TOEICスコアアップ200点請負人のJay(ジェイ)こと早川幸治さんが贈る連載「卒・TOEICの英語習得術」。第1回は、「TOEICがハイスコアでも英語が使えない」という言説に迫ります。その真意とは何か、また、TOEICのハイスコア獲得によって得られるものとは何なのでしょうか?
目次
「TOEICは使えない」は本当か?
「TOEICハイスコアを持っていても英語が使えない」という声をよく耳にします。日本語の便利なところであり、曖昧なところでもあるのですが、ここには主語がありません。「ハイスコアを持っている全員」なのか、「ハイスコアを持っている同じ部署の〇〇さん」なのか、それとも「ハイスコアを持っている自分」なのか分かりません。ただ、一つ言えることは、「ハイスコアを持っていて英語が使える人」はこういうコメントはしません。
野球をやっている小学生も素振りはしますが、メジャーリーガーの大谷翔平選手は今でも素振りをしています。その大谷選手が「素振りをしたって野球はうまくならない」と言うことはないでしょう。同様に、ハイスコアを持っていて英語を使って仕事をしている人は、「ハイスコアを持っていても英語は使えない」という言い方はしません。
しかし、英語を使って仕事をしている人は、TOEICの学習だけで英語が使えるようになったわけではないことは間違いありません。よって、「ハイスコアを持っていても英語が使えない」の本来の意味は、「TOEICのスコアを取るための勉強をしているだけでは、英語を使えるようにならない」なのです。
意識が変わるとやる気も変わる
私がかつて英検1級に向けて学習をしようと思っていたとき、「英検1級はネイティブでも分からない単語が出るから意味がない」という声を聞きました。それを信じて「それなら意味ないか」と思いましたが、ある英検1級セミナーに参加したときに講師の方がこう言っていました。
「『英検1級はネイティブでも分からない単語が出るから意味がない』という声を聞いたことありますよね。そういう人たちが言う『ネイティブ』って誰のことなんでしょうね。ちなみに、英検1級に出てくる単語は英語雑誌の『TIME』や『Newsweek』を読んでいる教養あるネイティブならみんな知っている単語ですよ」
この説明だけで、私が英検に対して抱いていた間違った考えから抜け出すことができ、英検1級への学習にも力を入れられるようになりました。
「使えない」は「酸っぱいブドウ」と同じ
イソップ寓話に『酸っぱいブドウ』という話があります。木の上においしそうなブドウがなっているのを見つけたキツネは、食べようとジャンプしますが、いくら頑張っても届きません。とうとう、「あのブドウはどうせ食べたって酸っぱいんだ。誰が食べるか!」と言い残してその場を去っていったという話です。
おそらく、英検1級を勉強しても難しくて挫折してしまった人たちが、「こんなものネイティブだって分かんないよ」と言い出したのでしょう。
TOEICに話を戻します。
TOEICに登場する表現はビジネス場面で実際に使われています。それを理解できるかどうかを測るために、テストという形を取っているのがTOEIC L&Rテストというだけです。
ハイスコアが取れるということは、それらの表現を聞いたり読んだりして理解できるということです。もちろん、この場合は「分かる」というだけで、「使える」を意味しているわけではありません。しかし、「知らない」の先に「知っている」があるように、そして「知っている」の先に「分かる(理解する)」があるように、「分かる」の先には「使える」があります。
TOEICハイスコアによって手に入るもの
TOEICスコアを高めることで得られるものは何でしょうか。すでに述べたように、800点、900点を取ったからといって、英語運用力を手にしたわけではありません。
『TOEIC(R) L&Rテスト 直前の技術』などで知られるロバート・ヒルキ先生は、「TOEIC is a driver’s license.」とおっしゃっています。運転免許証を手にしたことで得たものは、運転技術ではありませんよね。「運転できる資格」を手にしただけです。
運転にしても英語にしても、技術を高めるためには、日常的にその技術を使っていくことが大切です。運転をせずに運転が上達することはないように、英語を使わずに英語が上達することはありません。
スコアを高めることで手に入るものは、英語運用力の素地の証明です。そして、企業内であれば、異動や海外赴任などで英語を使う環境を手にする方も多いでしょう。そこからの取り組みによって、TOEICスコアで証明したものを実践スキルへと変えていくのです。
何のため、誰のために勉強するのか?
