下の英文を、お手本を聞きながら、1回目はゆっくりと、2回目は普通の速さで読んでみましょう。
1.White House(ホワイトハウス)
2.white house(白い家)
3.White House is a white house.ちなみに 、それぞれの読み方について、声の高さの変化を表すと、以下のようになります。(ホワイトハウスは白い家です)
White House
white house
「名詞+名詞」は前、「形容詞+名詞」は後にアクセント
英語では、一般的に 「名詞+名詞」というふうに名詞が2つ並んだ場合、前の名詞にアクセントが置かれることが多く、「形容詞+名詞」と並んだ場合は後ろの名詞にアクセントが置かれることが多い 傾向 があります。また、「名詞+名詞」、「形容詞+名詞」に かかわらず とも、2つの単語のつながりが強く、 慣用的に使うような表現の場合は前の単語にアクセントが置かれる ことがあります。例えば、light bulb という語句はLIGHT bulb と発音すれば「白熱電球」という意味になりますが、light BULB と発音すれば「軽い電球」という意味に受け取られる 可能性 が大いにあります。こういった 傾向 があることを頭に入れて、次の練習に取り組んでみましょう。
以下の英語を、アクセントの位置を意識して発音してみましょう。お手本を聞く前にどちらにアクセントがくるのかを考えてみましょう。それぞれ2回発音します。
1. greenhouse (温室)
2.green house(緑色の家)
3. black board (黒い板)
4.blackboard(黒板)
5.English teacher(英語の先生)
6.English teacher(イギリス人の先生)
7.sleeping car(寝台車)
8.sleeping baby(眠っている赤ちゃん)1.と4.のように、2つの語の結びつきが強くなったために、1語になっているものもあります。また、7.のsleepingように動詞が名詞になった「動名詞」が使われることもありますね。8.のsleepingは動名詞ではなく、現在分詞と呼ばれる形容詞です。
まとめ
White House の発音の仕方から見てきましたが、2つの単語(要素)が並んだ場合のアクセントのパターンは以下のようになります。
●ホワイトハウスは、white HOUSEではなく、WHITE houseと発音する
●「名詞+名詞」は基本的に前の名詞にアクセントを置く
●「形容詞+名詞」は基本的に後ろの名詞にアクセント置く
●2つの要素のつながりが強ければ強いほど前の要素にアクセントが置かれる
●つながりの強い2語は、1語になる場合もある
最後にあげた、「2つの要素のつながりが強く、合わせてひとつの名詞として独立した意味を持つかたまり」になっている場合は、前の要素にアクセントが置かれることが多く、こうしたものを「複合語」と呼びます。複合語とそうでないものを意識して、アクセントパターンを身につけましょう。
さて、全6回にわたり、英語の発音についての連載をお届けしてきましたが、いかがだったでしょうか。今回お話ししたことは、英語の発音のうちのほんの一部のことですが、読んでいただいた方に少しでも興味を持っていただけたなら幸いです。
発音というのは、人と話す際に相手に強く印象を与える大切な要素です。外国語の発音を身につけようとする際は、なんでもかんでもすべてネイティブスピーカーのようになる必要はありませんが、少なくとも 一貫したやり方で発音をすることが大切 です。日本語にない音はしっかりとその存在を理解し、紛らわしい音は区別して使用していく必要があります。そういう気持ちで発音練習に取り組めば、きっと相手に「通じる発音」が身につけられるはずです。ぜひ継続していっていただけたらと思います。
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文:久保岳夫
開成学園英語科講師。専門は英語教育学、英語音声学。学生時代に英語の音声に関心を持ち、英語教師の道へ進む。日本人英語教師として理想の英文朗読を研究している。趣味は英会話、囲碁、ランニング。資格はIPA Certificate of Proficiency in the Phonetics of English(英語音声学技能検定)、英検1級など。
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