「英語力を身に付けたい!」そう思っている人はたくさんいます。でも、「英語力がある」とはどういう状態なのでしょう?そして、そこへ至るには何をすれば?今回紹介する本『新しい英語力の教室』を読めばヒントがみつかるかもしれません。
「ティーチング」ではなく「コーティング」する本
本書は、いわゆる英語学習本とはちょっと勝手が違います。英語フレーズも文法解説も一切なし。英語を「ティーチング」するのではなく、英語習得という目標に向けて「コーチング」する本なのです。
著者は、同時通訳者として活躍する田中慶子(たなか けいこ)さん。英語のプロとして20年以上の経験を持ち、コーチングも手掛ける田中さんが、今の時代に求められる英語力や、それを身に付ける方法を、じっくりコーチしてくれます。
本書では、モデルとして「英太(えいた)さん」という30代の男性が登場。仕事熱心で、いつかは海外へと思いつつ、英語に苦手意識のある英太さんが、田中コーチとともに学習計画を立てていきます。
田中コーチは、何かを教えたり、押し付けたりはしません。英太さんへの質問を、根気よく、くり返します。
コーチングでは、コーチは質問することでクライアント(コーチングを受ける人)が答えを見つけるサポートをします。大切なのは、すべての答えはクライアント自身が持っているということです。
結果として、英太さんのニーズに合っていて、しかも無理のない学習計画ができあがりました。この過程は、私たち誰もが自分の英語学習に応用できそう。
まずは英語学習の目的をブレイクダウン
英語学習をスタートするにあたり、まず田中コーチが勧めるのは「英語を使って何をしたいか」をはっきりさせること。
英太さんの場合は、田中コーチと話すうちに、次のようにブレイクダウンされていきました。
英語ができると何かと有利
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外資系企業に勤めているので、ニューヨーク支社で働いてみたいが今の英語力では難しい
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まずは、英語で行われる本社の会議に参加したい
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半年後、本社の会議で「10分間の活動報告と5分間の質疑応答」を英語でやりたい
当初は英語学習の目的が漠然としていましたが、田中コーチと話していくうちに、期間もやることも具体的になりましたね!
田中コーチが英太さんに行った5つの質問は、本書にワークとして掲載されています。実際にやってみると、自分でも意外な発見があるかも。
本書では、続いて「取り組むべき課題」や学習方法、学習を習慣化する方法についても、田中コーチの質問を受けてブレイクダウンしていきます。
ちょっと面倒な気もしますが、ここでじっくり深掘りすることが、自分の望む結果につながるそう。
「よしやるぞ!」と英語学習を始めたものの、つい三日坊主になってしまう・・・。そんな方は、ぜひ、田中コーチの誌上コーチングに取り組んでみてください。
不安は、可視化、言語化、数値化する
本社の会議に向けて、英語学習を頑張ってきた英太さん。しかし、本番直前になって、「緊張する。きっとボロボロだ」と急に不安になってしまいます。ここでも、田中コーチは質問によって、英太さんの不安をブレイクダウン。
プレゼンはきっとボロボロだ
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では、0点?
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これまで勉強してきたし、10点満点で6点くらいはいけそう
英太さん、だいぶ落ち着いてきました。田中コーチの質問は、こうです。
「最悪の事態」を0点とし、「うまくいった最高の状況」を10点とすると、どれくらいの点数がとれそうでしょうか。
こう考えてみると、やるべきことをやっていれば、さすがに0点にはならないはず。あと何点足りないかを考えれば、打つ手も見えてきますね。
本書によれば、「人は未知のことに恐怖心を抱くもの」。ただ「できない」と不安に思うのではなく、その場面をリアルに想像して可視化したり、「焦っている」「緊張している」と感情を言語化したりすることで、不安な気持ちが緩和されるのだそうです。さらに、数値化すれば、自分の気持ちを客観視できて効果的。
この考え方は、英語だけでなく、仕事や人間関係など、何にでも応用できそうですね。異動や昇進、転職など、環境が変わったときには不安がつきものですが、何が不安なのかを掘り下げることで、おのずと対処法も分かってきます。
英語を話す機会がないなら「エア会話」!
本書で田中さんが繰り返し訴えているのが、英語は「使うこと」で身に付く、ということ。リスニングやリーディングももちろん大切ですが、そうやって身に付けた知識は、繰り返し「使う」経験をしなければ、「スキル」にはなりません。英会話のレッスンやサークルなど、実際に話す場をできるだけ多く、定期的に持つことをすすめています。
とはいえ、お金も時間もなかなか自由にならない人も多いですよね?先ほどの英太さんも、仕事が忙しいなか、英語学習を続けるのは大変そうでした。
そんな人への田中さんのおすすめは、英会話ならぬ「エア会話」です。この「エア」は「エアギター」のエア。相手がいなくても、そこにいるものと妄想して、架空の会話を繰り返すのです。相手がいるものと想定して、思ったことをどんどん口に出してみましょう。
また、視野に入ったものを次々と英語で説明する「英語実況中継」もおすすめです。これなら、いつでもどこでも、英語を「使う」練習ができますね。
まとめ
最近、「リスキング」という言葉が話題になり、社会人には、新しい知識やスキルの習得が求められています。
毎日仕事をこなしながら、さらに何かを身に付けるのは、とても大変なこと。本書で提案している、「課題の洗い出し方」「学習方法の選び方」「習慣化の方法」は、英語はもちろん、他のスキルの習得にも生かせそうです。英語やり直しに挑戦する人はもちろん、社会人なら、読んで損なしの1冊です。