最初は英語力を高めるために勉強をしていたはずなのに、次第に問題を解く力を伸ばそうとするようになる方も多くいます。もちろん、欲しいものは人それぞれですから、「スコアだけでいい」という方に対して、「それは違う」などと言うつもりはありません。テストのための勉強も大事ですし、私はそういった学習者のサポートもたくさんしています。
でも、この記事をお読みになっているということは、あなたは正解して満足しているレベルではないはずです。最初はTOEICスコアを目指して勉強していたかもしれません。でも、もうあなたの中での基準が変わっているのです。
TOEICの正式名称は、The Test of English for International Communicationです。でも、あなたが本当に欲しいのは、Testの結果ではなく、English for International Communicationではないですか?
英語学習の大先輩である福澤諭吉が明治初期に書いた『学問のすゝめ』には、学問のための学問ではなく、実学を身に付けるようにとあります。つまり、学んだことを役立てるために学べということです。問題を解いて満足するのは自分だけですが、学んだことを役立てることができれば、自分はもちろん、周囲の人にも社会にも影響の範囲が広がっていきます。
英語環境づくり:「解く」から「使う」へ
プールに入らずに水泳が上達することはないように、英語の環境に身を置かずに英語運用力が上達することはありません。そこで、実践スキルに高めるために英語環境をつくることをおすすめします。
「まあ、そうだけど・・・。そもそも英語を使う環境にないから使えない」という方もいらっしゃると思います。英語を使うといっても、アウトプットだけではなく、インプットも「使う」に入ります。
例えば、私たちはインターネットで調べるとき、情報を検索して出てきたものを読みます。そして、その情報を基に次の行動へと生かします。ということは、その情報を「使った」ことになります。そこで、目に入る情報や耳に入る情報を英語にしてしまうことで、英語の情報を「使って」次の行動につなげることができるのです。
英語環境がそろってくると、「こういう英語をもっと身に付けたい」とか、「もっと速く読めるようになりたい」とか、「こういうことができるようになりたい」という意欲が出てきます。それが「目指すべき基準」となります。その基準が高まれば、身に付き方も変わってくるのです。
ゼロから生み出すな!イチを使え!
最後に、実際に使うときのコツを紹介します。そのコツとは、最初から自分で生み出そうとしないことです。
ゼロから生み出そうとすると、「文法的には正しいけれど、不自然な表現」になってしまうことが少なくありません。感謝を伝えたいときはThank you very much.を使いますし、やや硬い表現で謝罪したいときにはI apologize for any inconvenience this may have caused you.などを使います。これらは慣用表現のため、何も応用する必要がありません。だから楽に使えるのです。
他の表現についても同様です。ビジネスとは異なりますが、私たちが「揚げた(揚げられた)鶏肉」のことをfrying chickenではなくfried chickenと言えるのも、「凍った(凍らされた)ヨーグルト」をfreezing yogurtではなくfrozen yogurtと言えるのも、正しいものを何度も耳にし、正しいものを何度も声に出したからです。何度も目にして口にして、五感を通して身に付けたからこそ忘れませんし、間違えることもありません。
「テストの英語」が「生きた英語」になる
TOEICで学ぶ英語は、ビジネスや日常の場面で使われている表現ばかりです。
例えば、私がTOEICの学習を通して覚えたproceed to~(~に進む)という表現があります。この表現を実際に聞いたのは、韓国・ソウル行きの飛行機の中でした。客室乗務員さんに座席の場所を英語で聞いたときに、Just proceed to the aisle.という答えが返ってきたのです。私にとってはテストの英語でしかなかったものが、生きた英語になった瞬間でした。
英語に触れれば触れるほど、まさにオセロの黒が白に反転していくかのように、あなたがこれまで培ってきたTOEICの英語が生きた英語へと変わっていきます。
次回以降も、TOEICで培ってきた「聞いたら分かる」「読んだら分かる」を「使える」というスキルに変えるための実践方法を紹介していきます。
早川幸治さんの本
早川幸治さんの新刊、GOTCHA!新書『TOEIC(R) L&Rテスト スコアアップの奥義』。読めば、TOEICとの付き合い方が(よい方向に)変わります!
著者プロフィール
編集:GOTCHA!編集部/写真:山本高裕(GOTCHA!編集部)
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