TOEIC対策のカリスマ講師、ハマーこと濵﨑潤之輔さんの連載「明日の風を今日吹かせよう」。今回のテーマは「今日の失敗は明日の教訓である」。日々の失敗をただの挫折としてではなく、成長と進歩へのステップとしてどう捉え、活用していくかについて、ハマーさんが具体的な例を交えて解説します。
失敗から学ぶ日々
多くの人が日々、自分自身で気が付かないうちにさまざまな失敗を繰り返しています。そしてそれは僕も同様です。ですが、失敗をしたら同じ失敗を二度としないために何かを変えていく。失敗は物事を良い方向へと変えていくためのスタート地点なのです。
例えば最近、僕はバックパックを買いました。パソコンも含め、仕事に出かけるときの荷物が多くて重いせいで、大体2、3年使うと、穴が開いたり、ファスナーが壊れたりして買い替えなければならなくなります。今回新しく買ったバックパックは、とある雑誌のビジネスバッグ特集で見かけたものです。高価で素晴らしいつくりのビジネスバッグはいろいろありますが、今回購入したものは非常に安いのに、おすすめランキングナンバーワンだったのです。
僕にとって大事なのは、見かけよりも実用性です。すぐ手が届く所に家の鍵を入れるポケットが付いているとか、そしてそのポケットの内側の手が届きやすい所に財布やスマホ、電車に乗るときのパスケースが入れられるとか。また、バックパックは置いたときに倒れてしまうものが多いのですが、このバックパックは下に置いた状態でも自立してくれるんです。
このバックパックに出合うまでに、僕はバックパックをいくつも買ってきました。同時に3、4つ使っていたときもありました。買ってもどこか気に入らないところがあって、また次のバッグを買って・・・そんなことを繰り返してきたんです。でも、自分の理想のバックパックを追い求めた結果、安価なだけでなく非常に機能的なものにたどり着くことができたのです。
小さな改善を積み重ねることの大切さ
バックパックの体験から僕がみなさんに伝えたかったのは、ちょっとでも改善したいという気持ちがあって、それを追い求め続けていけば、確実に自分の求める結果に近づけるということです。
納得できないことはとことん突き詰める。ただ、それだけに時間を使い過ぎると他のことができなくなってしまうので、毎日、少しずつでいいので「これ、どうにかならないかな」というものに意識を向ける。そうすると、ある日、自身がものすごく満足できる状況にたどり着けるかもしれません。毎日少しずつでも、改善への意識を持つことが重要なんです。
日々の失敗の話に戻ると、カギとなるのは失敗をそのままにするのではなく、その失敗をどうすれば良かったのかを考えること。そしてそれを積み重ねていくことです。これは商品開発に限った話ではなく、個人の成長においても同様なのです。改良できる点を洗い出し、自分でそれを改良・カスタマイズしていく。そうすることにより、より良い自分に成長していくことができるのです。
英語学習においても、自分の弱点を理解し、それを克服しようとする努力が重要です。英語の勉強をしていていれば、誰でも自分の弱点はある程度把握していると思います。TOEICであれば、リスニングはできるけれどPart 5や6の文法問題が苦手だとか。それを一気に解決するのは難しいことかもしれませんが、その一つの弱点を克服するためには、少しずつアップデートをする、自身でスキルアップしていくことが肝要なのです。
今日のハマーのコトバ
今回のコトバは「今日の失敗は明日の教訓である」です。失敗は自分が一段上がる良い機会である、ということです。そのワンステップは、他人から見たらどうでもいいレベルのことかもしれません。でも、自分自身が満足できることが何よりも大切なのです。
僕は昔、どちらかというと授業では非常に厳しく指導を行うタイプの先生でした。ですが、今は授業に集中できない生徒がいたとしても、恐らく本人が意図しないところで何かあるのかもしれないと考えるようにしています。そして、厳しく指導を行っていたときよりも、今の方が、例えば授業が終わったときに、みなさんが「ありがとうございました」と言って帰ってくれるような雰囲気をつくれるようになった気がします。
