アルクがクラブアルク会員様向けに発行している語学情報誌、『マガジンアルク』より「イギリス英語 vs. アメリカ英語」と題して、さまざまな違いについて全3回に渡りご紹介します。
英語ネイティブたちの言葉の混線リアル事情
第1回は、語彙・つづりの違いについてご紹介しましょう。ネイティブスピーカー同士で、イギリス英語とアメリカ英語の違いに困ることはあるのでしょうか?アルクオンライン英会話の講師が実体験を明かします。
Case1:講師仲間のイギリス人の会話に頭の中は「?」だらけ
Peter先生/ニューヨーク出身
ニューヨークのブルックリン育ち。26歳の時に来日し、関西の英語学校や企業で英語を教える。日本に6年半暮らし日本語が得意。現在はアメリカ在住。
Peter先生は、下記のイギリス人同士の会話に困惑してしまいました。
Eric: What are you lot doing at the weekend?
Rob: Are you mental? It’s half five on a Monday.That’s not cricket.
エリック:「ウィークエンド」で何する予定?
ロブ:メンタルきてる?今、月曜の5時半だよ。クリケットじゃないね。
....ん?“The Weekend”はバーか何かの名前なのか?メンタルきてる...?クリケットじゃない...?会話の意味がわからない!!!
これをアメリカ英語で言うならこんな感じ!
Eric: What are you guys doing on the weekend?
Rob: Are you crazy? It’s half past five on a Monday.You must be mad thinking about the weekend when it’s still so far away.
エリック:今週末はどんな予定?
ロブ:どうしちゃったの?今、月曜の5時半だよ。まだ先の週末のことを考えるなんてよろしくないね。
そういう意味だったのか。イギリス式の冗談の言い合いには困惑させられるよ。アメリカ英語では“at”は具体的な時間や場所について使うけど、イギリス人は“at the weekend” を“at the end of the week”(週の終わりの時点で)の省略として使うんだ。アメリカ英語では、“on the weekend”と言うんだよね。
“at the weekend” を“at the end of the week” や “at the week’s end”の省略形として使うのは、イギリス英語の正しい用法。
ロブの“mental”は、イギリスのくだけた表現で「正気ではない」の意味です。
“not cricket”は、cricketが紳士的なスポーツであること から「公明正大でない」の意味で、イギリスの会話で 使われるイディオムです。
Case2:アメリカ人との会話では単純な単語でつまずくことも
Laura先生/ロンドン出身
大西洋に浮かぶポルトガルのサンミゲル島在住。タイやホンジュラスなどで英語を教えてきた経験を生かして地元の人にも英語を教えている。大の旅好き。
Laura先生は、ある単純な「物」について友人と話していて面食らってしまいました。
Me: I’m going pram shopping today.
My friend: What’s a pram?
Me: You know, a buggy.
My friend, looking more confused: Oh, like a gokart?
Me: No, the thing you put the baby in. It has wheels and you push it.
My friend: Oh, a stroller!
私:今日、「プラム」を買いに行こうと思って。
友人:「プラム」って何?
私:ほら、バギーのこと。
友人(もっと混乱した様子で):ああ、ゴーカートみたいな物?
私:違うって、中に赤ちゃんを乗せる、車輪が付いていて押して動かす物。
友人:ああ、ベビーカーね!
同じ英語でも、アメリカ人の発言について、イギリス人はかなりかけ離れた意味で受け取ることがあります。そしてその反対のことも!アメリカの友人との間では、とっても滑稽で混乱した会話になってしまうことがあるんですよ。
“pram”は、19世紀に「ベビーカー」の意味で使われていた “perambulator” が短縮された単語。現在のイギリスでは、特に新生児から使える「ベビーカー」の意味で使われています。“buggy”は古くは「馬車」の意味。アメリカでは、ゴルフや遊園地などで使う、屋根のない4輪車を指すことが多く、「ベビーカー」の意味ではstrollerのほうが一般的です。
Case 3:カナダはイギリス英語?アメリカ英語?
Marie先生/オンタリオ州出身
オンタリオ州在住で、映画関連の仕事をしている。オンライン英会話のレッスンでは日本語対応もOK。今は、スペイン語を学んでいる。
Marie先生には、カナダではイギリス英語とアメリカ英語、どちらを使うかインタビューしてみました。
“You must be Canadian!” As a writer, this is something I have heard much too often, after forgetting to change my spelling to the “American” way. Whether they like it or not, a Canadian can be exposed① pretty quickly in the U.S. and it is because of British-spelled words like “col
our ,” and “centre .”Why does this happen? Well, Canada has traditionally used British English, and though it is subtle② , British English is different from American English. An American “jelly ③ ” is “jam” in Canada and Britain. Similarly, “grades ④ ” are “marks.” Most of the time these differences go unnoticed, but if used out of place⑤, someone may get a chuckle at your expense⑥. Now every time I write, depending where it’s going to be published, I double-check my spelling. That way, I can avoid “You must be Canadian!”
- ①expose:(人目に)さらす
- ②subtle:微妙な
- ③jelly:[米]ジャム
- ④grade:[米]成績の評点(通例-s)
- ⑤out of place:不適切な状況で
- ⑥at one’s expense:(人)をだしにして
「あなたカナダ人でしょう!」 ライターとして、アメリカ式につづりを変えることを忘れてしまった時、よくこんなふうに言われます。好むと好まざるとにかかわらず、アメリカではカナダ人は、すぐにそれと知れてしまいます。“colour”や“centre”といった単語をイギリス式につづるから。
なぜそんなことが起きるのか?カナダでは伝統的にイギリス英語を使っていて、わずかとはいっても、イギリス英語はアメリカ英語と違うのです。アメリカの“jelly”は、イギリスやカナダでは“jam”と言うし、“grades”は“marks”と言います。ほとんどの場合、こういった違いは気付かれずに済むのだけど、ふさわしくない場で使ってしまうと、そのせいでクスッと笑われてしまうこともありますよ。今は文章を書く時にはいつも、どこで出版されるかによってつづりを再確認するようにしています。「あなたカナダ人でしょう!」って言われずに済むようにね。
カナダはその歴史的つながりから、発音、つづり、語彙のいずれもイギリス、アメリカ両方の影響を受けています。“defense”[米]を“defence”[英]とつづる一方、”realize”はアメリカ式を用いて、“realise”[英]とはしません。
いかがでしたか?ネイティブスピーカー同士でも、国によってニュアンスや言い回し、使用するシチュエーションなどにも違いがあるのですね。日本語でも方言があるように、英語にも種類があるんですね。奥が深い!映画のセリフに注目して違いを楽しんでみたり、海外旅行で土地によって使い分けてみるなど、試してみてくださいね。
本記事に登場したネイティブ講師たちに英語を習える!
アルクオンライン英会話
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構成・解説・訳:マガジンアルク編集部
編集:GOTCHA!編集部 末次志帆
イラスト:つぼいひろき