英会話は、簡単なフレーズでも相手と仲良くなれる!日本にある法人向けの高級アパートメントで外国人滞在客のコンシェルジュをしているKayo(重盛佳世)さんが、楽しいエピソードとイラストと共に、幅広く使える英語フレーズを紹介します。国内の企業で活躍後、40歳を前に長年勤めていた会社を辞めてイギリスのカンタベリーに語学留学し、英会話本を出版したKayoさんのとっておきのコツがいっぱい。第5回は「外国人に簡単な日本語表現を教える」です。
日本語を覚えたがる滞在客たち
滞在客たちは、フロントで私と交わす英語の会話に 片言の日本語を交ぜて きます。
例えば、「コンニチワ」「オハヨウゴザイマス」「アリガトウ」など。私がGood morning!とあいさつすると、「オハヨー ゴザ イマス」と返ってきます(太字は、強調して言っている箇所)。
私たちが海外に行って、現地の言葉は分からないけれど、取りあえず あいさつとお礼の言葉だけは覚えて使う のと一緒ですよね!
そしてもう少し慣れてくると、次はこう尋ねてくるのです。
How do you say, “Have a good day” in Japanese?
“Have a good day”は日本語でどう(あなたは)言いますか?
How can I say, “Have a good day” in Japanese?日本語では「良い一日を!」と言うことはあまりありませんが、海外では、この Have a good day.はHello.やGood morning.の後に付けるあいさつ の一部なのです。
“Have a good day”は日本語でどう(私は)言ったらいいですか?
私はこう説明しています。
It is “Yoi ichinichi wo!” in Japanese. “Yoi” means “good.” “Ichinichi” is “one day.”すると「ヨイ イチニチ ヲ!」と繰り返してみるのですが、 発音が難しい らしいのです。
それは日本語では「ヨイ イチニチ ヲ!」です。“Yoi”は「良い」という意味。“Ichinichi”は「一日」です。
「日本語らしい」発音に四苦八苦
「良い一日を!」は通常、「 ヨ イ イチニチ ヲ!」と、最初の「 ヨ イ」を高く発音します。しかし、英語を話す外国の方々のほとんどは、「ヨイ イ チニチ ヲ!」と「 イ チニチ」の方を強く言ってしまいます。
ほかのフレーズでも同様で、イントネーション(抑揚)が激しい英語と比べると淡々としている日本語を、それらしく発音するのは至難の業のようです。
教えるにしても、どこを高く言うかの明確な決まりがないので、個々のフレーズについて発音してあげるしかありません。それを耳で聞いて、声に出して、と何度も繰り返すことで覚えてもらうしかないのです。 私たちが英語を習うのと一緒 ですね!
毎朝の日本語レッスン
「良い一日を!」の日本語を教えた人たちには、次の日から私の日本語レッスンが始まります。
朝、顔を合わせると、私からはあえて日本語で「おはようございます」と声を掛けます。すると相手も、「オハヨウゴザイマス!」と返してくれます。
そして私は、そのまま何も言わずに相手を見詰めて待ちます。「さあ、次は何?」「前回覚えたのを言ってみて!」と目で訴え掛けるのです。すると相手は、「ン・・・」と思い出している様子。
私から「ヨイ・・・」とちょっとヒントを出すと、「ああ」という感じで、「ヨイ、 イ チニチヲ???」と自信なさげに言い、私を見ます。案の定、「 イ チニチ」の方を強調して言っています。
そこで、すかさず私が、「 ヨ イ、イチニチヲ」と正しい言い方をすると、相手も「 ヨ イ、イチニチヲ」と繰り返してくれます。そして私は、次のように言って、グーサインとウインクをするのです。
私:That’s right ! Take care !滞在客:Thanks, you too!
私:その通り!気を付けて(いってらっしゃい)!
滞在客:ありがとう、あなたも(気を付けて)ね!
日本語と英語がごっちゃに?!
