学生時代、英語が苦手でずっと避けて通ってきた、会社も英語とは縁遠いところに就職した……なのに、急に仕事で必要になるなんて! という方に向けて、「とりあえず押さえておけば大丈夫」という基本的な文法をご紹介します。
第2回 前置詞が入る? 入らない?
以下の間違いに気が付きますか?
We discussed about the project.
(私たちはそのプロジェクトについて議論した)
この英文をなんとなく「合ってるんじゃない?」と感じてしまった人、意外と多いのではないでしょうか? この英文が間違っている理由は
- discussは他動詞だから
なのですが、 この説明ではぴんと来ない人も多いかもしれませんね。
多くの人はこの中学で習ったルールを覚えていないと思います。というのも、おそらく「日本語ではほとんど意識されないルール」だから。普段日本語では意識しないルールのなので、あまり上手く頭に入らなかったのだと思います。
【質問】次の文のうち、正しい英文には○、そうでないものには×をつけなさい。
1. I visited.
2. I went.
3. I visited the office.
4. I went the office.
5. I visited to the office.
6. I went to the office.
【正解】
× 1. I visited.
○ 2. I went.
○ 3. I visited the office.
× 4. I went the office.
× 5. I visited to the office.
○ 6. I went to the office.
1と2: visit の直後にピリオドだと×、 go の直後にピリオドだと○。
3と4: visit の直後にthe officeだと○、 go の直後にthe officeだと×。
5と6: visit の直後にto the officeだと×、 go の直後にto the officeだと○。
となります。なぜそうなるのか…実は中3で以下のように習うのです。
- visit は他動詞だが、go は自動詞だから。
はい、もう見たくない人は逃げたでしょ? でも今回は逃げないで下さい。なるべく易しく説明しますから。
多くの人が動詞の意味を正確に覚えていない
ここからは辞書を使います。ごく普通の学習用英和辞典をご準備下さい。visit と go を辞書で引いて「意味」を調べて下さい。
「えー visit や go ぐらい、辞書なんか引かなくたって、意味は分かるよ。visit は『訪問する』で、go は『行く』でしょ?」
と思っている人は大勢いるでしょう。残念ですが、その考えには間違いが含まれていますから。
go は「行く」で意味はあっています。辞書を引けば「行く」と書いてあります。ですがvisit は「訪問する」で意味はあっていません。辞書を引けば「訪問する」とは書いていません。
「え!」と思った人! ぜひvisit を引いて下さい。もっとも引いても「うそつけ! ちゃんと『訪問する』って書いてあるぞ!」とおっしゃるかもしれません。よく見ると「…を」が書かれているはずです。つまり
× 訪問する
○ …を訪問する
のようになっているはずです。この「…を」がものすごく大事なのです。
1. I visited.
この英文の和訳を考えてみてください。visited は「訪問した」ではなく「…を訪問した」です。となると I visited. の適切な訳は
「私はを訪問した」…になります。
日本語でも変ですよね。でもこれが I visited の正しい訳例です。I visited. がなぜ間違いなのかが分かったと思います。
2. I went.
went は「行った」ですね。「…に行った」ではないですよ。したがって I went. は
「私はに行った」…ではないです。
I went. がなぜ正しいのが分かりましたか?
3. I visited the office.
visited は「…を訪問した」です。なのでI visited the office. は
「私はその事務所訪問した」…ではないです。
I visited the office. がなぜ正しいかが分かったと思います。
4. I went the office.
went は「行った」で、「…に行った」ではないので、 I went the office. は
「私はその事務所に行った」…ではないのです。
日本語が変ですが上が I went the office.の正しい訳例。これで、I went the office. がなぜ間違いなのが分かったと思います。
5. I visited to the office.
visited は「訪問した」ではなく、「…を訪問した」です。今回はto がありますね。こういうケースで使う to なら「…に」という意味でしょう。したがって I visited to the office. は
「私はその事務所にを訪問した」…になります。
I visited to the office. がなぜ間違いなのかが分かったと思います。
6. I went to the office.
went は「行った」ですね。「…に行った」ではないですよ。今回はto がありますね。こういうケースで使う to なら「…に」という意味でしょう。したがって I went to the office. は
「私はその事務所行った」…ではないです。
I went to the office. がなぜ正しいのが分かったと思います。
このような使い分けを知ってましたか? 多くの人がいい加減に覚えています。ここで覚えて欲しい用語は以下の3つ!
