TOEIC対策のカリスマ講師、ハマーこと濵崎潤之輔さんの連載「明日の風を今日吹かせよう」。今回のテーマは「最高になれ、他は忘れろ」。日々の挑戦と選択の中で、本当に大切なことに集中することの重要性について、ハマーさんが洞察を深めます。
家計が苦しくなったら夫の小遣いを減らす?
少し前に読んだ本に、家計の話がありました。物価の高騰などで家計を切り詰めなければいけなくなったとき、多くの主婦は夫の小遣いを減らします。そして、さらに節約が必要になると、今度は食費を減らすことを検討します。食べる肉のグレードを下げるとか、一品減らすとかするんです。
でも、そこには大きな間違いがあります。夫の小遣いを減らすと、夫の仕事へのモチベーションが低下するかもしれません。いや、確実に低下します。食事は人の生活の中で大切なものなので、それが楽しめない生活も精神的な面への悪影響が大きいのです。
では、本来見直すべきところはどこなのか。答えは毎月一定額かかる費用、つまり固定費を見直す方が効果的なのです。例えば、携帯電話やインターネット回線の契約をより安価なプランに変更したり、都内に住んでいて車に乗る機会が月に1、2回しかないのであれば、車を手放して月ぎめ駐車場の契約もやめたりする。そんなふうに固定費の削減に焦点を当てていくと、生活の質を維持しつつ経済的な余裕を確保することができます。
実はこの家計の節約戦略は、私たちの時間の使い方や英語学習にも適用できる考え方です。
「やるべきこと」と「やりたいこと」の違い
全てのことをトップレベルでこなせる人がまれにいます。例えばメジャーリーグの大谷翔平選手は、打者としても投手としても高いパフォーマンスを発揮しています。しかし、それができるのはほんのひと握り、何億人に一人のレベルです。大谷選手ほどのレベルではないとしても、いろいろなことを高いレベルで同時にこなせる人は、それほど多くありません。
しかし、それぞれの人が持っている1日24時間の中で、何に焦点を当て、どのように時間を使うかを考えることはとても大切なことです。恐らくですが、英語の勉強を心からやりたいと思っている人は、放っておいても毎日やるでしょう。TOEICの勉強をやりたくてやっている人であれば、自然とそのための時間をつくってしまうでしょう。
ところが、そうではない人の方が恐らく圧倒的に多い。例えば、転職活動で高いTOEICスコアを求められるなど、外部からの要求により勉強を強いられるような場合です。勉強は「やるべきこと」で、本来の「やりたいこと」ではありません。そして、当たり前ですが「やりたいこと」の優先順位は上がる一方、「やるべきこと」の順位は下がっていきます。
僕自身の場合、優先順位的に毎日必ずやるのは、せいぜい3つくらいです。例えば運動は毎日、できる限りやりたい。教える立場上、TOEICの問題を解いたり研究したりしたい。そして、犬の世話をして、散歩に連れて行ったり一緒に遊んだりします。「よし、やろう!」と決心するまでもなく、この3つは毎日やるわけです。
このように、自分にとって本当に重要なベスト3に入ること(「私はベスト5までできる!」という方はそれで構いません)には自然と時間を割きますが、それ以外のことは毎日やれないと思うんです。だから、「これは毎日やっています」という優先事項に「英語の勉強」を入れることができなければ、きっと継続することは難しいしし、求める結果を出すこともできない可能性が高くなる。
以前、「断捨離」がはやったことがありました。例えば1年着なかった服は捨てるとか。それと同じで、自分が持っていてもしょうがない、やっていてもあまり意味がない――そんなことを取り除いていきましょう。そうすれば、英語学習の優先順位は引き上げられ、日々のルーティンの中に自然と組み込まれることになるのです。
今日のハマーのコトバ
今回のコトバには深い意味があります。英語で成果を出している人たちは、その優先順位が高い位置にあり、人にやらされているのではなく、自分自身からやっています。自分自身は頑張っているとも思っていなくて、好きでやっているという人が、最終的には優れた結果を出すのです。