ある日、いつものように滞在客と朝のプチ日本語レッスンをやっていたときに、ちょうど日本人客が現れました。
普段なら「おはようございます。いってらっしゃいませ」とあいさつするところですが、そのときは「おはようございます。良い一日を!」と言って、相手からクスっと笑われてしまいました。
一瞬、どうして笑われたのか不思議に思いましたが、 すぐに 、「あっ、日本語と英語がごちゃごちゃになっている!」と気付き、シマッタって(笑)。 「良い一日を!」なんて、日本人からしたら聞き慣れない 言葉ですものね!
海外にいるなら、ずーっと英語脳で話せばいいのですが、このように海外の人と日本の人が入り交じっている環境で話す場合、私の脳は少々パニックになります。あらためて、通訳には向かないなぁ~と思いました(笑)。
英語話者に日本語の数字、1から10を教えるには?
ところで、外国人が覚えたい日本語の一つに「数の数え方」があります。
これは私がイギリス滞在中にも多くの人たちから求められたので、ホストマザーとそのお孫さんと一緒に、「どういう伝え方をしたら、英語話者にとって覚えやすいか?」と意見を出し合いました。
その結果、こんなふうになりました。 日本語の数字に発音が近い英単語 を示し、その英単語が表す意味を 動作 で表現しながら、口と体を使って覚えるという工夫をしています。
数字 | 当てはめた英単語 | 動作 |
---|---|---|
1 (one) イチ | itchy it?i](イチィ)「かゆい」 | (かゆそうに)体をかく |
2 (two) ニィ | knee [ni?](ニィー)「膝」 | 膝を指さす |
3 (three) サン | sun [s??n](サァン)「太陽」 | 太陽(空)を指さす |
4 (four) シー | she [?i?](シィー)「彼女」 | 女の子(イギリスにいたときはお孫さん)を指さす |
5 (five) ゴゥ | go [go?] (ゴォゥ)「行く」 | 前方を指さして歩く |
6 (six) ロク | rock [r??k](ロォク)「岩、石」 | 地面に転がる石を指さす |
7 (seven) ナナ | nana [n??n?](ナナ)「おばあちゃん」 | おばあちゃん(イギリスにいたときはホストマザー)を指さす |
8 (eight) ハチ | [hatch ha?t?](ハァチ)「(飛行機のドアの)ハッチ」 | ハッチを開けるジェスチャーをする |
9 (nine) キュウ | [queue [kju?](キュー)「列」 | 列に並ぶジェスチャーをする |
10 (ten) ジュウ | Jew [d?u?](ジュー)「ユダヤ人、ユダヤ教徒」 | 長いひげのジェスチャーをする |
当時、ホストマザーのお孫さんは5歳だったのですが、 この方法で すぐに 日本語の数字を覚え 、それを幼稚園でほかの園児たちに教えたそうです(笑)。おかげで、そのクラスの子たちはみんな、日本語の1から10まで言えるようになったのだとか。子どもは覚えるのが早い!
ちなみに 、このお孫さんは、イギリスの典型的なオマセな女の子でした。当時は幼稚園で「私にはKayoっていう日本人の友人がいるの。だから私は日本語を習っているのよ!」と自慢していたそうです。実際のところ、私はその子のお母さんより年上だったのですが、彼女にしたら友人。なんせ、彼女は私の英語の先生でしたから(笑)。
私はこのイギリスでのエピソードを、滞在客によく話します。そして、同じように日本語の数え方を教えると、皆さん一発でマスターしてしまうのです。不思議ですよね!
