TOEICスコアアップ200点請負人のJay(ジェイ)こと早川幸治さんが贈る連載「卒・TOEICの英語習得術」。第6回は、TOEICスコア獲得とその先の英語運用力獲得のための「目的の明確化」と「目標設定」についてです。
なぜTOEICの学習をしているのか?
先日、セミナーにご参加いただいた方たちに、「あなたは何のためにTOEICの学習をしていますか?」という質問をしました。
「転職のため」「会社から求められているため」などが最も多い回答でした。そして、非常に興味深かったのが、「英語力を高めるため」とか「英語を使えるようになるため」という回答が一つもなかったことです。
このことから分かるのは、 TOEICの学習は、英語力を高めてスコアを取ることが目的ではなく、その先の目的へと近づくための「目標」だ ということです。考えてみれば、「目標スコア」とは言いますが、「目的スコア」とは言いませんね。
「目的」と「目標」の役割
目的とは、「目印となる的(まと)」と書くように、弓道やダーツの的のイメージです。つまり、 英語学習の 先に ある「〇〇するため」という理由が目的 です。
そして、 目標とは、 「目印となる標(しるべ)」と書くように、 その過程にある通過点 を指します。弓道で言えば、28メートル 先に ある的のど真ん中に矢を当てるには、放った矢が10メートル、そして20メートルの地点を通過するときに、空中のどの高さをどんなスピードで通過する必要がある、というポイントがあります。これらの10メートル地点、20メートル地点が目標です。
TOEIC 800点という目標スコアは同じでも、学習の目的は人それぞれ異なる場合もあるでしょう。英語力を高めたり、英語を使えるようになったりすることが目的でなくても問題ありません。また、TOEICを学べば、 すぐに 英語が使えるようになるわけではありません。
ただ、もしTOEICでスコアを達成して、転職したり、昇進したりしたあとに「英語を使えるようになりたい」とか「英語を使って仕事をしたい」という 希望 があるのであれば、 転職や昇進の 先に 「英語を使って〇〇をする」という目的を追加する ことをおすすめします。
今まで最終目的だった「転職」や「昇進」の 先に 新たな目的「英語を使って仕事をする」などを設定することで、「転職」や「昇進」は、英語を使って仕事をする環境へ入るための通過点、「目標」へと変わります。
これまで、転職を目的として、TOEICの目標スコアを取るための学習をしてきたとします。目的は転職ですから、転職のために求められているTOEICスコアを取るための学習をします。そうすると、最短距離でスコアを達成することを追求します。
プロセスを書き出すと次のようになります。
(1) TOEIC学習→TOEICスコア 取得 →転職
目的である転職をするための一つの目標がTOEICスコアです。そのTOEICスコアを取るためにTOEIC学習を行います。また、当然、期日が存在するため、そこから逆算して行動へと落とし込んでいきます。
一方で、仕事で英語を使うことを目的とする場合のプロセスは次のようになります。
(2) TOEIC学習→TOEICスコア 取得 →転職→英語を使う
英語を使う環境を手にするための通過点(=目標)となるのが転職です。まずは目的への過程である転職をするために、求められているスコアを取ることがその下部の目標となります。そして、そのために学習をするわけです。もちろん、こちらも最短距離でスコアアップを目指します。
前回 は、英語は「必要以上に上達しない」という内容をお伝えしました。
まさに、既述の(1)では「転職」が「必要」、(2)では「英語を使う」が「必要」に相当します。同じ学習をしていても、時がたつうちに学習の深さが異なってくるわけです。
目的が何だったとしても、最上部の目的は、その下に目標を取ります。しかし、 目標はその下の目標にとっては目的 となります。つまり、既述の(1)の流れで説明すると、最下部の「TOEIC学習」は、さらに下の「時間を確保する」という目標にとっての目的となりますし、その「TOEIC学習」は上部の「TOEICスコア 取得 」という目的に対しては目標になります。 同様に 、その「TOEICスコア 取得 」は最上部の「転職」という目的に対しては目標になるわけです。つまり、次のようになります。
「このために英語をやるんだ」という 目的は、その下にある目標の質に 影響 します。▼前回の記事はこちら
gotcha.alc.co.jp私たちは「求めているもの」を手にする
話は変わりますが、本を読んだのに内容が頭に入っていないとか、ノートをきれいに取ったのに内容が頭に入っていない人っていますよね。
はい、私です(笑)。
