思ったことや感じたことを、英語でパッと言えるようになりたい。それにはどんなトレーニングをすればいいのでしょう?現役の同時通訳者が書いた本『スピーキング力を手に入れるための英語独習法』を紹介します。
著者の横山カズさんはどんな人?
本書の著者、横山カズさんは、同時通訳者にして英語講師。さまざまな業界で同時通訳を手掛け、大手企業や大学、中学・高校でも英語を教える「英語のプロ」です。
こう聞くと、「やっぱり帰国子女だったり、留学してたりするんだろうな・・・」と思ってしまいますが、なんと日本国内で独学で英語をマスターしたというから驚きます。
きっかけは、6歳くらいのとき、テレビで同時通訳者の姿を目にしたこと。英語を日本語に、日本語を英語に瞬時に置き換えるスキルと、「問答無用のスピード感」に、圧倒されたのです。
そのときの衝撃と感動が、横山さんの原点。試行錯誤を繰り返して生まれた独自のメソッドを、早速チェックしてみましょう。
まずは「自分への取材」からスタート
英語独習の第一歩として、本書では「自分への取材」を勧めています。
日ごろ、自分がどんな表現を使っているかを把握するため、普段の日本語での会話を録音して聞いてみるのです。
このひと手間で、自分が探し求めている表現に出会い、自分のものにできる確率が飛躍的に上がるのです。あらかじめ自分がよく使う言い回しを知っておくことで、英文を読む際に、必要としている表現が心に引っかかり、気づきやすくなります。
確かに、日本語で話しても、英語で話しても、別の人格になるわけではありません。大体、同じようなことをして、同じようなことを話しているはず。
自分が日ごろ、よく使う言い回しを先にチェックしておけば、あとあと役に立ちそうです。
この段階ではトピックにこだわらず、よく使う言い回しをピックアップしてリスト化します。
なぜなら、それはトピックに関わりなく自分がよく言っている言葉のパターン、つまり骨格となる表現であるからです。
リスト化するのは日本語でOK。
やってみると分かりますが、よく使う言い回しには、自分の性格、大げさに言えば思考パターンのようなものが現れている気がします。
私の場合は、こんな感じでした。
どっちでもいいよ。
それはそれ、これはこれ。
自分がやりやすいようにやって。
そういえば、家でも職場でもよく使っています。そして大概のことは「どっちでもいい」「たぶんどうにかなる」と思っていますね、自分・・・。
ともあれ、こんな具合に、自分が日ごろよく使う言い回しをチェックしておくことで、自分が必要とする表現が分かります。先にアンテナを立てておけば、英語に触れたときに、必要な表現が引っかかってくるわけですね。
素材となる英文を探す
ここまで来たら、横山さんが提唱する「パワーリーディング」に取り組みます。
パワーリーディングとは、「興味や感動といった感情の力と連動させた読解」のこと。自分の心の琴線に触れた英文を読み込むことで、その表現を自分の中に取り入れる能動的なリーディングです。
素材は、自分の心が求めるものなら何でもOK。こうなると、今はインターネットがあるから便利です。本書で勧めているのはこちら。
- ツイートやYouTubeのコメント欄
- 広告
- インタビュー記事
1や3については、検索すれば自分の興味のあるものがすぐ出てきますし、2についてもネット上で目にすることができます。
特に1は、すぐにチェックでき、短時間で目を通せるのがありがたいですね。
これらは「会話に限りなく近い」生の英語の宝庫。投稿者の気持ちがシンプルな語彙でダイレクトに表現されています。昔なら海外に住まないと触れられなかったタイプの英語を、今ではインターネットで簡単にとらえることができます。
確かに、普通の人の生の英語は、ネットが普及するまではなかなか目にすることがありませんでした。テクノロジーってありがたいですね・・・。
ポイントは、「これ!」という表現に出合ったら、走り書きでもいいので、手書きでメモしておくこと。
こうすると、場所や雰囲気とともに、表現が記憶に取り込まれるのだそうです。
では、どんな動画を見ようかな・・・と検索してみて、私のアンテナに引っかかったのがこちらです。
ホントにゲスな人間ですみません。
でも、自分に素直にセレクトしたおかげで、コメント欄で気になる表現がいくつも見つかりました。
訳は、私による抄訳ですのでご参考までに。また明らかに間違いである部分は修正しています。
What did they honestly expect?
正直なところ、彼らは何を期待していたんだろう。
Oh dear, that didn’t go very well!
やれやれ、上手くいかなかったね。
まあ、ねえ・・・。
こういうカッコいいのもありました。
It's a free country, or at least it's supposed to be.
ここは自由の国、少なくともそうあるべきだ。
Anyone has the right to express their opinion by booing or cheering or shouting whatever they want.
誰でも、自分の意見を表明する権利を持っている。ブーイングしたり、歓声をあげたり、叫んだり、自分が望むやりかたで。
ゲスっぽいのから、カッコいいのまで、気になる表現があっという間にたくさん集まりました。
手に入れた素材をフル活用!
自分が使いそうな、気になる英語表現を手に入れたら、さらに活用してみましょう。
まずは、前述した通り、気に入った表現をさっと手書きで書き留めておきます。
さらに、その日本語訳を2例以上、自分で考えてみるとよいそう。こうすることで、日本語と英語が自分のなかでしっかりと結びつき、思ったことがさっと英語で出てくるようになるのです。
日本語訳に自信がない場合は、Deeplなどの自動翻訳を使えば答え合わせができます。同時に発音もチェックできますね。
音読も、ぜひやってみましょう。自分の気持ちに合った表現なので、口からさらっと出てくると、とっても気持ちがいいです!
ぜひ、自分に合うものを探してみてください。
まとめ
本書のタイトルは、「英語独習法」ですが、英会話教室やオンライン英会話を利用している人にも役立ちそう。
教えてくれる人がいるとしても、「どんな表現が自分の心にピタッと来るか」は、自分で確かめるしかないですからね。そして、レッスンのときにその表現をどんどん使えば、より効率よく実力アップできそうです。
「独学」は、「孤独な学習」ではなく、自分自身を主人公にした「独自の学習」のことなのかも、とそんなことを考えた1冊でした。