英語の翻訳者になるのに必要な日本語力、ありますか?

働き方が多様化する昨今、長く働き続けるために、英語好きの方なら翻訳を仕事にすることを考えたことがあるのでは?この連載では、幅広い分野で需要が高まっている「映像翻訳」を基礎から学ぶべく、GOTCHA!編集部員が、日本映像翻訳アカデミーとアルクが共同開発・運営する 「映像翻訳Web講座」 に挑戦。この最終回では、翻訳者に必要な「日本語力」について考えます。

前回までの記事は こちら

「翻訳者には英語以外の力も必要」と聞くけれど……

翻訳については(この記事では英語⇔日本語の翻訳を扱います)、次のようなことが一般的に言われています。

  • 英語力はもちろん必要
  • 日本語力も超重要
  • 調べ物のスキルも大事
  • 依頼時の注意事項を守る
  • 訳文の見直しをしっかりと
  • 申し送りをしっかりと
  • メールなどの返事は素早く
  • 用字用語や調べたことを 整理 しておく
  • 幅広いことに興味を持っておく
などなど。どれもその通りということばかりですが、全てをきちんとこなすのはなかなか大変そうです。

「映像翻訳Web講座」 でも、特に 「日本語表現力」「調べ物のスキル」「訳文の見直し」 は強調されています。

私は修行中の身ですので、これらについての極意などは分かりませんが、回は、実体験から日本語力についてちょっと書いてみたいと思います。

いきなり日本語クイズ!

突然ですが、ここで 「映像翻訳Web講座」 の「自習ドリル *1 」をチラ見せ。そこから出題します!

次の日本語で、間違った表現、不自然な表現はどれでしょう?

※プロレスラー「ミスターD」のインタビューを訳した原稿( 抜粋

ミスターD:的を射た意見だ。昨夜のヤツのファイトを見たか?怒り心頭に達したよ。最低なファイトだ。

ミスターD:今夜が勝負だ。かならず雪辱を晴らして、汚名挽回する。

解答はこちら。
・怒り心頭に達する→正しくは「怒り心頭に発する」

・雪辱を晴らす→正しくは「雪辱を果たす」「屈辱を晴らす」

・汚名挽回→正しくは「名誉挽回」。「汚名」を使う場合は「汚名を返上する」が正解

「ここが怪しいなー」「これがきっと落とし穴だろうなー」と分かっても、それを正確に直すのが難しいんですよね……。私は正直言って自信がないところもあったので、辞書で調べました。

ちなみに 、「的を射た(射る)」は正しい表現ですが、「的を得た(得る)」も正しい表現とする考え方もあります。最近、某テレビ番組でもこの点が取り上げられていました。

「気付ける」かがポイント

誤用や不自然な表現は、「なんとなく怪しい」と気付ける かどうか が大切だと思います。日本語辞書の内容が丸ごと頭に入っていれば素晴らしいですが、普通はそうもいきませんので、 気付く→(面倒がらずに)調べる ことになります。

気付かないのが一番恐ろしい。そして、「気付かない」のをゼロにするのもとっても難しい!ので、日々、修行です。

自分が翻訳者の方に翻訳を依頼するときは、納品時にこういう「気付き」を送ってくださるのは非常にありがたいです。上記のいわゆる「申し送り」ですね。疑問点や訳文に至ったプロセスをクリアに提示してもらえると、こちらの確認や 修正 がスムーズにできます。当たり前のことですが、自分が訳すとなるとつい分からないところを曖昧に訳してしまったりすることがありそうなので、気を付けなければと思います。

日本語教師になる勉強もする?!

翻訳に興味がある方は、日本語や言語全般に対する関心も高いかもしれません。

私の日本語への意識が変わった きっかけ は、たぶん何度かあったと思いますが、はっきり覚えているものは2つあります。1つ目は、学校の国語の授業で書いた作文を、先生が「この『それ』が何を指すのか不明瞭です」などといろいろと添削してくれたこと。2つ目は、同居していた家族が日本語教師になる勉強をしていたことです。

2つ目については、その家族にとって日本語の文法や発音がよほど難しかったらしく、通っている日本語教師養成スクールの試験が近づくと、「『~は』と『~が』の違い、説明できる?」などと難題を突き付けてきました。一緒に考えて、なんとか説明をひねり出すのですが、「じゃあ、この場合はどうなる?」などと謎は尽きず、余計に分からなくなったものでした。私にとって、日本語の難しさのごく一端を感じた体験になりました。

でもやっぱり英語力は大事!

日本語の難しさにもいまだに悩まされているものの、当然のことながら、英語もやっぱり難しい

英語の難しさを実感する体験は多々あります。文法理解に悩むことももちろんありますが、例えばインタビュー原稿など、その場で話している英語だと、内容に筋があまり通っていないと思われることもあります。でも、話し手の中では言いたいことがきちんとあるはずで、それをくみ取って、かつ、原文で言っていないことまで補足し過ぎないように、分かりやすい日本語にするのって、なんて大変そうなのでしょう!

これは、英語というよりは、もはや気配り力?!(適切な日本語が思い浮かびませんが……)

難しいけど面白い

翻訳や言語の奥深さを私なりに実感したところで、この連載はおしまいです。翻訳に興味を持った皆さんは、ぜひなんらかの形で挑戦してみてくださいね!

今回のポイント!

  • 英語力と日本語力の両方を磨く。
  • 気付ける態勢を常に整えておく。
  • 調べる手間を惜しまない。
  • 翻訳に興味があるなら行動する!

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受講体験者・文:アンズ(GOTCHA!編集部)
「手に職」をと、実務翻訳や文芸翻訳の講座を受講したことあり。映像翻訳は字幕・吹き替えともに未体験。最近はビジネス分野の実務翻訳でも動画の字幕・吹き替えの需要が増加しているという話を聞き、今回の受講へ。受講を終えた感想は(記事本文にも書きましたが)、「言葉」や「伝えること」って豊かだなあということ。字幕の「簡潔な美」に引かれますが、吹き替えの世界にももっと触れてみたいとも感じています。

*1 :「自習ドリル」:「映像翻訳Web講座」で、 提出 課題ではないが、もっと学びたい人向けに用意されている自習用の課題

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