アルクの大ベストセラー『Mr. Evineの中学英文法を修了するドリル』でおなじみ、カリスマ英語講師Mr.Evineが、英語が苦手な大人のために、中学英語を楽しくやり直せる学習法をご紹介します。第3回は「時制」を取り上げます。
目次
時制の誤用例と学習法
Hi, there! Evineです。
今回も僕の「やりなおし英語JUKU」に通う社会人の生徒(30~50代)たちによる英文法の誤用傾向に基づき、英語初級者(中学英語の一般的な基礎内容は理解しているレベル)が勘違いしがちな「時制の使い方」を、みなさんにクイズ形式でご紹介しましょう。
全6問のクイズに挑戦!
クイズは全部で6問。生徒の正答率は・・・クイズの後で発表します。早速、トライしてみましょう!
適切なものを[ ]の中から1つ選び、自然な英文を完成させましょう。
- 「今日あなたも一緒に来るの?」「いや、病院に行くよ」
Are you coming with us today? - No, [I’ll / I’m going to] see my doctor.
- 「田中先生は私たちと一緒に来る予定でしたが、間に合いませんでした」
Mr. Tanaka [was going to / wouldn’t] come with us, but he couldn’t make it.
- 「今日はまだ有希と会ってないんだよね」
I [didn’t see / haven’t seen / have never seen] Yuki today.
- 「たいてい車通勤だけど、今月は地下鉄なの。実際その方が速いからねぇ」
I usually drive to work but [I take / I took / I'm taking] the subway this month. It’s actually faster.
5.「今朝から自分の持っていた古い小説の1冊を読んでいるんだよ」
[I’m reading / I’ve read / I’ve been reading] one of my old novels since this morning.
- 「また吐きそうだよ」「あぁ、それじゃあ部屋に戻ろうか」
I think [I’ll / I’m going to] throw up again. ? Oh, let’s get you back to your room then.
さて、いかがでしたか?
今回は正答率約20%のクイズでした。
答え合わせで文法ポイントをチェック!
早速答え合わせをしていきますが、正解していても解説にあるポイントに一致していない場合は△ですよ。
- Are you coming with us today? - No, [I’m going to] see my doctor.
【未来の表現 正答率 20%】
1文目は現在進行形で相手の予定を尋ねたものです。現在進行形は手配や準備が完了した個人的な予定(~することになっている)を表現します。今回は、相手に予定を尋ねられて、どのようなカタチで返答するのかがポイントでした。
「I’ll+動詞の原形」(~します)は「自分の意志で、その場で決めた」という表現になるため、せっかく予定を尋ねてくれているのに、無理に用事を作って拒否している響きになります。
そこで、「前から決めていた予定」を示す「be going to+動詞の原形」(~する予定です)で返答すれば違和感のない自然な返答になります。もともと予定が入っていたために一緒に行けないというニュアンスですね。
- Mr. Tanaka [was going to] come with us, but he couldn’t make it.
【過去における未来の表現 6%】
問題1の解説にあるように、be going toは「前から決めていた予定」(~する予定です)を表現するカタチです。実はこれを過去形「was/were going to+動詞の原形」(~する予定だった)にすれば「予定していたけど実際にはできなかった」ことを相手に遠回しに伝えることができます。
一方、wouldn’tはwon’t[will not](~しないだろう)の過去形で、過去から見た先の事柄を示すだけで文意のニュアンスはなく誤りです。
※ make it(参加できる、都合がつく)
- I [haven’t seen] Yuki today.
【現在完了の否定 14%】
「まだ…していない」という「未完了」を相手に伝える場合は、現在完了の否定形「haven’t[have not]+過去分詞」で表現できます。このカタチは、まだ完了していないだけで、もうすぐ実現する可能性も示唆し、文意よりこれが自然です。
過去形I didn’t see(会いませんでした)は「1日が終わった(=過去の話)」という響きがあり、文意に合わず誤りです。また現在完了に用いる副詞never(今までに一度も~ない)を用いたhave never seen(~と会ったことはありません)は「未経験」という響きを示すだけで、文意に合わず不適切です。
- I usually drive to work but [I’m taking] the subway this month. It’s actually faster.