読書の目的が単に「本を読む」になっている人と、「本の内容を実践する」が目的の人では、記憶の残り方が違うというのは想像に難くありません。 同様に 、「ノートをきれいにまとめる」が目的の場合と、「あとで復習しやすくする」が目的の場合では、前者はノートをきれいにまとめた時点で目的は達成されますが、後者の場合は復習することが目的です。
求めているものによって結果が変わってくる ものは他にもあります。
例えば、Googleに検索ワードを入れると、その検索結果を手にすることができます。検索ワードが曖昧であれば曖昧な結果が手に入り、検索ワードが具体的であればあるほど、 具体的な 結果が手に入ります。英語学習の目的についても同様ですし、何を求めているかでも得るものが変わります。
英語学習で言えば、次のような状況があります。
- 「学習法」を求めれば、「学習」がうまくなる。
- 「テクニック」を求めれば、「解答」がうまくなる。
- 「英語表現」を求めれば、「英語」がうまくなる。
- 「会話術」を求めれば、「コミュニケーション」がうまくなる。
TOEICスコアを取るために最低限必要なことは、「学習法」と「解答技術(テクニック)」でしょう。しかし、「卒・TOEIC」に必要なのは、その先です。 TOEICの学習を通して学んだ表現を使いながら英語運用力を高めて、さらに会話術を身に付けることで、英語コミュニケーションが上達 します。
目的をアップデートせよ!
読書においても、マーケティングにおいても、起業においても、そして英語学習においても、多くの分野で共通しているのが、「目的を 明確にする 」ことです。「〇〇をするために、△△を行う」が決まれば、「そのために□□が必要」と落とし込むことができます。
ところで、学生時代を振り返ってみてください。中間テストや期末テスト、また大学入試までは一生懸命勉強したのに、それが終わると全く勉強しなくなってしまった、なんてことはありませんか。
もしくは、TOEICを受けるまでは必死に勉強するのに、テストが終わった途端に勉強しなくなってしまう。まだ目標スコアが出ていないのに・・・。
私はいつもそうでした。
その理由は、学習の目的が「テストを受験する」だけになってしまっていたからです。つまり、テストが終わったことで目的が達成されてしまったために、その後の行動へとつながらなかったのです。カーナビが目的地に着いたときに「音声案内を終了します」と、その役目を終えるように、私たちの脳も行動を終了してしまうのです。
そうならないためには、 目的をアップデートすることが必要 です。
例えば、現在している英語学習の目的が「海外研修までに自社の説明をスムーズにできるようにする」だった場合は、仮に説明をスムーズにできなかったとしても、その日が来たら目的としての役割を終えてしまいます。そこで、その海外研修でできたことやできなかったことを振り返った上で、新たな目的を決めることで、その先の目標を設定しやすくなります。
ぜひ目的をアップデートしてみてください。
モデリングのすゝめ
最後に、「そうは言っても、目的の下部に置く目標をどうすればいいか分からない」という場合もあるかもしれません。
その場合には、書籍やYouTubeなどで、 自分がやりたいことと同じか近いことを実践し成し遂げている人をモデルにしてしまう ことをおすすめします。すでに何かを実現させている人が、それまでに何をしたかというプロセスには大きなヒントが詰まっているはずです。ぜひそのプロセスを参考にしてみてください。
目的と目標を書き出そう!
最後までお読みいただき、ありがとうございます。結果につながりやすくするために、ぜひ目的と目標を書き出してみてください。TOEICで目標スコアを取った時点で上達が止まってしまったという方や、TOEICの学習をしていたころほどのやる気が出ないという方は、間違いなく目的のアップデートが必要な時期です。
読者の皆さまの、「卒・TOEIC」におけるさらなる飛躍を願っています。
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早川幸治(はやかわ こうじ)
ニックネームはJay。株式会社ラーニングコネクションズ代表取締役。企業研修講師として、英語を公用語化した企業はじめ、これまで全国の160社以上で研修を担当してきたほか、大学や高校でも教えている。セブ島留学プログラムも監修。TOEIC990点(満点)、英検1級 取得 。豊富な受験経験から 傾向 をおさえた効率的な対策法が好評。著書多数。アルクの通信講座「 TOEIC(R) LISTENING AND READING TEST 完全攻略600点コース 」監修。
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