渡米して20年以上がたち、現在はオレゴン州ポートランドで暮らす大石洋子さん。家族や身の回りで起こった出来事や季節のイベント、日米文化の違いなどにまつわるお話を現地からお届けします。
高校生の娘が、髪を染めてみたいと言い出した。娘の髪は黒々として太くて多いから、少し明るい色にしたら軽くてかわいい感じになるのだろうと母親の私も思ったりするけれども、やはり高校生の毛染めには抵抗があり、首を縦に振る気になれない。「学校の規則だからダメ」と言えたら簡単なのにと恨めしく思うが、残念ながら娘が通う公立高校にはそんな規則はない。ピンクや紫や水色に髪を染めている子も決して珍しくはないのである。聖子ちゃんカット全盛期に高校生で、夏休みにパーマをかけるのさえも「バレたらどうしよう」とドキドキだった私からしてみると、信じられないほどの自由さだ。
服装 に関して も、かなり自由。校則などないのかと思っていたら、あった。なかなか興味深いので、少し 抜粋 してみよう。
・ 生徒は服を着なければいけない(シャツとパンツ、あるいはスカート、またはそれらに相当するもの、そして靴)
・ シャツやドレスは、前と両サイドに布があるもの
・ 下着が見えないこと(パンツのウエスト部分とブラジャーのストラップは除く)
・ private parts を覆っている布はシースルーであってはならない
こういう規則を設けておかないと生徒は裸で来てしまうと本気で 心配 しているかのような、露出への牽制(けんせい)ぶりである。これによれば、「前と両サイドに布」とあるから、背中は出してもいいことになる。また、private parts というのは辞書では陰部と出てくるが、ここでは女性の胸も含まれる(ちょっと話がそれるが、アメリカでは小さい子には「水着で隠れる部分」というふうに説明し、「その部分は大事だから人に見せてはいけない。見せていいのは親とお医者さんだけ。そのほかに見たがる人がいたら大人に言うこと」と早い段階から教育する)。その部分を覆う布が透けるものではいけない、などとわざわざ書かないとダメなのか? と思うわけだが、きっとこれを書くに至った経緯というか、理由というか、必要性があってのことなのであろう。
娘によれば、胸 に関して は「先っぽのことよ」だそうである。そう言われてみると確かに、先っぽこそ隠れているものの、胸元が大きく開いたぴったりニットや、スパゲティ・ストラップ(細い肩ひも)のキャミソールなどで堂々と谷間を見せて平気で歩いている女子高生はたくさんいる。そんな女の子がそばにいたら、男の子たちは勉強どころではなくなってしまうのでは、と 心配 になるくらいだ。 ちなみに 胸の谷間は、英語ではcleavage という。
イラスト:尾崎仁美
服装に関する規則が 厳しい 学校もある。知り合いの子が通うキリスト教系の私立校では、胸の谷間露出がダメなのはもちろん、穴あきジーンズと、体の線がバッチリ出るレギンスも禁止だそうである。
娘の学校に話を戻そう。ルールはまだ続く。露出はダメだが、隠し過ぎもいけないようで、「帽子やかぶり物やフードは、顔が見えるように」と書かれている。この学校の生徒以外の誰かが紛れ込んできては困るから、これは大事な決まりだ。
また、学校に着てきてはいけないものとして列挙されている中で最初に挙がっているのは、アルコールやタバコ、ドラッグなどを擁護したり宣伝したりするようなもの。私も地元のブリュワリーで買ったロゴ入りT シャツを持っているのだが、そんなのを娘が着て行ったら大変である。その昔に私が日本で高校生だった頃には、外国タバコのロゴ付きの紙バッグがはやったものだが、あんなのもダメなのだ。ほかには、性的描写、ヘイトスピーチ、差別的なメッセージなどが書かれた服もご法度である。
ところで、アメリカの学校では服装で遊ぶこともある。生徒たちが、決められたテーマに合わせた服装をしてくるのだ。不ぞろいのソックスの日やパジャマデー、変な髪型の日などなど。パジャマデーには、本当にみんなパジャマを着てくるし、中には枕まで持ってくる子もいる。娘の高校では、tacky tourist(やぼったい旅行者)というテーマの日があった。その日、生徒たちは、アロハシャツにカーキのショーツ、サングラスに双眼鏡をぶら下げ、腰にはウエストポーチ、足元は白いソックスにサンダル、というようないでたちで登校してきた。
学年ごとに決められた色の服を着てくるという日もあった。校内もその色で飾り付けをして、どの学年がいちばん統一感があるかを競うのだそうである。一つの教室にいろいろな学年の生徒が入り混じって授業を受けているから、その日に初めて何年生か明らかになる子もいるらしい。白い服を着ている1年生ばかりの教室に、一人ぽつんと赤い服の2年生がいたりすると、「1年生の必修科目を落としちゃったんだね」「でもあんな調子だとまた落としちゃうんじゃない?」などとヒソヒソ話の的になるらしい。これがもとで仲間外れになるのでは、と 心配 になるが、横並びとか、みんな一緒とかいうことに重きを置かないアメリカでは、そんなことは大した問題ではないのだそうで。たくましいなあと感心するのであった。
アメリカのオレゴン州ってどんなところ?
アメリカ北西部に位置する、全米屈指の美しい景観を誇るオレゴン州。IT、バイオテクノロジー、環境関連産業の成長目覚ましく、ナイキなどのスポーツ・アウトドア企業も多い。州都はセイラム、最大の都市は人口約60万のポートランド。
【トーキングマラソン】話したいなら、話すトレーニング。
語学一筋55年 アルクのキクタン英会話をベースに開発
- スマホ相手に恥ずかしさゼロの英会話
- 制限時間は6秒!瞬間発話力が鍛えられる!
- 英会話教室の【20倍】の発話量で学べる!
SERIES連載
思わず笑っちゃうような英会話フレーズを、気取らず、ぬるく楽しくお届けする連載。講師は藤代あゆみさん。国際唎酒師として日本酒の魅力を広めたり、日本の漫画の海外への翻訳出版に携わったり。シンガポールでの勤務経験もある国際派の藤代さんと学びましょう!
現役の高校英語教師で、書籍『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』の著者、大竹保幹さんが、「英文法が苦手!」という方を、英語が楽しくてしょうがなくなるパラダイスに案内します。
英語学習を1000時間も続けるのは大変!でも工夫をすれば無理だと思っていたことも楽しみに変わります。そのための秘訣を、「1000時間ヒアリングマラソン」の主任コーチ、松岡昇さんに教えていただきます。