NHKグローバルメディアサービス バイリンガルセンター 国際研修室は、まもなく30周年を迎える老舗のスクール。卒業すればNHK放送の通訳・翻訳業務に携われるのが最大の特長です。事務局の山田さんにお話を伺いました。
この記事はこんな人におすすめ
- NHKのニュースや番組台本の英訳を手がける翻訳者を目指す人
- 世界的なニュースや情報番組で活躍する放送通訳者を目指す人
- プロ通訳者
- プロ翻訳者
- 英語力を鍛えたい人
NHK国際研修室ってどんなスクール?
30年ほど前、NHKでBS放送が始まりました。海外ニュースを大量に和訳してくれる人が必要になりましたが人手が足りず、その人材育成のために作られたのが国際研修室です。
現在も「 NHKの放送現場で働いてくれる通訳者・翻訳者を育てる 」という大前提は変わっておらず、本校で学んだ受講生の多くが、卒業後にNHK放送現場で働いており、スクールと現場との密接なつながりが大きな特長です。
具体的なお仕事としては、NHKニュースの2カ国語放送の通訳、ニュースライティング、「NHKスペシャル」などの番組台本の翻訳などがあります。
大きく分けて、通訳系の講座と翻訳系の講座がありますが、最近では「通訳者や翻訳者を目指すわけではないけれどもハイレベルな英語力を身に付けたい」という需要も増え、さまざまな目標を持つ方に通っていただいています。
スクールの一押し講座 「日→英ニュースライティング」
本講座の特徴
1. NHKニュースの日本語原稿を英訳するニュースライターを育成
2. 講師はNHKで働く現役のニュースライター
3. 授業は少人数のワークショップ形式
NHKニュースの日本語原稿を、2カ国語放送や海外向けの英語ニュースに書き換える「ニュースライター」を育成する講座です。ニュースライターとは日本語原稿を英訳するお仕事ですが、「翻訳」だけすればいいかというと、そうではありません。
例えば、欧米では最新情報をニュースの冒頭に入れるのが常ですが、日本のニュースでは入る位置が決まっていないので、まず日本語原稿から「最新情報がどこか」を探し出して、英語ニュースの冒頭に入れる必要があるのです。また、日本に詳しくない視聴者を想定して、必要に応じた補足情報を入れることも求められます。
つまり、 日本語原稿を「翻訳する」というよりも、日本語原稿を読んで、解釈して、「英語ニュースを書く」 といったほうがイメージに近いお仕事です。講座名に「翻訳」が入っておらず「日→英ニュースライティング」となっているのはそのためで、この講座では、 英語力とともにジャーナリストとしての力 も付けていきます。
授業は現役ニュースライターによるワークショップ形式
講座を担当する講師は、NHKの放送現場で活躍する現役のニュースライターたち。NHKの放送現場では常にニュースライターが不足しているため、講師は後輩を育てるような気持ちで熱心に指導しています。
授業は5人ぐらいでのワークショップ形式。受講生は各々パソコンの前に座り、課題として提示されるその日のNHKニュース(1分弱)を20分程度で英訳。その後、各受講生の翻訳を全員で見ながら、講師が「ここはこうしたほうがいい」「この訳はわかりやすい」と講評しつつ、皆でディスカッションをして、最終的な英語ニュースを完成させるというスタイルが多いです。
講師がよく言うのは、まず 「間違えたら減点、ではなく点数をあげられない」 ということ。 間違った報道から国際問題に発展することもあり得るので、とにかく間違いに対してはシビア です。また、「1回聞けばその内容がストンと理解できるような原稿を書かなくてはいけない」とも教えます。「ストーリーを伝える気持ちで書くと理解しやすいニュースになる」と指導していますね。
宿題としては週に2本のニュース翻訳が出され、講師とネイティブのリライターがダブルチェックする手厚い体制を組んでいます。1つ1つの課題で着実に力を付けるための工夫です。
ニュースライティングは人生経験がプラスになる一生の仕事
受講生は、会社員の方、主婦の方、翻訳者としてお仕事されている方、などさまざまです。ただ、年齢に関しては40代以上が多い傾向があります。というのも、ニュースライティングはスピード勝負。現場ではニュースの背景知識を調べる時間が限られているため、どうしても、経験や知識の幅広さがある年代が有利になります。
年齢を重ねることがプラスになる、長く働ける仕事 なので、20代や30代のうちから将来を見据え、「ライティングスキル」や「翻訳英語」の講座からじっくり取り組んで、一番レベルの高い「日→英ニュースライティング」を目指していただくのもおすすめです。
海外在住経験や留学経験がなくてもニュースライターとして活躍している方はたくさんいます。 英語力だけでなく、日本語原稿を読みとる力が高いことや日本の過去のニュースを知っていることが強み になるのです。
卒業生のほとんどがNHKの放送現場で活躍
講座は週1回2時間で15週。最後に試験を受け、「仮卒業」の資格が取れたらいったんNHKの放送現場に出て、実際のニュースライティング業務を行います。そこで現場からOKが出たら晴れて「卒業」となります。卒業後、NHKグローバルメディアサービス バイリンガルセンターに登録すると、フリーランスのニュースライターとしてのお仕事が始まります。
現場で求められるレベルがかなり高いため、受講生は15週の講座を何度か繰り返してトレーニングを積みながら卒業を目指す方がほとんどです。このように聞くと「敷居が高い」と感じて及び腰になってしまうかもしれませんが、一番下の「ライティングスキルⅠ」から着実にレベルを上げ、今では放送現場でお仕事されているという方は少なくありません。
現場からは「ニュースライターが足りない」といつも言われています。少し長い道のりになるかもしれませんが、ニュースが好きで、われこそは、という方にはぜひチャレンジしていただきたいと思っています。
一生使える英語力を手に入れる!おすすめ講座リスト
詳しくご紹介した「日→英ニュースライティング」のほかにもさまざまな講座があります。レベルや目的は講座ごとに異なりますが、報道現場で通用する英語力を見据えたブレない方向性がNHK国際研修室の特長です。
[翻訳系]ライティングスキルⅠ・Ⅱ
受講の目安:TOEIC 730~950
ライティングの基礎からしっかり固めていく講座です。スパッと伝わる明瞭な文章を書くという方針のもと、数字データやグラフの効果的な入れ方などを通じてファクチュアルライティングを学びます。翻訳者を目指す方やライティング力を上げたい方が通っています。
[翻訳系]Writing Skills for Translation
受講の目安:TOEIC 930~990
「ライティングスキル」と「日→英翻訳」の架け橋となる講座です。ネイティブスピーカーの発想に近い感覚で文を書く練習をします。
[翻訳系]日→英翻訳
受講の目安:TOEIC 930~990
プロとして仕事をできるように、一定の時間内で翻訳する訓練を行います。教材はニュース原稿や雑誌の記事・番組台本など多岐にわたります。
[翻訳系]日→英放送翻訳
受講の目安:TOEIC 950
「日→英ニュースライティング」と並び、翻訳系で一番高いレベルの講座です。「日→英ニュースライティング」がニュース原稿の翻訳者を育成するのに対し、「日→英放送翻訳」は「NHKスペシャル」「クローズアップ現代」といった番組の英語台本を作成する翻訳者を育成するための講座です。
[通訳系]講座
- ニュース英語 I・Ⅱ
- Advanced Communication Skills
- 通訳基礎
- 同時通訳基礎
- 同時通訳 I・Ⅱ
- 放送通訳
取材・文・編集:株式会社 REGION
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