【現在進行形 64%】
現在進行形には、動作に「一時的・期間限定」状態の意味を加える働きがあります。 文意より、現在進行形I’m takingが正解です。
では状況を考えてみましょう。 前半は副詞usually(たいてい、いつも)とあるように「車通勤」が「日常習慣」であることを現在形で表現したものです。後半は「地下鉄」の話になっていますが、これは普段の話ではありません。this month(今月)という「期間限定」の話と考えるのが自然で、現在進行形I’m takingが正解です。
文脈を考えれば、地下鉄通勤は過去の話ではないため過去形I tookは誤りです。 この問題は正答率が比較的高めでしたが、現在進行形のポイントをしっかり押さえている方はほとんどいませんでした。現在進行形の未来表現とは別に覚えておきましょう。
- [I’ve been reading] one of my old novels since this morning.
【現在完了進行形 6%】
今朝から現在も小説を読んでいる状況ですから、「ある過去から現在もなお継続していること」を伝える現在完了進行形I’ve been readingが正解です。
現在完了I’ve readは「継続」ではなく完了「読んだ(読んでしまった)」の響きになり文意より誤りです。実は現在完了「have+過去分詞」の基本用法は「完了」と「経験」です。
since(~以来)やfor(~間)とセットにした現在完了の継続用法はありますが、それはあくまでも「継続性」の高い動詞に対してのみです。
例えば、be動詞(?だ、?にいる)、know(知っている)、have(持っている)などは状態動詞とも呼ばれ、わざわざingのカタチにしなくても最初から状態の継続ニュアンスがあります。ですから、これらの動詞は普通の現在完了にsinceやforを加えて「継続用法」が作れます。(例)I’ve been in Japan since last year.(去年から日本にいます)
一方、今回の英文で使用するread(読む)は継続性の高い動詞とは言えないため、現在完了I’ve readを継続用法として用いるのは不自然です。
また現在進行形I’m readingですが、焦点は完全に「現在」にあるため、sinceとは相性が悪くNG。sinceは現在から過去を振り返って継続期間を表現するため、現在よりも「過去」に焦点があるためです。
- I think [I’m going to] throw up again. – Oh, let’s get you back to your room then.
【be going toを用いた表現 4%】
場面を考えましょう。単なる未来の予定・計画ではなさそうですね。 実は、be going toは個人的な予定以外にも、目の前の状況証拠や身体で自分自身が感じている感覚に基づいて、「これから先の予測」を相手に伝えることができます。文意よりこれが自然です。
going toはもともとgo toを現在進行形にしたものですから、状況に動きがありその変化を感じ取って予測するというニュアンスです。
話し手の意志を示すI’llは「(では)~します」と会話の最中に、その場で決める行動を示すのが基本です。「さあ、吐いてやるぜ」といった意思表示の場面ではないため、文意を考えるとこれはNG。
Mr. Evineの「やりなおし」学習ポイント!
英語では「いつの話なのか」を意識する
時制は学習者に嫌われる単元ですが、そもそも時制をよく間違えるには原因があります。まず日本語との違いで落とし穴にはまります。
例えば、「仕事から家に帰ると、留守電が入っていた」は過去の話であるにもかかわらず「帰る」は現在ですよね。英語ではそうはいきません。
When I got home from work, there was a message on the answering machine.
got homeにthere wasと過去形でしっかり統一ですね。
このように、英語は時制に厳しく、日本語は表面的には時制がとてもいい加減です。
過去形とすべきところを現在形で表現してしまう方が多いのですが、「いつの話なのか」日本語では無意識に話していることでも、英語では慣れるまで意識すれば、少なくともこのミスはなくなります。
英語では「会話の目的」を意識する
次に英語の時制の捉え方、その意識を変えることが大切です。結論から言えば、「時制」=「時」と考えるのは△です。
英語の時制は「時」+「感覚(気持ち)」です。
表面(=日本語)で「時」を捉え、そのまま英訳すると日常会話ではたいてい失敗します。「感覚」は会話の場面をしっかりイメージしなければ掴めるようにはなりません。
英文法は会話の取説ですが理屈だけを押さえるのではなく、この文法を用いてどんなことを伝えたいのか、「会話の目的」を意識することが大切です。
例えば、現在進行形も「~しているところです」という「今、進行中の動作」とだけ押さえていると問題4のような場面で、進行形の発想はとっさにできません。
いつ、どんな場面で、どんな気持ちを相手に発信するのか、慣れるまで最初はストレスですが、日常会話に紐づけた文法学習は必ず実践で役立つ知識、そして使えるスキルになっていくはずです。
それでは今日はここまでにしましょう。次回もよろしくお願いします。
See you next time!
トップ写真:Laura Rivera from Unsplash
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