大学で英検やTOEIC対策などを教える、Joyこと和泉有香さん。連載「英検1級取得を目指す人のための言い換え塾」では、「いつも同じ英語ばかり使ってしまう」とお悩みの方へ向けて、表現を豊かにするヒントをご紹介します。
なぜ「いろいろな表現を使うこと」が重要なのか
みなさん、こんにちは。Joyこと和泉有香です。神戸にある2つの大学で英語を教えている、大阪のオバチャンです。これから6回にわたって、英語の「言い換え」について柔らかくお話ししていきます。
この連載は「英検1級取得を目指す人のための」と銘打ってありますが、実際のところ、言い換えの技術は英検準1級の時点から大切になってきます。「私にはまだ早いかも・・・」と遠慮せず、どうぞ軽い気持ちで読んでいってくださいね。
さて。
今、メジャーリーガー・大谷翔平選手の活躍を報じている英語の記事をネットで検索しました。この中から、氏名は除いて、「大谷選手」を表す主語を拾ってみましょう。
he(←まあこれはごく普通ですね)
Sho-stopper
the two-way star
the Angels’ designated hitter
・・・でした。一方日本語記事では、見事に氏名表記のみ。
そういえば、中1の英語の教科書からして、
This is Lucy.
She is from America.
のように、「1度目:Lucy→2度目:she」という言い換え(書き換え)が行われていましたね。
そもそも「なんで英語ってそんなに必死になって言い換えるの?2回目もLucyでエエやん。」と中学生の私(注:私は昔からオバチャンではありません)は不思議に思っていましたが、あれから300年経って(注:経っていません)考えるに、英語は同じ言葉の繰り返しを異常に(!)嫌う言語であり、「いかに別の表現で言い換える(書き換える)か」が話し手、あるいは書き手の語彙力の見せ所なのですね。
ちょっと待てよ・・・。「語彙力の見せ所」ということは、言い換えをきっちり行わなければ、「この人はボキャ貧だ(え、もう死語ですか?)」というレッテルをあっさり貼られてしまうということですね?
おっと、英検1級を目指す身としては、そんなことをされては一大事。この機会に、「言い換え」だけではなく「同じ意味を表す表現」を、単語レベルから文レベルに至るまで使えるように準備して、「どやっ!」と採点者に見せつけましょう。
さて、ここで1つ確認しておきましょう。書き言葉と話し言葉では、語彙レベルが違います。ただし英検1級のスピーキングは「友だち同士のたわいない話」ではなく、前述の「どやっ!」な要素が必要なので、このシリーズでは語彙レベルで「これは書き言葉」「これは話し言葉」と区別することを基本的にせず、書き言葉に寄せることにします。ただし書き言葉に短縮形は一切使いませんので、スピーキングに使う場合は、必要であれば短縮形を使用してくださいね。
本格的な言い換え練習を始める前に、まずは準備体操的に、このシリーズを通して使う方法を身に付けておきましょう。
英検のための「言い換え」トレーニング準備体操!
1. notを使わずに言い換える
言い換えの第一歩は、まずnotを使わないことです。
I do not agree with your opinion.とするのがダメなわけではありませんが、I disagree with you.を使う方がスマートです。notに重点を置きたい場合以外は、「notナシの方」を使うことを常に心がけましょう。
まず頭に浮かぶのは、un-やdis-、in-といった接頭辞を付けて反意語を作るお手軽タイプですね。いくつか例を挙げておきましょう。
not relevant → irrelevant(無関係の)
not conclusive → inconclusive(決定的でない)
not rational → irrational(非合理的な)
not ethical → unethical(非倫理的な)
not satisfy → dissatisfy(?に不満を抱かせる)
このタイプ以外のものも山ほどありますので、これは次回以降にじわじわと見ていくことにしましょう。
2. 言い切らない
「え、英検ってお堅い試験なのに、はっきりしない話をしてもいいの?」
ええ、もちろん!
Young people in Japan are hesitant to purchase an automobile.
日本の若者は自動車を購入することをためらう。
なんて声高らかに言い切ろう日にゃアナタ、採点委員&面接委員の皆さまから、「ほほぉ、日本の全若者がもれなくそうだと申すのだな?」と無言のツッコミが入り、あなたの点数は知らないうちにゴッソリ引かれます。(こ、こ、怖い・・・!)
つまり「言い切ること」は非常にキケンなので、ちょっとタヌキになって程度をぼやかすのも、あなたの身を、いえ、点数を守るオトナな方法なのです。上の英文を例にとって、まずは言い切らない練習をしておきましょう。
そのためにはいくつかの方法があります。
「全員ではない」とする
これはお手軽かつ効果的な言い切り回避法です。あなたの頭の中に候補がいくつか浮かびますか?
Many?young people in Japan …
Generally, young people in Japan …
Overall, young people in Japan …
もちろんa lot of (lots of) young people in JapanとしてもOKですね。generallyやin general(一般的に)、あるいはoverallやas a whole(全般的に)を文頭に置くという手もあります。
推量の助動詞を使う
時と場合によっては、推量を表す助動詞を使うことも言い切りを避けるための有効な方法となります。助動詞を「確信度の強い順」に並べておきます。
must
will
would
ought to
should
can
may
might
could
この「順」は、参考書によって若干違っていることもありますが、まぁだいたいのところを頭に入れておいて損はありません。助動詞は「言葉のスパイス」なので、言葉に風味と微妙なニュアンスを加えることができる大きな武器となります。
これから多用することになると思われるので、書き換えとは直接に関係ありませんが、重要な脇役としてご紹介しておきました。
3. 形容詞や動詞をいじる
先ほどの例文ではbe hesitant toを使っていますが、
Young people in Japan are hesitant to purchase an automobile.
日本の若者は自動車を購入することをためらう。
be apt toやbe prone toあたりに言い換えるのもOKです。
また、be動詞ではちょっと弱いかも!?と思われる場合は、
Young people in Japan tend to hesitate to purchase an automobile.
日本の若者は自動車を購入することをためらう傾向がある。
のようにtend toを使い、形容詞のhesitantを動詞であるhesitateに変えるのもいいですね。もうちょっと堅く、have a tendency toを使うのも良い感じです。
さて、連載第1回はここまで。次回からはじんわりやんわりと言い換えの本格的な練習に入っていきますので、どうぞお楽しみに!
次回は2022年7月7日(木)頃公開予定!
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