アルクが クラブアルク会員 様向けに発行している語学情報誌、『 マガジンアルク 』よりビジネスパーソン必見の特集をお届けします。電話会議でうまく意見を伝えられず、学習のモチベーションも 低下気味という相談者に、カン先生がアドバイスします!
教えてくれた先生
カン・アンドリュー・ハシモト先生
作詞家・作曲家。ジェイルハウス・ミュージック代表取締役。アメリカ・ウィスコンシン州出身。小学校でのALTを経て、教育・教養に関する音声・映像コンテンツ制作を手掛け、英語教材や教育用映像を多数制作。著書に『3語でできる おもてなし英会話 すぐに 使える簡単な案内&接客フレーズを厳選!』(ディーエイチシー)など。
相談者
仲摩弥穂(なかまみほ)さん(会社員)
外資系医薬品製造会社に勤務し、品質管理部門を担当。途中転職も経て、この仕事に携わって約10年。電話会議に参加する際に、言いたいことが伝わらずもどかしい思いをすることも。
焦ってきたら、いったん会話を止めてみる
英語の電話会議についてお悩みということですが、状況を少し詳しく教えてもらえますか?
はい。スイスの本社で行われている会議に、私だけが電話で参加する、というシチュエーションです。使用言語は英語ですが、みんなネイティブスピーカーではないので、ドイツ語やフランス語、ヒンズー語なまりの英語が飛び交っています。そんな中、私は話しているうちに焦ってしまい、文法がおかしくなって言いたいことが伝わらなくなる、ということがあって……。
なるほど。でも、仲摩さんは、これまでたくさんの電話会議を経験してきたでしょう? そうすると、焦って「あれ、なんだかおかしくなってきたぞ」というタイミングが、自分でもわかると思うんだ。だから、そう感じたら、 会話を止める。“ Well , what I want to say is ...”とか、“ Well , I mean ...”という言葉を挟んでね。 でも、日本の人たちは、そんなふうに人を待たせることを、申し訳なく思っちゃうのかな?
そうかもしれません。待たせて申し訳ないと思いつつ、仕事のことだからわからないままにもできなくて。でも、あちらの人たちは、必ず最後まで発言を聞いていてくれるんです。
早口になったら、話すスピードを落として
彼らにとって、あなたが話し終えるのを待つのは苦痛じゃない と思うんだ。少なくとも、僕たち英語圏の人間は、子どものころから「 人の話は最後まで聞くのがマナー 」って、厳しく教えられるから。それに、彼らもあなたの母語が英語じゃないということはわかっているんだから、少しずつでも話していけば、きっと伝わると思うよ。その時に、「早くしゃべりなよ」なんて、相手は思わないはずだから。
今、お話を伺って思ったのですが、日本語で話していても、なぜか「早く話さなきゃ」と自分自身をせかしてしまうようなことがあるなあと。でも、そうするとやっぱり相手に伝わらないんですよね。
そうそう。だから、 ゆっくり話すことも大事なこと だよね。そういえば昔、僕が日本の英会話学校で教えていた時に、上級者ほど早口で話そうとして口ごもってしまうという場面を何度も見たよ。本当は話せるのに、もったいない。だから僕は、いつも彼らに言っていたんだ。“You can speak slowly!”ってね。
でも、そこが電話会議の難しいところで。相手の顔が見えないから、相手は聞いてくれているのか、あきれているのか、わからないところがあって。
あきれるわけないよ! だって、This is business ! だから。ビジネスではあいまいにしてはいけない要素がたくさんあるから、わかるまで確認しなくちゃいけない。 相手にも、あなたが伝えようとしていることを理解する義務がある しね。同じように、あなたも相手の言うことがわからなければ、“Let me interrupt. Would you say that again?”って言って、 何度でも聞き直していい んだよ。
相手に聞き直す時は必ず名前も添えて
実は、ノンネイティブの中でもヒンズー語なまりが、私には難しくて。一度、1対1でインドの人と電話で話した時は、結局最後までわからず「メールにしよう」となったことがありました。
じゃあ、会議中に、その人に何度も聞き直してみたら? その時、 “ Would you say that again, Peter?”のように、必ず名前も添えて ね。そうすると印象が良くなるだけでなく、Peterは「僕の発音が聞き取りにくいのかな?」なんて考えてくれる かもしれない 。とはいえ仲摩さんは、仕事上必要なことは確認できているんでしょ?
そうですね。考えてみれば、必要なことは伝え、確認できているからこそ、仕事がちゃんと進んでいるわけで。そういう意味では、私は完璧を求めてしまっていたのかもしれません。
僕なんか、今でも日本語を間違えてしまうことはあるけど、“I did it again.”(あ、またやっちゃったな)って、それで終わり。だって、 何か違うなと思ったらその都度確認すればいいわけだし、確認することで、誤解は解ける 。でも、日本の人たちは、相当話せても“I can’t speak English.”って言っちゃう奥ゆかしさがあるよね。実際、仲摩さんは、ちゃんと話せていると思うよ。おそらく医薬品などの専門用語は一般的なアメリカ人より知っているだろうし。そうじゃないと、こんな高度な仕事はできないからね。だから、もっと自信を持っていいと思う。
ありがとうございます。ちょっと自信が付きました。実は来週も会議があるのですが、落ち着いて臨めそうです。最近、英語学習へのモチベーションも下がり気味でしたが、お休みしていたオンラインレッスンを再開したくなりました。
そう思ってもらえて良かった。コミュニケーションには 理解し合う心が大切 だから、ちょっとくらい間違えてもDon’t worry! 頑張ってください。
“相手に伝える”ためのポイント
カン先生にもっと背中を押してもらいたい方へ
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取材・文:伊藤みずほ
写真:マガジンアルク編集部
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