駿台予備学校英語科の大人気講師、神坂明生海(かみさかあきおみ)さんが、脳内に映像のようなイメージを作りながら読む独自のメソッドを使って、英文がどんどん頭に入ってくる読み方を教えます。連載「神坂流!英文読解術」2回目は「記憶に残す強弱を付けた読み方」についてです。
「強弱を付けた読み方」で記憶に残す頭の働かせ方
皆さん、こんにちは。駿台予備学校英語科講師の神坂明生海です。今回もお読みくださり、ありがとうございます。
前回 は、 ①「わかる」とは『型』にはまること、②『型』の基本は抽象→具体、③読む時は強弱を付ける 、ということをお伝えしました。
今回は、 前回 の記事とその続きを使いながら、 具体的な 「強弱を付ける」ための頭の働かせ方やそのキーワードをご紹介します。英文全体の構造がくっきり見えてきますよ!
主張 )部分と具体部分をキーワードで読み分けよう">抽象( 主張 )部分と具体部分をキーワードで読み分けよう
それでは、まず、前回の¶5までとそれ以降の¶8までを、ゆっくりで構いませんのでご自分のペースで、 大事だとお考えの箇所は retention (記憶保持)しながら読んで みてください。
抽象( 主張 )部分はゆっくり丁寧に力を入れて読み、具体部分は軽めにサラッと力を抜くように 強弱を付けながら 読んでみましょう。
¶1 Researchers in Japan have provided more evidence supporting the theory that all life on Earth could have sprung from bacteria that landed on the planet from outer space.いかがでしたか?読み方に「強弱」は付けられましたか?もしできたと思われる方は、この記事の要約を考えてみてください。¶2 The evidence comes from an experiment that was conducted on the International Space Station (ISS), the results of which were published Wednesday in the science journal ”Frontiers in Biology ”.
¶3 The researchers placed bacteria samples in exposure panels outside the ISS and left them there for three years. They said that when the samples were examined, the bacteria at the surface had died off but formed a protective layer for the bacteria beneath the surface, ensuring the survival of the rest .
¶4 The researchers said that based on the data they had collected, a bacterial colony measuring approximately 1 millimeter in diameter could have survived for up to eight years in outer space.
¶5 If so , then a bacterial colony could theoretically survive the journey from Earth to Mars, or vice versa , which would take several months or years, depending on the *trajectory.
¶6 The study provides important evidence for a theory known as panspermia, which suggests that life didn’t originate on Earth but instead began elsewhere in the cosmos and was transported to the planet through interstellar objects such as asteroids that smashed into Earth billions of years ago.
¶7 The researchers said their experiment provided for the first time an estimate of the survival rate of bacteria in outer space. Previous experiments suggested that bacteria might survive in space while being shielded beneath the surface of a meteor or asteroid. But the scientists said this was the first experiment to test bacteria in the form of an aggregate or cluster .
¶8 They also said the results suggested life might be much more common in the universe than previously thought.
逆に、難しく感じた方は、どうぞお気になさらないでください。この記事は、中学生や高校生の時、英文中の単語の意味を辞書で調べ、構文を 把握 し、それを基に和訳を作ることはしていても、その英文を抽象と具体に分け、強弱を付けて読むための具体策までは扱っていない方々のためにも書いているものだからです。
具体には「過去形、数字、固有名詞」のサインがある
例えばのお話です。僕が「大学入試では look forward to V-ingがよく出題されます」と 主張 したとします。しかし、これでは単なる事実を漠然と述べているだけであり、「あ、そう。へぇ・・・」で終わってしまいます。説得力のかけらもありません。
ところが、それに続けて「この慣用表現は、昨年出題されたもので言うと、首都圏の大学269大学中27大学にのぼり、その中には有名私立大学である●●大学、▲▲大学、■■大学などが含まれているのです」と続ければ、がぜん説得力が増し、インパクトはかなり強くなると思います。「完全に抽象→具体の構造」ですから、おそらく 「その型」にはまった(耳にした言葉が頭の中の「イメージ」と一致した)ので「わかる」につながった のではないでしょうか。
つまり、言葉は数学ではないのですべてが完全に当てはまるわけではありませんが、「 過去形 (=出題された)、 数字 (=269大学中27大学)、 固有名詞 (=●●大学、▲▲大学、■■大学)」は基本的に 具体例を述べるときに使うサイン なので、英文を読む場合は、それらを自分の立ち位置の 把握 (自分は今、抽象部分を読んでいるのか、具体部分を読んでいるのかをつかむこと)に利用すればよいのであり、これらが使われている文章は 主張 部分を補完する具体部分として「軽く(弱く)」読めばよいのです。 retention (記憶保持)すべきは、抽象( 主張 )部分 です。
