海外の人が職場に来たり、海外とのやりとりが必要になったりして、英語を使ったあいさつやメール、会議に戸惑うこともこれからますます多くなるでしょう。急にそんな状況になったビジネスパーソンの相談に、異文化コミュニケーションと人事管理を専門とする経営コンサルタント、ロッシェル・カップさんが答えます。
海外の人とのあいさつやメール、会議のルールを知りたい
30代の会社員です。
最近、仕事で英語のメールを出したり、職場で外国出身の方と働いたりする機会があります。でも、いわゆる日本語での「お疲れさま」などの日常的な声掛けを英語ではどうすればいいのかや、英語のメールの書き方や会議でのルールなど、基本的なことが分かりません。失礼な言い方だったかもと後で思うこともあります。
グローバル化と一言で言いますが、どういうふうに英語で仕事を進めるのがいいのかを教えてください!
カップさんからの回答
この相談者のように、職場で外国人と一緒に仕事をすることが増えている日本人はかなりいます。そのため、今まで英語を使う機会があまりなかったのに、いきなりさまざまな場面で英語を使わなければならなくなりました。仕事ですから、とにかく失敗したくない気持ちがあるでしょう。
ここでは、会話やメール、会議のルールを全て詳しく書くスペースは残念ながらありません。そういったことの詳細を知るためには、そのテーマの本を手に取ることをおすすめします(この記事の最後に挙げている私の著書もよろしければご参照ください)。
この記事では、ぜひ意識していただきたいキーポイントを紹介します。
ためらわずに積極的に声掛けしよう!
まずは、間違いについて悩んだりするのはやめましょう。
違った文化の相手に対し、何か失礼なことをしてしまったかどうかを心配するのは当然です。実は、「日本のエチケットを知らないから失礼なことをしてしまうのではないか」と悩む外国人も多いのです。要するに、相手も緊張しているはずです。そのため、悩むばかりで何も会話をしないのではなく、間違いの可能性があっても、ぜひ一言でも声を掛けてみてください。
何も言わないままだと、「冷たい」「不親切」という印象を与えてしまう可能性がありますが、何か発言すれば、のちのち、きっとうまくいくはずです。実は、何か発言をすることはリスクが低いと言えます。
声掛けのためのほぼ万能な表現といえば、これです。
How are you?
お元気ですか?
もし相手がアメリカ人である、あるいはカジュアルな雰囲気をつくりたいのであれば、この表現も使えます。
How’s it going?
どうですか?
一定期間、会話していない相手には、次のように言うこともできます。
What’s new?
何か変わったことは?
これらの表現のうちどれを使っても、失礼だと受け取られることはほとんどありません。
天気の話題は万能
どんなことを話せばいいか分からない場合、日本人と同じように外国人もよく天気の話をします。そのため、日本人同士でも言う次のような表現は、外国人に対しても無難な声掛けだと言えます。
It’s really hot!
暑いですね!
Gee, it’s cold!
寒いですね!
Such beautiful weather, isn’t it?
いい天気ですね。
日本語の定番表現に決まった英訳はない
「お疲れさま」をどのように英語で言えばいいかという質問については、実は、そのような日本語で頻繁に使われているフレーズの、英語に相当する表現はありません。「お疲れさま」「頑張ってください」「よろしくお願いします」には一言でたくさんの意味が含まれていますが、英語の場合はより明確な表現を使うのが一般的です。
そのため、日本語で言いたいことを英語に直訳しようとするのではなく、状況を判断して、何を本当に言いたいのかを考えて、英語で伝えるのがベストです。例えば、次のように、伝えたい意味によって使い分ける必要があります。
お疲れさま!
Thank you for your hard work!(努力に感謝しています!) ※相手の功労をたたえる
Thank you.(ありがとうございます) ※単に礼を述べる
よろしくお願いします。
Looking forward to working with you.(一緒に働くことを楽しみにしています) ※初めて会う相手に対して
Thank you in advance for your help.(手伝ってくださることに感謝します) ※何かお願いをする
外国人が読んでくれるメールの書き方
メールを書くときに、まず覚えておかなければならないのは、多くの外国人は毎日殺到するメールをこなすのに悪戦苦闘しているということです。また、彼らは隙間時間を使ってスマホでメールを見ることが多いです。そのため、長過ぎるメールに対しては、返事が来ない、あるいは不完全な返事が来る恐れがあります。
英語のメールを書く際は、できるだけ簡潔に、的を射た書き方でまとめましょう。日本語のメールに書くような丁寧な表現や決まり文句を英語で書こうとする必要はありません。ポイントを絞って、分かりやすく書くことが大事です。日本では短いメールは失礼だという感覚がありますが、外国ではそのような考え方はなく、メールは必要な情報だけを書く媒体だと考えられています。
