2022年大注目のラッパー、イートのセカンドアルバム『2 Alive』

「今聴いてほしいアーティスト」と関連楽曲を、音楽が伝えるメッセージや社会的・音楽的文脈などと併せて渡辺志保さんが解説します。

今月のアルバム

イートのセカンドアルバム『2 Alive』を紹介します。

2 Alive [Explicit]
  • Field Trip Recordings/Geffen Records
Amazon
メキシコ人の父とルーマニア人の母を持つ、アメリカ出身のラッパー、イート。2015年から音楽活動を始め、2018年に初EP『Deep Blue Strips』をリリース。2021年の楽曲「Sorry Bout That」がTikTokを中心にバイラルヒットしたことを きっかけ に、世界で注目を集める。

独自のセンスで時代の新たなトレンドを生み出す、新進気鋭のラッパー

どの言語にも、若者言葉や流行語が存在し、辞書や教科書には載らないスラングとして時代の文化を形成している。現在、SNSや音楽チャートでじわじわと存在感を増しているラッパー、Yeat(イート)は、独自のセンスで言葉を「発明」し、そのユニークさによって人気を集めている若手アーティストだ。例えば、彼の楽曲タイトルにもなっている“tonka”という単語は「かっこいい車」を指す。“twizzy”は「双子(twin)」をイート流に変化した単語で、双子そのものを指す他、「双子のように親しい、仲の良い親友」という意味も併せ持つ。

イートの面白さは、もちろん言語センスだけではなくそのサウンドにもある。シンセサイザーの音色がバシバシと響くトラックに、ランダムにつぶやかれるようなフローやメロディーはヒップホップがさらに進化した 先に あるもの。カナダ出身のアーティスト、ドレイクも既にイートのことを評価しており、2月に発売されたアルバム『2 Alive』はビルボードのアルバムチャートでもトップ10入りを果たした。彼の言語的特徴の一つに、“e”は必ずウムラウト付きの“e”として表記されるというルールもある。こうした決まり作りもまた、ファンたちが「イート語」にハマるポイントなの かもしれない

ちなみに 、人気ラッパーのガンナも今年に入って“pushin P”というスラングをはやらせた。そのまま訳すと「Pを押す」となり意味不明だが、このPには“power” や“paper(金)”などさまざまな意味が内包されており、転じて「気合を入れる」とか「本気でやる」とか「かっこよくキメる」などの意味を指すスラングとして広まっている。常にイノベーティブなラップミュージックだが、次に飛び出すのはどんな自由なスラングだろうか。

新たなトレンドを生み出す楽曲5選

今回の記事で紹介している音楽のプレイリストをご紹介します。2022年、新しい言葉やトレンドを生み出す楽曲を聴いてみよう!

  1. Luh geek

    イートのアルバム

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    https://s.alc.jp/EJPlaylist

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    ※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2022年6月号に掲載した記事を再編集したものです。

    渡辺志保 音楽ライター。主にヒップホップ関連の文筆や歌詞対訳に携わる。これまでにケンドリック・ラマー、A$AP・ロッキー、ニッキー・ミナージュ、ジェイデン・スミスらへのインタビュー経験もあり。block.fm『INSIDE OUT』をはじめ、ラジオMCとしても活躍中。

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