「今聴いてほしいアーティスト」と関連楽曲を、音楽が伝えるメッセージや社会的・音楽的文脈などと併せて渡辺志保さんが解説します。
今月のアルバム
サマー・ウォーカーのセカンドアルバム『 Still Over It』を紹介します。
2019年リリースのデビューアルバム『 Over It』で「ソウル・トレイン・ミュージックアワード」2部門を受賞し、一躍有名に。『 Over It』の続編とされるセカンドアルバム『 Still Over It』(2021)は全米1位となり、ビヨンセの『Lemonade』以来初の、女性R&Bシンガーによる快挙となった。恋愛で傷ついた心を代弁する、R&B界の新歌姫
写真:Mike Ware /Sipa USA via Reuters Connect
今回、紹介するのはアメリカ、アトランタを 拠点 に活動する女性シンガー、サマー・ウォーカーのセカンドアルバム『 Still Over It』だ。このアルバムは発売とともにチャート首位をマークし、女性のR&Bシンガーとしてはビヨンセの『Lemonade』(2016)以来のビッグ・セールスを記録した。
この作品を発表するまでの約2年間、彼女は恋人であり人気プロデューサーでもある男性、ロンドン・オン・ダ・トラックと別れ、かつシングルマザーとして第一子を出産した。『 Still Over It』では、生々しいエピソードを交えながら、全編を通して“ダメ男”とのドラマチックなエピソードを語っていく。
人気シンガーのSZAを迎えた収録曲「 No Love」では、“Tell me what’s changed, is it my status ? Is it my fame?”(何が変わってしまったのか教えてよ、私のステータスや人気?)と、ここ数年で一気にブレークし、多くの人気を集めたウォーカーならではの歌詞も登場し、SZAが歌う箇所には“I would give like ten percent. You deserve like half of that. I’ma need my money back.”(印税を10%しかあげたくなかったのに。半分も持っていった。私のお金返してよ)と、恋人がプロデューサーならではのいざこざ話も明らかになっている。そして、「4th Baby Mama」では“How could you make me spend my whole pregnancy alone?”(なぜ出産のときも一人ぼっちにさせたのよ)と、辛辣過ぎる訴えも。
今や、R&B界において最も共感できるストーリーテラーともいわれているサマー・ウォーカー。美しい旋律とソウルフルなボーカル、そして繊細な表現力を総動員して、彼女の怒りを表現しているのがこのアルバムだ。その歌声のかれんさから、一聴すると甘い雰囲気が伝わってくる かもしれない が、内容的には取り扱い要注意。もしあなたが今、恋人との関係に悩んでいるのであれば、その背中を強く押してくれる作品だ。
恋愛に疲れたときに聴きたい女性シンガーの曲5選
今回の記事で紹介している音楽のプレイリストをご紹介します。恋愛に悩み、傷ついた人におすすめしたい女性シンガーの楽曲を併せて聴いてみよう!
- No Love by Summer Walker & SZA
- New Rules by Dua Lipa
- Sorry by Beyonce
- Ur Best Friend by Kiana Lede & Kehlani
- thank u, next by Ariana Grande
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※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2022年2月号に掲載した記事を再編集したものです。
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渡辺志保 音楽ライター。主にヒップホップ関連の文筆や歌詞対訳に携わる。これまでにケンドリック・ラマー、A$AP・ロッキー、ニッキー・ミナージュ、ジェイデン・スミスらへのインタビュー経験もあり。block.fm『INSIDE OUT』をはじめ、ラジオMCとしても活躍中。SERIES連載
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