終戦から2017年まで。英語学習をざっくり振り返る

年末企画のひとつ。終戦から2017年まで、それぞれの年代に生まれた英語学習のベストセラーとともに、主な出来事や流行を振り返ります。

?1950年

終戦のわずか1ヶ月後に刊行された『日米会話手帳』が大ベストセラーに。タイトルは英会話ではなく「日米会話」。

言語としての英語ではなく、家としての米国やその出先機関であるGHQにいかに向き合うかが喫緊の課題であった。

  • ポツダム宣言受諾(1945年)、日本国憲法公布(1946年)
  • 6・3・3・4制が 実施 される(1947年)
日米会話手帳(1945年)

玉音放送の1ヶ月後に刊行された「戦後初のベストセラー」として知られる小冊子。当時の定価は80銭。発行部数は300万部とも400万部ともいわれる。

「日米会話手帳」はなぜ売れたか (朝日文庫)
  • 作者: 小川菊松,国弘正雄,武田徹,姜信子,猿谷要
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 1995/08/01
  • メディア: 文庫
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ジャック・アンド・ベティ

戦後初期の公教育で用いられた英語の教科書のひとつ『ジャック・アンド・ベティ』。ここに描かれた、自家用車と庭のある郊外生活が「アメリカ」の典型的なイメージを形成した。

Revised Jack and Betty 復刻版1~3
英文標準問題精講(1933年)

戦前から読まれ続ける「原の英標」。著者の原仙作は開成高校でも教鞭をとった。同校で原氏に師事した中原道喜による改訂で版を重ねている。

英文標準問題精講
 

1950年代

国際社会に復帰した日本。対米を主とした輸出貿易も盛んになるが、英語はまだまだ遠い存在。

  • サンフランシスコ講和条約(1951年)
  • NHKによる日本初のテレビ放送(1953年)
  • 日ソ共同宣言、国連加盟(1956年)
和文英訳の修業(1952年)

『英文構成法』『英文解釈考』でも知られる佐々木高政の著書。英語上達の秘訣として、本書に掲載された500の基本文例の暗唱を挙げる上級者も多い。

和文英訳の修業
 
アメリカ口語教本(1959年)

現在も広く用いられる『アメリカ口語教本』の初版は60年近く前のこと。 

アメリカ口語教本・中級用(最新改訂版)
 

1960年代

激化する大学入試。入試問題も難化し「受験英語」の存在感が増す。新聞や文学などではなく実際の「試験」問題に登場する単語を、アルファベット順ではなく頻繁に「出る」順に掲載するというデータ主義の『試験に出る英単語』が大ベストセラーに。

海外旅行が自由化されるのは1964年のこと。それまでは「英語を学び、海外にいける仕事に就くこと」が世界に出るためには必要だった。

  • 国民所得倍増計画(1960年)。10年の計画を7年で達成
  • 海外旅行が自由化される。 ただし 渡航は年1回のみ(1964年)
  • 団塊世代が18歳に。1学年200万人は現在の約2倍(1966年)
  • アポロ11号が史上初の有人月面着陸に成功(1969年)
英語に強くなる本(1961年)

『宝島』『ジキル博士とハイド氏』で有名なスティーブンソン研究の第一人者、英文学者の岩田一男は、受験参考書のヒットメーカーでもあった。

英語に強くなる本―教室では学べない秘法の公開 (カッパ・ブックス)
 
試験に出る英単語(1967年)

「しけ単」「でる単」の愛称で版を重ねるベストセラーは累計1500万部。著者の森一郎が、当時のナンバーワン進学校である日比谷高校に勤務した時期にまとめた本。

試験にでる英単語―実証データで重大箇所ズバリ公開 (青春新書)
 

1970年代

成田空港が開港し、海外旅行も少しづつ一般的なものになる。バックパッカーのバイブルとなる『深夜特急』を著した沢木耕太郎がロンドンを目指す旅に出たのは1973年のこと。

同時に 、受験英語を極めたのに外国人を前にすると全く話せない、という苦い体験をする人も増えた。これが「英語の勉強のあり方」についての議論が広範な注目を集める土壌となった。

  • 海外渡航者数(出国者数)が100万人を突破(1972年)
  • 平泉試案(1974年)、平泉・渡部論争(1975年)
  • 成田空港(新東京国際空港)が開港(1978年)
  • TOEIC 第1回テストが 実施 される(1979年)
  • ウォークマン発売開始(1979年)
ENGLISH JOURNAL(1971年)

漂白されない、生の英語を届ける「音の月刊誌」。カセットテープとして1971年に創刊。

CD付 ENGLISH JOURNAL (イングリッシュジャーナル) 2018年 1月号
 
なんで英語やるの?(1974年)

ソビエト連邦で育ち、10年弱の米国留学も経験した著者が、英語講師としての自身の実践もまじえつつ、英語教育のあり方を問う本。大宅壮一ノンフィクション賞受賞を受賞。

なんで英語やるの? (1974年)
 

1980年代

明治学院大学国際学部(1987年)、都立国際高校(1989年)など「国際化」が大きなトレンドに。「英語を」ではなく「英語で」学ぶことの重要性が広まり始めた。

ビジネスマンの海外赴任が増えるとともに「帰国子女」も珍しくなくなる。帰国子女アイドルの早見優は1982年に日本レコード大賞新人賞を受賞し、その後、英語教育番組のパーソナリティも務めた。

