「モチベーションの維持」。これは英語学習者の永遠のテーマと言えるのではないでしょうか。連載「飽きない英語 マナビツヅケル学習者」では、現役高校教員の大竹保幹さんが、授業で実践している飽きない英語学習の方法と、それを皆さんの英語学習に応用させるコツを紹介します。
復習から始めよう
英語の力をなるべく早く上げるために、単語をたくさん覚えたり、文法の問題集を解いてみたりと学習量をどんどん増やしていくことはとても大切なことです。
急いで先へ進みたい気持ちもわかりますが、どんなときでも忘れてはいけないのが「 復習 」です。
というのも、復習は記憶を定着させるだけではなく、その日のやる気にも 影響 を与えるくらい重要な役割があるからです。では、一人で勉強を進めるときにどんな復習をしたらいいのでしょうか。第3回のテーマは「復習から始める」です。
復習でモチベーションを下げないために
学校の英語の授業で最初にやることが多いものはなんでしょう?
答えは、単語や文法などの知識を確認する「小テスト」です。小テストは、 事前に 家庭で覚えてくる範囲が示され、その課題の出来栄えを試すものから、前回の授業の「おさらい」を目的としたものまでさまざまです。
このテストの結果が成績に入る かどうか は学校ごとに違うかもしれませんが、生徒は「テスト」という響きだけで結構ドキドキするはずです。
「復習」は知識を定着させるために絶対に必要なことなので、小テストがあれば生徒たちは嫌でも必死に復習をすることになるだろう、という先生たちの悪知恵とも言えます。
ただ、この半ば強制的に復習させるやり方は人によって向き不向きがあり、小テストでよい点が取れないと、仮にそれが成績とはまったく関係ないものであったとしても、 落ち込みます 。
私は以前勤務していた学校で、前回の授業で習った単語を復習する小テストを毎回行っていました。点数は成績に入れず、あくまでも「自分がどのくらい覚えているかを自分で確認するためにやっているんだよ」と言ってはいたのですが、それでも思ったよりも点数が低いと生徒はがっかりします。
1回くらいならまったく気にすることはないのかもしれませんが、それが何度も続くと自信を失ってしまうのでしょう。心なしか授業へのやる気もなくなってきているようでした。
復習をして知識を定着させることで、英語でできることを増やし授業を楽しくすることが目的だったのに、これでは 小テストの意味がありません 。
そこで、小テストをする前に「復習の復習」をすることにしてみました。前回授業で覚えた単語を、カードなどを使ってクラス全員で復習した後に単語の小テストをする。こうすることで当たり前のように満点を取りやすくなります。もちろん、この時点でテストとしての機能は果たしていませんが、生徒の反応を見て私は確信しました。
「できる」って気持ちいいんだな。
生徒全員が満点を取ったときは不思議な高揚感が教室にあふれてきて、その後の授業も前向きな気持ちで取り組んでいるようでした。
もちろん、このやり方はいわば小テストのためのドーピングなので、学校教育では成績に関係ないところでしか使うことができませんが、自分一人で勉強するときはいくらだって使って構いません。日々の学習ではこういった 「達成感」や「できた感」を自分で演出していくことも大切 なのです。
テクニックを応用して楽しく復習しよう
学校では先生たちが小テストを作ってくれるので、ある意味、自動的に復習できるようになっていますが、私たちが 一人で勉強を進めるときにはどんな復習をすればいいでしょう 。
例えば単語なら、前日学習した単語の意味などを赤いシートで隠して覚えた かどうか を確認していくのが一般的なやり方ですが、この 作業 で あまりに覚えていない自分に幻滅した という経験はありませんか?私はあります。
そんなときは、赤いシートを使う前に単語の意味を見て、何を覚えたのかを思い出すようにしてみましょう。「そういえばこんな単語あったな」くらいの状態にしてから赤いシートで単語を隠すと、すらすらと意味が頭に浮かんできます。
答えを 先に 見ているので当たり前のことかもしれませんが、単語を覚えるのにかかる時間は前日よりも短くなります。翌日にも同じ範囲を繰り返せば、もっと短時間で単語の復習ができるはずです。
長めの英語の文章問題や新聞記事などを使って英語を勉強しているときにも同じような復習のテクニックが役に立ちます。新聞記事を読み直す前に、昨日調べた単語のリストを見たり、問題集であれば日本語訳などをざっと見てから英文を読み直してみたりするだけで負担感はぐっと抑えられます。
リスニングの学習も同じで、英文のスクリプトを眺めてから聞き直してみたり、何度も聞いたことのある英文をシャドーイングの練習に使ったりすることで、変な緊張感から解放されます。
知識を覚えている かどうか をしっかりテストするのも時には大切なのですが、それを自分に対して毎日のように課し続ける必要はありません。むしろ、復習のやり方を工夫して 英語を読める、聞けるといった成功体験を自分で作り上げていくことが大切 なのです。
久しぶり に英語を勉強しようかな」という人は?">「 久しぶり に英語を勉強しようかな」という人は?
毎日英語を勉強している人にとって、復習の範囲は「昨日やったところ」とか「今週やったところ」なので特に困ることはありませんが、 久しぶり に英語の勉強を再開しようというときにはどこから学び直せばいいのか 迷います。
学び直しのスタート地点は、そのときの英語の実力や自信の程度によって違ってきますが、あまり最初に戻り過ぎない方がいいのは間違いありません。
英語学習のブランクが長いと、まじめな人ほどすべて一からやり直そうとする 傾向 があるように感じますが、本当にわかり切っていることを問題集で練習するのはあまり面白くありません。
中級程度の問題集などには初級範囲の知識が散らばっているので、それらを解いているうちに記憶がよみがえってきたり、復習になったりすることだってあります。
また、途中で投げ出しがちな単語集も、例えば500番で挫折してしばらく使っていなかったとしても、1番からやり直す必要はありません。また500番付近で投げ出す 可能性 もありますし、もしそうであるならば501番~1000番まで進めておいた方が自分の知識として広がるような気がしませんか?
単語に限らず、文法などの知識を積極的に増やしていくことは英語学習にはなくてはならないものです。そのため多くの人が新しい知識をどんどん増やしていくことに熱心になっていて、それはとても素晴らしいことなのですが、残念ながら私たち人間は1回ですべてを完璧に覚えられるほどの能力を持ってはいません。
そして、さらに残念なことに私たちは忘れるのをわかっていても、本当に忘れていると落ち込む生き物なのです。そういう点では、 新しいことを覚えていくよりも、むしろ忘れないように繰り返す工夫の方が大事 だといえます。
英語学習は競争ではありません。
山の頂上へ急いで登る必要はなく、ゆっくりと足場を確認しながら自分のペースで登ればいいのです。焦って詰め込んだ知識はあっという間にこぼれ落ちていきます。
一つ一つを大事にしていくことで、英語の実力だけでなく英語に対しての自信も付いてくるはずですよ。
- 作者: 大竹保幹
- 出版社: アルク
- 発売日: 2018/12/18
- メディア: 単行本
文:大竹保幹(おおたけ やすまさ)
神奈川県立多摩高等学校教諭。1984年、横浜市生まれ。明治大学文学部文学科卒業。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省 委託 事業英語教育 推進 リーダー。趣味は読書。好きな作家はスティーヴン・キング。著書に『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』、『まんがでわかる「have」の本』(アルク)。
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