実は以前、大学で友人の先生に『ケーキの切れない非行少年たち』という本を勧められたことがありました。それは認知機能の弱い人に関する本で、面白くて一気に読んでしまいました。認知機能が弱い学生がいるというわけではありませんが、その本のおかげもあって、より広い心で授業ができるようになったといいますか・・・。TOEICを教えるような仕事をするようになって、読書に時間を割くことがだいぶ減ってしまったのですが、それを機会に以後は毎日「少しずつでいいから何か読もうかな」と、気になる本を手に取るようになりました。本から得るものはやはりたくさんあると再確認したんです。
間違えた問題から学べること
TOEICの話もしておきましょう。今回のコトバに当てはめると、「今日の失敗」は例えば公開テストで「あの問題間違えちゃったな」とか「目標のスコアを達成できなかったな」とか、恐らくそういうことかと思います。
TOEICの公開テストを受けた人の9割9分は、何かしらの失敗をして会場を後にすることになります。試験会場から帰途につく人たちの集団は、なんとなく重たい雰囲気をまとっていることがほとんどですよね。
では、試験で失敗をしたときに何ができるかなのですが、前提として、TOEICではテスト冊子を持ち帰ることができないので、解けなかった問題の検証はできません。そこは諦めていいと思います。試験会場を出てからできなかった問題をメモに残すなどして、後でできる限り調べ直したり復習したりはできますが、記憶力が頼りなので誰もができることではありません。
僕の場合でも、試験の後に誰かと話をして、200問のほぼ全ての内容を思い出すことはできますが、自分の力だけで具体的に記憶して帰れるのは数問~数十問程度です。
だから、今回はPart 5ができなかった、Part 3ができなかったなど、そういうレベルで反省を持ち帰るだけでいいと思います。そして、そのパートを強化するための勉強をする。失敗をそんな形で次に生かしていけばいいと思います。
英語力を磨く以外にできることがある
試験で失敗する原因として考えられるものは、英語の知識不足だけではありません。前の人の貧乏ゆすりが目に入って集中できなかったとか、周囲の環境に起因するものもあると思います。
例えばリスニング対策の場合、自分のリスニング力を鍛える以外にも改善できることがあります。まず、テスト当日に早めに会場に入って、着席して周りの環境に目を配ります。近くに咳をする人や落ち着きのない人がいないかなどを確認します。
大会場で音の反響が大きいとか、テストの音声をかなり前方からラジカセで流すとか、自分の席でリスニングの音声が聞きづらいこともあります。机がガタガタ動くなどの不備があることも考えられます。そのような、受験の妨げになりそうなことを早めに会場入りしてチェックしておくことにより、試験開始前に行う音チェックのときに席替えしてもらうことも可能です。
リスニングの勉強で普段はイヤホンを使っていたのを、本番の環境に近づけるためにスピーカーで聞くようにしてみたり、入浴中でも使える防水タイプのスピーカーを使ったりして音が反響する空間で学習してみるとか、普段の環境を調整して、失敗を次の成功につなげることもできます。
これこそ、人によってはどうでもいいことかもしれませんが、公開テストを受験している最中に、マークを塗る手が痛くなってきてしまい、塗るのがつらくなってしまった、という話をされる方がいました。この方は普段、文字を書く機会がめっきり少なくなっていたので、試験中に手に力が入らなくなっていった経験をされたそうです。そういうことが起きたのであれば、普段の勉強でマークシートを使うようにするとか、マークシート専用のシャープペンシルを使うようにするとか、次に生かせる対策はそれなりに考えることができます。
まとめ
失敗に直面したときは、それを乗り越えるための具体的な行動を取ることが重要です。失敗を成長の糧として受け入れ、次に生かすための一歩一歩を積み重ねていきましょう。毎日少しずつでも自己改善に向けて努力を続けることで、目に見える変化が確実に生まれるはずです。
濵﨑潤之輔さんの本
SERIES連載
思わず笑っちゃうような英会話フレーズを、気取らず、ぬるく楽しくお届けする連載。講師は藤代あゆみさん。国際唎酒師として日本酒の魅力を広めたり、日本の漫画の海外への翻訳出版に携わったり。シンガポールでの勤務経験もある国際派の藤代さんと学びましょう!
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