- 自動詞
- 他動詞
- 目的語
ひとつずつ簡単に説明していきましょう。
自動詞とは?
難しく言うと「直後に目的語となる名詞(相当語句)がつけられない動詞」なのですが、簡単に言うと go 「行く」のように、辞書を引いて訳語を見たら「…を」とか「…に」がついていない動詞です。
他動詞とは?
「直後に目的語となる名詞(相当語句)をつけなければならない動詞」です。 つまり visit 「…を訪問する」のように、辞書を引いて訳語を見たら「…を」とか「…に」がついている動詞です。
目的語とは?
「他動詞の直後に来る名詞(相当語句)」で、広義では「前置詞の直後に来る名詞(相当語句)」です。 つまり 和訳例を作ったとき、「…を」とか「…に」とか「…と」などになる部分の「…」に当たる部分。
つまり
- go 「行く」…自動詞
- visit「…を訪問する」…他動詞
- I visited the office. 「私はその事務所を訪問した」…この場合 the office が 他動詞visited の目的語
- I went to the office. 「私はその事務所に行った」…この場合 the office が 前置詞to の目的語
となります。
自動詞と他動詞の区別は本当に大事だと思います。辞書を引けばマークがついているので簡単に判別できます。[他]は他動詞の意味、[自]は自動詞の意味です。
「えー! 今まで『…を』が付く、付かない、なんて意識したことがなかった。これから全部の動詞で『…を』が付いているかいないかを覚え直さなければならないの?」 という質問を、よく受けます。
私の返事は決まっています。
「はい。全部覚え直して下さい」
大体の人は「嫌だー」ですよね。でも覚え直さなかったら、いつまでたってもこの手の間違いが続いてしまいます。でも実は普通の英語学習者ならば、感覚的に既に多くを覚えている可能性が高いです。 例えば、以下はどちらが正しいと思いますか?
- I have with a pen.
- I have a pen.
- I looked at the man.
- I looked the man.
おそらく、多くの人は感覚的に
× I have with a pen.
○ I have a pen.
○ I looked at the man.
× I looked the man.
と思ったはずです。
I have with a pen. なんて聞いたことがないし、I have a pen なら正しそうな気がしますよね。 haveの意味は「…を持っている」のはず。「…を」が付いているのだから、have は他動詞と分かるのです。
同じようにI looked at the man. ならば聞いたことがある…と思ったはずです。 I looked the man は見覚えや聞き覚えがない。だから look は「見る」、at が「…を」になる。look 自体の意味には「…を」が付いていない。だから look は自動詞と分かるのです。
このように、過去で少しでも学んだことの蓄積は無駄にはならないわけです。今日以後は、これらを踏まえつつ、その動詞が「自動詞なのか、他動詞なのか」に注意して覚えていただければと思います。
では冒頭の問題に戻ります。
We discussed about the project.
(私たちはそのプロジェクトについて議論した)
discuss は自動詞でしょうか? 他動詞でしょうか?
辞書を引いて下さい。[他]と書いてあるはずです。つまり他動詞。
discuss の意味は
×「議論する」
○「…を議論する」 です。
We discussed about the project.の訳は
「私たちはそのプロジェクトについて議論した」はなく
「私たちはそのプロジェクトについてを議論した 」になります。
下は日本語でも変ですよね。これで、We discussed about the project. がなぜ間違いなのが分かったと思います。
about がいらないのです。
We discussed the project.
こうすれば「私たちはそのプロジェクトを議論した」 となります。
自動詞・他動詞の区別は日本人の多くが意識していません。しかしこれをきちんと意識できれば、それだけでもあなたの英語はかなり改善されると思います。
文:マウスバード
早稲田大学卒。中高では英語は赤点ばかりの超オチコボレであったが、浪人時代に苦手なりにも受験英語をクリアーする方法に目覚める。未だに英語が嫌いなため、英語が嫌いで苦手な人に教えるのが好き。
ホームページ:本気で嫌いな英語を何とかする方法
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