大学で英検やTOEIC対策などを教える、Joyこと和泉有香さんの連載「英検1級取得を目指す人のための言い換え塾」。最終回となる今回は、言い換えの総仕上げとして「ディスコースマーカー」を使った長文の書き換えにチャレンジします。
「ディスコースマーカー」を多めに使って道案内を
みなさん、こんにちは。Joyこと和泉有香です。「言い換え力」をじわじわと上げていくシリーズの最終回をお届けいたします。「どやっ!」とばかりに読ませる / 聞かせる英語を目指してきましたが、いよいよ総仕上げにかかります。(今回「はじめまして」の皆さまは、Vol. 1?5もぜひ読んで「どやっ!」への道を一緒に歩きましょう。)
ここで満を持して紹介しておきましょう。それは「ディスコースマーカー」です。日本語でも文章の中に「その次に」とか「例えば」とかを入れることで「次の話題に変わるよ」「実例を出すよ」と予告しますね。つなぎ言葉というか、道案内というか、「あれば読む(聞く)人が楽」というアレです。英語の文章の中には、日本語以上にディスコースマーカーを意識的に入れて書いたり話したりする方がいい、というのはよく言われるところです。
ここでは説明に割ける字数がないので「discourse markers list」で画像(「すべて」ではなく「画像」で)検索してみてください。小学生用(!)から大人用まで、さまざまな表が出てきます。「これもディスコースマーカーなのか?」と、目からウロコなものもあったりします。そういう語(句)に出合ったら、例えば(←あ、ディスコースマーカーや!)「2日以内に絶対に使う」と決めて実行に移すように心掛けると、表現の幅が広がること間違いなしです。また(←お、ディスコースマーカー再び)「私、彼ら(?)についてあまりよく知らないかも」と感じた方は、ぜひ「ディスコースマーカー」を日本語で検索して説明を読んでおいてくださいね。
さあ、書き換えてみよう
簡単なトピックについて生徒に書いてもらった文章を下に掲げます。(文法ミスは訂正済みです。)さて、あなたならどう書き換えますか?実際にやってみましょう。以前にご紹介したThesaurusや英辞郎を使ってOK。合言葉はもちろん「どやっ!」です。では、スタート!
Q: Should all schools in Japan be tuition-free?
(質問:日本の全学校は無償化されるべきか)A: Primary and junior-high schools are tuition-free in Japan now. But I think all schools should be tuition-free. I have two reasons for thinking this.
First, Japan doesn’t have enough natural resources, so competent people with a good education are the most important resources for Japan.
Second, because the economic situation in Japan has been no good for the past 20 or 30 years, it is difficult for parents to pay tuition fees. And young people are having difficulties repaying their student loans.
For the reasons above, I think all schools in Japan should be tuition-free.
答え:現在、日本では小学校と中学校の教育は無償です。しかし私は、日本のすべての学校が無料であるべきだと考えます。こう考えるのには二つの理由があります。
まず、日本は十分な天然資源を持たないので、高いレベルの教育を受けた有能な人々が、日本にとって最重要の資源であると思います。
二つ目に、この2、30年ほど日本の経済は良くなかったので、親にとって学費を支払うことが難しくなっています。そして若い人々は奨学金を返済することに困難を感じています。
上記のような理由により、私は日本の全学校が無料であるべきだと考えます。
英検準1級なら何とか合格点が付くレベルの英作文ですね。さて、ではVol. 1から5で身に付けたことを踏まえ、意味を保ったままで「どやっ!」を目指して書き換えてみましょう。
① Currently, primary and secondary education is tuition-free in Japan. ② However, I consider all levels should be free. ③ I will discuss two points regarding this.
④ First, Japan lacks natural resources, and thus, I reckon that highly educated and competent people are a crucial national asset.
⑤ Also, because of the stagnant economy for the past few decades, quite a few parents find it burdensome to defray academic fees. ⑥ Furthermore, a large number of youths are experiencing hardships in repaying their student loans.
⑦ For the reasons mentioned above, I strongly believe all educational institutions in Japan should provide free tuition.
主な変更点は以下のとおりです。
① nowは語彙レベルを上げてcurrentlyとして文頭に置き「どやっ!」度高めに全体を始めました。「小中学校」はprimary and secondary education(初等中等教育)と言い換えました。
② Vol. 5で述べたとおり、文頭のbutは避けてhoweverに変更しました。後ろに「,(コンマ)」を忘れずに。thinkは語彙レベルを上げてconsiderに。schoolsが二文連続で登場したので、②では使わずに済むように書き換えました。
③ discussは話し合う相手がいなくても「?を説明する」の意味で使うことができます。regardingはaboutの「どやっ!」版ですね。
④ doesn’t have enoughを動詞lack(?に欠ける)1語に。Vol. 1で説明したように言い切りを避けるため、Vol. 2で登場したreckonを使いました。Vol. 2で述べたとおり、importantはcrucialに。resourcesは重複するので2回目の登場時にasset(価値のあるもの)と言い換え、Japanも1回で済むように工夫しました。
⑤ Vol. 4で出てきたように、economicは使い方を変えてthe stagnant economyとスッキリさせました。decadeは1語で「10年」を表せる便利な語なので、使えるようにしておきたいところ。manyはVol. 2と3で説明したようにquite a fewに言い換え。pay tuition feesの部分の語彙レベルを上げました。
⑥ 文頭のandはVol. 5で述べたように避けてfurthermoreに変更。have difficultiesをexperience hardshipsへと語彙レベルをアップしました。
⑦ 文頭の語彙レベルを少し上げました。schoolsをacademic institutionsへと言い換え。文末部分も言い換えました。
いかがでしょうか。内容は変わらないものの全体の印象は変わったかと思います。これが「正解」でも「最適」でもありませんが、ご参考にしていただければ幸いです。
まとめ
さて6回に渡ってお届けしてきたシリーズもこれにて終わりとなります。あなたの「言い換え力」は無事にアップしたでしょうか。「Vol. ○で学習した」とハッキリと自覚できるものもありますが、気づかないうちに使っている知識も多いはずです。Thesaurusと英辞郎を相棒に、ぜひこのまま努力を続けて行ってください。またどこかで皆さまにお目にかかれる機会を楽しみにしています!最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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