ウォークマンの大ヒット、CDの普及などで、リスニングを中心とした英語学習が身近になった。

  • 1000時間ヒアリングマラソン(1982年)
  • 留学専門誌「留学ジャーナル」創刊(1983年)
  • プラザ合意。ドル安(円高)への国際的協調を確認(1985年)
  • 販売枚数でCDがLPを上回る(1986年)
  • 「早見優のアメリカンキッズ」放映開始(1989年)
日本人の英語(1988年)

日本語・英語の双方に精通した著者が、日本人と英米人との語学感覚のずれを 分析 し、ベストセラーに。

日本人の英語 (岩波新書)
 
起きてから寝るまで表現550(1989年)

起きてから寝るまで、つまり日常生活での行動や思考を英語でつぶやくという勉強法。シリーズ化され、ロングセラーに。

起きてから寝るまで表現550
 

1990年代

海外への留学者数が3倍になった10年。留学が身近になるとともに英会話スクールが急成長。

ひと昔前の英語学校との大きな違いは「ネイティブスピーカー」に1対1あるいは少人数で、英会話を教わることができる点。

90年代、とくに後半からTOEICの受験者数はうなぎのぼり(2000年に100万人を突破)。普通の学生や一般のビジネスマンも「英語とのつきあい」が大学受験で終わらない時代になった。

  • 海外渡航者数(出国者数)が1000万人を突破(1990年)
  • TOEICの受験者数が30万人を突破(1990年)
  • スピードラーニング(1993年)
  • iモード、EZweb が相次いでサービス開始(1999年)
これを英語で言えますか?(1999年)

柔らかいタイトルを身にまとった新書がベストセラーに。英語で言いたい「これ」には、たとえば「いない、いない、ばぁ」「バレたか!」などクイズなものも。

これを英語で言えますか?―学校で教えてくれない身近な英単語 (講談社パワー・イングリッシュ)
 
たった3カ月でTOEICテスト905点とった(1999年)

ビジネス系出版社から出たTOEICの本がヒットに。短期間でTOEICのスコアを上昇させた推理作家が自らの勉強法を開陳。

たった3カ月でTOEICテスト905点とった
 

2000年代

1996年がピークの出版市場、ゆるやかな右肩下がりのトレンドは2000年代も続いている。英語へのニーズの多様化もあり、ベストセラーが生まれにくくなった。

一方、ディクテーションの要素を取り入れた英語学習ゲーム「えいご漬け」が任天堂DSで大ヒット。また、音楽や音声をデータとしてダウンロードする、という消費の仕方も一般的になる。

  • アップルがiPodを販売開始。大ヒットに(2001年)
  • 文部科学省「英語が使える日本人」育成の行動計画を発表。小学校の英会話活動を支援(2003年)
  • センター試験でリスニングが導入される(2006年)
  • ニンテンドーDS用ソフト「えいご漬け」(2006年)
  • アップルがiPhoneの国内販売を開始(2008年)
萌える英単語もえたん(2003年)

レベル(入門、中級、上級)や用途(ビジネス、資格、旅行)によるセグメンテーションではなく、「萌え」を狙いうちした書籍がヒットに。

萌える英単語もえたん
 
ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本(2001年)

会話であれTOEICであれ、英語に再び向き合うには中学で習う基本的な文法の知識はじつは欠かせない。現在も底堅い、学校英語の「やりなおし」ニーズをとらえた本がヒットに。

ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本
 

2010年代

スマホアプリ、オンライン英会話など、生活に根付いたインターネットが英語の学習環境を大きく変えた。

  • オンライン英会話大手のレアジョブが上場(2014年)
  • 国内で働く外国人が2008年の約49万人から約108万人に(2016年)
  • Google翻訳がアップデート。機械学習の精度が大幅に向上(2017年)
  • 大学入試の次期共通テストが民間試験を活用。話す、書くを含む4技能に(2017年)
  • 全世界の広告費、ネットがテレビを上回る見通し(2018年、 予測
世界のグロービッシュ(2011年)

「ネイティブ」や「帰国子女」のような英語を目指すことが現実的ではないのはわかるが、では何を目指したらよいのか?この問いに答えた本がベストセラーに。

世界のグロービッシュ ─1500語で通じる驚異の英語術
  • 作者: ジャン=ポール・ネリエール,ディビッド・ホン,グローバル人材開発
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2011/03/31
  • メディア: 単行本
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TEST 出る単特急 金のフレーズ(2012年)">新TOEIC TEST 出る単特急 金のフレーズ(2012年)

企業内における英語の公用化が大きなニュースに。ビジネスマンのTOEIC熱は休まらず、2010年代には200万人を突破。

TOEIC L & R TEST 出る単特急 金のフレーズ (TOEIC TEST 特急シリーズ)
 
編集部より

年表を作る 作業 は楽しいですがなかなか難しいですね。次回はもう少し範囲を絞って細かい年表を作ってみたいと思います。

来年もどうぞ よろしく お願いいたします。 

 

 

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