外資系トップコンサルタントであるエリック松永さんに、ご自身の体験から「オトコマエ」になるための英語の極意を教えていただきます。3回目の今回は、「ビジネスで勝つための接待」についてです。
間違いだらけの接待
日本では接待というとカラオケ、クラブやキャバクラといった夜のイメージが強いのではないでしょうか?飲んで、歌って、飲んで、二次会、三次会と「時間 x 酒量」で関係が深くなるという都市伝説で身体を犠牲にするジャパニーズ・ビジネスマン!?まさか、このオトコマエ英語道場の読者で「営業は肝臓だ!」なんて言っている方はいませんよね。
接待費は英語で、 entertainment expenses といいます。entertainment の動詞は、entertain。つまり人を楽しませることです。最近は会社の接待費で豪遊という時代ではなくなりましたが、主人公はあくまで接待される相手であるべき。日本の接待の現状では、この基本が無視されていることが多いようです。自分の行きつけのレストラン、バーにルーティーンで連れ回すのは相手にとって拷問でしかありません。接待の基本は相手を喜ばせること。つまり、 相手の趣味嗜好をどこまで深掘りできるかに意味がある のです。
接待前に最低限のチェック項目「AR before F」
接待では食事をしながらということが多いですね。僕自身、いろいろな国籍の方が日本にいらしたときに食事をします。そのとき、決して自分本位でアレンジはしません。オトコマエは、「before “F” (favorite)」、つまり好き嫌いの前に、「A」と「R」をチェックします。
まず 「A」は allergy(アレルギー) ですね。間違って食べたではすまされない身体的危険があります。 ちなみに shellfish allergy(甲殻アレルギー)では、鉄板焼きで同じ鉄板で焼くだけで症状が出てしまうケースもあります。甲殻類をオーダーしないだけでは不十分で、お店にアレルギーであることを明確に伝える必要があります。 ちなみに 鉄板焼きの件は、僕のチームのエグゼクティブに起こった実体験です。
次に 「R」は religion(宗教) です。食に対する禁止事項があるケースがありますのでチェックが必要です。例えば、イスラム教では、アルコール、豚肉が禁じられています。肉豚以外の肉であっても、ハラルフードと呼ばれるイスラムの教えに則った方法で 処理 ・ 加工 された肉でないとダメです。
世界にはさまざまな宗教があります。宗教については相手に対する思いやりが欠かせないません。あからさまに聞くと失礼にもあたることもあります。つまり、 食事に誘うということは、この人との繋がりが自分にとって 有効 であり、親密になるための大切な時間を共有すること。 「 とりあえず 」飯に誘うことはオトコマエは絶対にしないのです。 オトコマエに「 とりあえず 」は禁句と肝に銘じましょう !
そして当然のごとく 「F」favorite (好み) 以上の経験をさせてあげたいですね。せっかく日本にきたのですから帰国後、土産話になるようなストーリーを食事に演出できれば最高です。
夜じゃない接待! 打ち解け合う昼食、攻めの朝食
グローバル企業で働いていると海外でのミーティングは社内、社外とかなりの頻度になります。海外ではいきなりディナーに誘われることは滅多にありません。 仕事上の関係であれば、 luncheon (ランチミーティング)が多い 。時間の拘束も 少ない ですし、ビジネスアワーの間ですから頭もビジネスモードで効率的に仕事の話ができます。海外では軽くワインを飲んだりするケースもありますので、堅苦しいミーティングより打ち解けた話ができます。
ここでオトコマエとして注意しなければならないのは、ランチであろうと相手の貴重な時間を拘束しているという事実です。 ビジネスである以上、明確なゴールが必要 です。そして、 そのランチの時間を 有効 的に活用しゴールに導くための万全な準備 を忘れはいけません。オトコマエは決して、「 とりあえず 」ランチミーティングとは言わないのです。 ちなみに ランチの場では資料は邪魔ですので僕は iPad を活用しています。
海外からのビジターは基本的に多忙なスケジュールです。ランチもディナーも埋まっていると考える方がよいでしょう。しかし、 どうしても対面で話したいオトコマエなら、攻めの朝食、breakfaston(モーニングミーティング)を狙います 。相手の滞在しているホテルのビュッフェで会うことが多いですね。ビュッフェは食べるものが選べるので便利です。僕は話しやすいようにクロワッサンとコーヒーが多いです。サラダは食べる方に神経が行ってしまうので僕は食べません。ここでも効率的に時間を使うのがオトコマエ流。明確なゴールをもってミーティングを楽しむことができれば最高です。
オトコマエな、サプライズ接待
写真中央はエリック松永さん前職である、コンサルティングファームの本部 OU( Operation Unit )の日本代表として、戦略を決めるミーティングに参加していました。場所はフランクフルトのデザインセンター。各国のリーダーが集まり、缶詰になって朝から晩まで脳みそがかゆくなるくらい熱い議論をしました。その内容を配下のチームと議論するために全員でロンドンへ移動する予定でしたが、その前にミュンヘンに立ち寄るよう招集されたのです。議題はスペシャルセッションとしか明かされていませんでした。
当時、僕は1カ月後に自分のデザインした日本のセンターのオープニングを控え緊張の毎日で、各国のリーダーにはたくさんのアドバイスと応援をいただいていました。そんな中、僕はくだらない願掛けなのですが大好きなビールをセンターオープンまで辞めるという宣言をしていました。
話は戻ります。ミュンヘンで何があったかというと、ちょうど10月に開催される世界最大規模の祭りオクトーバーフェスに皆で繰り出そうということだったのです。「スペシャルセッション」とは、僕が日本のセンターのオープニングを控え、大好きなビールまで我慢するほど神経質になっている僕に元気を付けようとリーダシップチーム皆でエリックを励まそうという粋な計らいだったのです。
Last beer for Eric’s success for Japan!最高のチーム、最高のリーダー。おじいさんの時代から伝わる民族衣装を着てくれる仲間までいました。国籍が違うメンバーの心の結束と励ましに涙が止まりませんでした。ビジネスの奇跡はこういう仲間から起きるとだと確信した瞬間でもありました。僕にとって最高のオトコマエのチームだったのです。エリックの日本代表として成功前に、最後のビールで乾杯!
Peace out,
エリック
オトコマエな接待のポイント
2.接待は夜だけじゃない!打ち解けやすい luncheon 、攻めの morningon で!
3.接待の明確なゴールを設定せよ!
4.ゴールに導くためのストーリーと準備を忘れるな
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twitter.com文:松永 エリック・匡史
アバナード株式会社 デジタル最高顧問。バークリー音学院出身のプロギタリストという異色の経歴を持つアーティストであり、放送から音楽、映画、ゲームから広告まで、幅広くメディア業界の未来をリードするデジタルメディア戦略コンサルティングのパイオニア。アクセンチュア、野村総合研究所、IBM、デロイトトーマツコンサルティング メディアセクターAPAC統括パートナー(執行役員)、PwCコンサルティング デジタルサービス日本統括パートナーを経て、ONE+NATION Digital & MediaのCEOとしてデジタル時代のイノベータとして活動。2019年より青山学院大学 地球社会共生学部 教授。青山学院大学国際政治経済学研究科修士課程修了。
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