ここで紹介した日本語の数字の教え方は、外国人とのコミュニケーションで使えますので、試してみてください。
日本語をたちまち覚えるアメリカ人学生
昨年の夏から秋にかけて、色白で背の高い青年が滞在していました。彼はアメリカの大学院生。
なんでも在学中に、海外の企業で2カ月間の研修をする決まりがあるそうで、彼は日本を 希望 してやって来たとのことでした。
彼が研修するところは世界的にも有名な日本企業で、彼の生まれ育ったカリフォルニア州にも大きな支社があるとのこと。
その日本企業が研修生のために、この高級アパートメントを用意しているというのは、さすがグローバルに活躍する会社は違います。 同時に 、彼もきっと優秀な学生なのだろうなあと思いました。
そのアメリカ人の彼は、とにかく日本語を覚えたくて、フロントにいる私のところによく来ていました。
ほかの滞在客と同じように、最初は「良い一日を!」や「どういたしまして」のあいさつから始めて、次は日本人がよく使う「すみません」の使い方を、Excuse me.の例を出しながら説明。その後、「元気ですか?」「今日は良い天気ですね」「暑い日ですね」なども一緒に練習しました。
滞在の最後には、 ちょっとした日本語の日常会話ができる ようになりました。とにかく一度教えたことは即マスターして、次の日には使ってきます。教える側としても、次に何を教えたら良いか?と真剣に考えるようになっていました(笑)。
そんな感じで、彼が滞在した2カ月間は、日本語の練習をしながら、彼の家族や日本での研修についてもおしゃべりし、楽しいコミュニケーションが続きました。
最終日に渡されたメッセージカード
そして、彼が退去するときのこと。
私は、ほかの滞在客にもしているように、彼に滞在してくださったお礼を伝えました。すると彼から、「Kayo、本当にありがとう。これ、僕が去った後に読んで!」と、小さな封筒に入ったメッセージカードを渡されたのです。大きな彼には似つかわしくない、ちっちゃなかわいいカードでした。
そこには、こんなメッセージが書かれていました。
Thank you for all of your help with teaching me some useful Japanese! I am always happy to see you and to speak with you. I am very grateful for your friendliness and hospitality . Thank you for making me feel at home here.特に最後の文、 Thank you for making me feel at home here.にはグッときました。私が働いているアパートメントを家のように感じてくれたなんて、私にとっては最高の褒め言葉です。
使える日本語表現を教えてくれてありがとう!あなたと会って一緒に話すのがいつも楽しかったです。親しみのこもったおもてなしをしてくれて、とても 感謝 しています。あなたのおかげで、ここ(このアパートメント)で家にいるように過ごせました。
同時に 、自分がイギリスで語学留学していたとき、ホームステイ 先に 帰ってホストマザーに「今日は学校で〇〇があってね・・・」「授業で〇〇を教わったの」と、あらゆることを報告していたときのことを思い出しました。
彼も私にいろいろなことを話してくれたのは、こんな感じだったのかな?と。・・・ということは、 彼にとって、私は日本の「ホストマザー」 でしょうか(笑)。そうであったらうれしい限りです。
このアパートメントでのコンシェルジュの役割は、高級ホテルとは違ってかしこまらず、滞在客にとって話し掛けやすい、フレンドリーな関係になることです。彼に対しても、その役割を果たせたのだと思います。
そして、今でも私は、この彼からの心温まる手紙を手帳に入れて大切に 保管 しています。
Kayoさんの本
▼「道案内」や「外国人とのちょっとしたコミュニケーション」ができるようになる一冊。中学レベルの短いフレーズでOK!「日常のあるあるシーン」から英語を楽しく学べます。オリンピック・パラリンピックを前に、ぜひ!
- 作者: 重盛 佳世
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2014/04/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
文・2点目イラスト:Kayo(重盛佳世/しげもり かよ)
40歳を前に長年勤めていた会社を辞めてイギリスのカンタベリーに語学留学し、現地での生活に引かれて、その後も滞在を繰り返す。その間、語学学校での学習を自分流にまとめた英会話本「 アラフォーOL Kayoの『秘密のノート』 」シリーズを出しながら、 同時に 現地のガイドブック作りにも励み、電子書籍で出版。現在は執筆の傍ら、日本で外国人向けアパートメントのコンシェルジュとしても活躍中。