また、 具体のサインである「過去形、数字、固有名詞」 は、 主張 部分の理解が怪しい、もしくは難解なときに、これらを含む具体部分はゆっくり、丁寧に、意味を取り、この部分を前の 主張 部分と重ね合わせて理解の助けにすればよいのです。
英文読解に強弱を付けるときの頭の働かせ方
それでは、「具体のサイン」を意識して、記事を読む際の頭の働かせ方(強弱の付け方)を確認しましょう。
¶1 【まずは抽象(= 主張 )が来るはず!】
Researchers in Japan have provided more evidence supporting the theory日本の研究者たちが提供したのはその理論を裏付けるさらなる証拠であり、
that all life on Earth could have sprung from bacteria that landed on the planet from outer space.¶2 【この後は具体のはず!】その理論とは地球上のすべての生物は宇宙から来たバクテリアから生じたもの かもしれない というものだった。
The evidence comes from an experimentその証拠はある実験によるものであり、
that was conducted on the International Space Station (ISS), ~¶3 【ここからは出てきたものを素直に解釈していきましょう】それは国際宇宙センター(ISS)(=固有名詞)で行われ(=過去形)~ *
=具体部分=軽く*
The researchers placed bacteria samples in ~研究者たちはバクテリアのサンプルを~に置いた(=過去形)。
=¶2の実験をした。
=具体=軽く
They said that ~¶4彼らは言った(=過去形)。
=実験についての言及。
=具体=軽く
The researchers said that ~その研究者たちが言った(=過去形)。
=¶3の結果を踏まえて研究者たちが~と言った。
~ approximately 1 millimeter in diameter直径約1ミリ(=数字)の~
~ for up to eight years¶5最大8年もの間(=数字)
=過去形や数字=実験結果
=いずれも具体=軽く
If so , ~もしそうならば、~
=¶4から導くことができる推論や結論
~ take several months or years¶6数カ月、ないしは数年間(=数字)かかる
=何か 具体的な ことに言及。
=具体=軽く
The study provide s important evidence for a theory known as *panspermiaその研究が提供しているのは( 現在形になっていることに注意 )panspermiaとして知られている理論に対する重要な証拠であり、
, which suggests that life didn’t originate on Earthその説が暗示しているのは、生命は地球で誕生したのではなく、
=過去形 ※この過去形はpanspermiaなるものの説明部分
but instead began elsewhere in the cosmos宇宙のどこかで発生したものであり(=過去形 ※同上)、
and was transported to the planet ~¶7それが地球に運ばれた(=過去形 ※同上)ということである。
=¶1の retention により、ここで話がつながる!
The researchers said ~その研究者たちが言った(=過去形)。
=考察を進めている。
Previous experiments suggested that ~以前の実験が暗示していたのは(=過去形)~
=現在との対比?
But the scientists said ~¶8しかしながら、科学者たちが言った(=過去形)。
=科学者たちが何かしらをコメント。
=いずれも具体=軽く
They also said彼らがさらに言った(=過去形)
=やはり、具体=軽く
the results suggested life might be much more common in the universe than previously thought.この結果が暗示していたのは、これまで考えられていたよりも生命が宇宙に存在していそうだ、ということだ。
=¶1、¶6とつながる!=軽く(確認)
記事を一言で要約してみよう
それでは、問題です。
上記の文章を一言で要約するとどうなるでしょうか?
答えは、¶1、¶6、¶8を基に「 生命体は地球の外(宇宙)にいた 可能性 があり、それが地球に入ってきたの かもしれない 」といった感じになるかと思います。
ちなみに 、ここまで言わずにいたこの記事のタイトルは“ Study Provides Support for Theory That Life on Earth May Have Come From Space (VOA News Aug 27, 2020 4:33 AM) ”です。「宇宙播種説(地球上の生命は宇宙からやって来たの かもしれない という説)を立証か」とでもなるでしょうか。
いかがでしたか?正解だった方はお見事でした。うまくいかなかった方もまったく問題ありません。今はあくまでも練習ですし、普段私たちがその記事を読むときは、そのタイトルを最初に読めるわけですから、それを retention しながら内容を 整理 していけばよいだけのお話です。ぜひタイトルの retention を強く意識しつつ、①解説部分の日本語訳だけをつなげて、次に②英文だけをつなげてもう一度読んでみてください。
今回の内容は、以上です。
ところで皆さんは英語を「ふわっと」読んだことはありますか?次回は、今回の内容も踏まえて、「その方法」と「記憶の容量」についてお話しします。この読み方を習得して最難関大学に合格した学生を例に挙げながら、今回の記事に出てきた*印のような難単語や専門用語があっても、論文を専門的に翻訳する必要がない限り、それをスルーしてよい理由を脳科学の観点からお伝えします。
以下は、前回お約束した今回の記事の訳例です。参考にしてみてください。(私は宇宙生物学が専門ではないので、ささいな誤訳は知識 不足 によるものです。ご容赦ください)。
まとめ
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神坂明生海(かみさかあきおみ) 福岡県生まれ。駿台予備学校英語科講師。全国通訳案内士。高校まではほぼ勉強せず、日本語もままならなかったが、浪人時代に小畑徳正先生、副島隆彦先生と出会い、本格的に勉強を始める。その後、認知言語学的なアプローチから英語を捉え、現在に至る。駿台の長文の授業では、普段私たちが意識しない「予測する力」を活用した授業を展開中。座右の銘は「ABCを忘れない(A:当たり前のことを、B:バカにせず、C:ちゃんとやる)」。
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