つまり、結果を出したいのであれば、「やるべきこと」を「やりたいこと」に変える。そして、他は忘れて、その本当に価値のある活動に集中し、自分自身の「最高」を目指す。こうした選択が極めて重要ということです。
「やるべきこと」を「やりたいこと」に変えるのは、一見、大変なことかもしれません。しかし、例えば自身のベスト3を考えてみたとき、1位は本当にやりたいことかもしれませんが、2位や3位に入っているものは、ひょっとしたら、比較すると他よりはましという程度のことかもしれません。
それは本当に必要なことだろうか? 先にやらなければいけないことだろうか? そんなふうに考えて、今やらなければいけない英語学習などと入れ替えてみる。そんなところからスタートしてみてはいかがでしょう。自身の活動の中で本当に真に重要なものを見極め、それに対して時間とエネルギーを割り当てることで、目標達成の可能性を高めることができるのです。
まとめ
冒頭の家計の話に、「夫の小遣い」が出てきました。小遣いは夫の仕事に対するインセンティブにもなり得えます。それと同じで、例えばTOEICの目標スコアを達成したときに自分に何か特別なご褒美を与えることが、学習意欲を高めるきっかけになるかもしれません。
「やるべきこと」を「やりたいこと」に変え、日々のルーティンに組み込む工夫を、皆さん自身もいろいろ試してみてください。
濵﨑潤之輔さんの本
濵﨑潤之輔さんの新刊!『観光客を助ける英会話』
困っている外国人観光客を手助けしよう!
困っている外国人観光客を手助けするためのシンプル英語を学ぶ本です。街中や観光地で、外国人が困っているらしい姿を見かけたことはないでしょうか。たとえば、道に迷って目的地にたどり着けない、駅構内で乗るべき電車が分からない、飲食店で日本語のメニューしか用意されておらず注文できない、など。そんな場面で、なんとか力になりたい、と思ったことがある方は少なくないはず。本書はそんな方々が対象読者です。
●英語に苦手意識があっても大丈夫
本書は、英語に苦手意識がある方、学生時代に学んで以降、ずっと英語から離れていた方などを想定して、そうした方々が無理なく使えるように、1つの文のワード数はできるだけ少なくしました。シンプル英語だから、英語が初級レベルでも学びやすく、そして忘れにくいです。
●40場面、240フレーズを収録
外国人観光客と比較的多く遭遇するであろう、駅、観光スポット、小売店、飲食店などの代表的な40場面を選び、計240のフレーズと、そのフレーズを使った対話例を収録しています。たとえば以下のようなフレーズです。
「途中まで一緒に行きましょう。」
「観光案内所で無料Wi-Fiを使えます。」
「スマホにQR コードを表示させてください。」
「食物アレルギーはありますか。」
1人ですべてを解決できなくても、一次的な対応をする場合に使える表現や、英語ができる人につないであげる際に使える表現も収録しています。付属音声で練習して、実際に街中で使ってみましょう。
SERIES連載
思わず笑っちゃうような英会話フレーズを、気取らず、ぬるく楽しくお届けする連載。講師は藤代あゆみさん。国際唎酒師として日本酒の魅力を広めたり、日本の漫画の海外への翻訳出版に携わったり。シンガポールでの勤務経験もある国際派の藤代さんと学びましょう!
現役の高校英語教師で、書籍『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』の著者、大竹保幹さんが、「英文法が苦手!」という方を、英語が楽しくてしょうがなくなるパラダイスに案内します。
英語学習を1000時間も続けるのは大変!でも工夫をすれば無理だと思っていたことも楽しみに変わります。そのための秘訣を、「1000時間ヒアリングマラソン」の主任コーチ、松岡昇さんに教えていただきます。