会議の目的と結果を明確に
外国人の多くは日本の会議に当惑します。何のために会議を開くかが不明確で、事前に議題が用意されていない場合が多いからです。部屋が混むほど大勢の人が会議に招待されるにもかかわらず、多くの参加者が発言をしないので、何のために招待したのか不思議に感じる外国人も少なくありません。ディスカッションやディベートが少なく、物事が会議の場で決断されることもなく、何を達成したのかが不明確のまま会議が終わってしまうことも多々あります。
外国人との会議を効果的なものにするためには、なぜ会議を開くのか、話す内容は何なのか、どのような進め方をするのかなどを説明することが大切です。
会議の目的を説明するには、次のような表現が役立ちます。
The purpose of this meeting is ~.
この会議の目的は~です。
During this meeting, we intend to accomplish ~.
この会議では、~を達成するつもりです。
トピックを紹介する際には、次の表現が使えます。
We will cover the following in today’s meeting.
今日の会議では、次のものを扱います。
Our topics will be ~.
トピックは~になります。
会議の進め方を説明する場合は、次のように言ってみましょう。
We’ll have a presentation, and then there will be Q&A.
プレゼンをまず行い、その後、質疑応答をします。
After the proposals are explained, there will be a discussion.
提案が説明された後、ディスカッションを行います。
会議の最後に、何を決めたかなど、会議で達成したことを確認することも必要です。次のような表現を使うことができます。
Let’s confirm what we decided today.
今日決めたことを再確認しましょう。
To recap, the action plans created in this meeting are ~.
ざっと振り返りをすると、この会議で作成したアクションプランは~。
To reconfirm, the next steps are ~.
再確認すると、次のステップは~。
とにかくコミュニケーションの努力をしよう!
上記は非常に基本的なことだけですので、これからご自身で記事や本を読んでさまざまなアイデアを入手することをおすすめします。
でも、本当に一番大事なのは、皆さん一人一人の態度です。フレンドリーに声を掛けて、積極的にコミュニケーションする姿勢を持てば、外国人はそれを評価して彼らの方からコミュニケーションをしてくるでしょう。そうすると、相乗効果が生まれます。ぜひ、外国人との会話やメールや会議を楽しんで、良い結果を出していきましょう!
雑誌EJでロッシェル・カップさんのレクチャーが聞ける!
『ENGLISH JOURNAL』2019年4~6月号に、ロッシェル・カップさんが登場!「EJ Lecture」コーナーで、カップさんの英語のレクチャー「日本人が英語で働くということ」が聞けます。4月号のテーマは「意思決定方法」。ぜひチェックしてみてくださいね!
ロッシェル・カップさんの本

反省しないアメリカ人をあつかう方法34 (アルク はたらく×英語シリーズ)
- 作者: ロッシェル・カップ
- 出版社/メーカー: アルク
- 発売日: 2015/12/24
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る

ロッシェル・カップが語る アメリカ人部下の人事管理法 Effective human resource management in the U.S. アルク はたらく×英語 シリーズ
- 作者: ロッシェル・カップ
- 出版社/メーカー: アルク
- 発売日: 2016/07/15
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る

- 作者: ロッシェル・カップ,到津守男,スティーブ・マギー
- 出版社/メーカー: クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
- 発売日: 2017/07/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
執筆:ロッシェル・カップ
異文化コミュニケーションと人事管理を専門とする経営コンサルタントとして、日本の多国籍企業の海外進出とグローバル人材育成を支援している。イェール大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営学院卒業。日本語が堪能で、『反省しないアメリカ人をあつかう方法34』(アルク)、『英語の品格』(集英社) をはじめ、著書は多数。朝日新聞等にコラムも連載している。
編集:GOTCHA!編集部