今、注目の「働き方改革」。残業が無くなる、雇用形態による格差が無くなるなど、いいことがたくさんありそうですが、急激な変化に戸惑っている人も多いのでは?異文化コミュニケーションと人事管理を専門とする経営コンサルタント、ロッシェル・カップさんに、よくある悩みを相談してみました。
男性の育休はやっぱり無理?
30代の会社員、男性です 。
もうすぐ初めての子どもが生まれるので、私も育休を取りたいと思っています。しかし、会社には制度はありますがまだ利用した人はいませんし、男性が育休なんてありえないという雰囲気です。あきらめたほうがいいでしょうか。
カップさんからの回答
間もなく出産とのこと、おめでとうございます。そして、育休をとって赤ちゃんのケアに参加しようとする意思はとても素晴らしいことです。また、あなたの勤務先が、男性でも育児休暇が取れる制度を導入しているということも素晴らしいことです。
でありながら、ご 指摘 のように、実際にそのような制度を利用できるかというと、まだまだそれを奨励しない職場環境が多いのが実態です。
同じ場所にいてこそグループの一員!?
背景としては、残念ながら 日本の職場では、「みんなと同じ場所、同じ時間帯にいること=グループに属している証拠」という雰囲気が非常に強い のです。このような意識が存在するため、日本でのワークライフバランスは非常に達成しにくいものなのです。
例えば、周りのみんなと同じように夜遅くまで働いたり接待に出席したりできない子どもがいる母親社員は、チームの本当の一員ではないという風潮があります。
また、同じ場にいないといけないという考えに縛られ、テレワークを認めようとしない会社も少なくありません。みんな同じ時間帯の中で働かないといけないから、フレックスタイム制度を導入したくないという姿勢も一部には見られます。
同様に 、みんなが働いているのに1人だけ休む人はチームに貢献していないというレッテルが貼られやすいので、長期的な休暇は取りにくいし、男性の育児休暇に対する抵抗も存在します。みんなが同じ場所、同じ時間帯にいなければならないというのは、みんなが同じであるという 前提 に基づいているので、各従業員の個人としてのニーズと好みを無視することになります。
現代は「働き方」の転換期
なぜ日本ではそのような考え方が色濃いのかというと、これはあくまで私の仮説ではありますが、日本の昔の働き方に 原因 があるのではと思います。
江戸時代以降、日本人の多くは村に住んでお米などの農作物を育てていました。お米を育てるために、村の住民みんなが田畑で一緒に働いて 作業 に集中していたので、みんなが 同時に 同じように働かなければいけないという考えが根付いたのではないかと思います。
現代のオフィスで行う知的労働は、根本的に田畑で働くこととは異なりますが、その過去の考え方はいまだ残っていると言えます。現在では、職場だけではなく、学校のクラブ活動にも同じ 傾向 が見られます。
多くの会社は今、そういった従来の職場環境をより柔軟で多様な、働き手に合うようなものに切り替えようとしています。その意味では、今は転換期であると言えます。
人事部に相談してみよう
会社が男性の育児制度を設けているということは、人事部が従業員にそれを利用してもらうことを望んでいるのではないかと思います。
そのため、私がここで推薦したいのは、人事部に直接相談に行くことです。「育児休暇制度を利用したいが、自分に悪 影響 が出るのではないかという 心配 がある」ということをはっきりと伝えることです。それに対して、人事部がどのように回答するかを見て 判断 した方がいいでしょう。
もし人事部があなたの 心配 に理解を示し、あなたに報復などの悪 影響 がでないようにするためにどんな対策を取るかを 具体的に 説明できれば、 安心 してその制度を利用できると思います。逆に、人事部の人があなたの 心配 を軽視して、「大丈夫だろう」というような無神経な回答をするようであれば、育児休暇を取ることをやめた方がいいかもしれません。
こういった質問に対してどれほどきちんと答えているかで、人事部のプロフェッショナリズムを 判断 できる と思います。要するに、人事部の答え方によって、困ったときに人事部が頼りになる かどうか を 把握 できるはずです。
育休は企業にとってもメリットがある
もし人事部から心強い答えが出たとすれば、次のステップは上司と話すことです。育児休暇を取りたいということを伝え、そして育児休暇を取ることによってほかのチームメンバーへの負担の増加が発生しないように、どんな対策が必要かという趣旨の会話をすることです。
もちろん、 事前に 周りへの 影響 を削減するための対策を自分で考えられるのであれば、ぜひそうしましょう。例えば、子どもが生まれる前に、済ませておくことのできる仕事はありますか?
また、人事部との会話の中で、自分が育休をとっている間に、自分の仕事をカバーする人をほかの部署から配属したり、パートを雇ったりすることができるか、その 可能性 について聞いておいた方がいいです。
運がよければ上司は理解を示してくれるでしょうが、 もし難しそうなのであれば、人事部に頼んで、上司に話して説得するようにしてもらえばいい のです。
会社としても、自社が「働く親」に対して優しい会社であることや、「働き方改革」を積極的に 実施 している会社であることなどを宣伝したい はずです。
もしあなたが会社で初めて育休を取る男性従業員となれば、会社のそういった狙いの達成につながりますので、会社はそれを奨励するはずです。
育児休暇をちゃんと取れるよう願っています。
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編集:GOTCHA!編集部執筆:ロッシェル・カップ
ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社 社長。
異文化コミュニケーションと人事管理を専門とする経営コンサルタントとして、日本の多国籍企業の海外進出とグローバル人材育成を支援している。イェール大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営学院卒業。日本語が堪能で、『 反省しないアメリカ人をあつかう方法34 』(アルク)、 『英語の品格』 (集英社) をはじめ、著書は多数。朝日新聞等にコラムも連載している。