オトコマエは黙らない!「説明責任」を英語で言うと?

外資系トップコンサルタントであるエリック松永さんに、ご自身の体験から「オトコマエ」になるための英語の極意を教えていただきます。2回目の今回は、ビジネスで成果が出なかったときこそ、オトコマエを発揮する「説明責任」についてです。

男は黙って面接合格?

かの日本の名優三船敏郎さんは、一言も発しないという革命的なCMを演じました。日本では男たるもの、言葉ではなく、背中で言葉よりも多くの情報を伝えるものであるという古い日本の教え方を CM 作品にしたものです。そこからある都市伝説が生まれました。大学生が就職面接で、そのCMをした企業を受けたとき、面接官の質問に対して何も返答をしなかったそうです。変に思った面接官が、どうして何も答えないのかと聞くと、 『男は黙ってxxxビール』とだけ言い、内定を勝ち取った というのです。私も外資系コンサル会社の役員としてたくさんの面接をしてきましたが、私なら即不合格にしますね。皆さんは、この学生の行動をオトコマエと思うでしょうか?

オトコマエは黙らない

ある大物経営者が起訴をされ世間で話題になっています。そして国際社会で日本での検察の対応が疑問視されています。グローバル社会では、これまでも日本の対応は問題になってきました。 そもそも グローバルとは、一言で言えば人種の坩堝(るつぼ)。さまざまな国籍、宗教、文化を持った人たちが共存しています。そこには良し悪しではなく阿吽(あうん)の呼吸は存在しません。誰もが納得できる説明が必要になってきます。これを accountability(説明責任) と言います。 日本人が最も苦手な部分であり誤解されている部分 です。

米国の人気ドラマ「SUITS」でマンハッタンの凄腕弁護士のハービーは、

Winners don’t make excuses.

勝者は言いをしない。

と言い放ちました。日本人はどうも、これを「男は黙ってxxx」と勘違いしているようですが、全く違います。excuse は、something offered as justification (正当化するために申し出るもの)だったり an expression of regret for failure to do something (何かをしなかったことに対する後悔の表現)であり、accountability とは真っ向反対の負の行為になります。なんかカッコ悪いですよね。オトコマエじゃない・・・。accountability は、オトコマエの ビジネスパーソンとして自分のアクションをどんな異文化の人でも理解できるようにロジカルに説明できること です。

売り上げが良過ぎて怒られる!?

私は外資系コンサルティング業界に20年以上在籍してきました。ある期末のこと、グローバル・リーダーシップミーティングで日本での売り上げ実績が 予想 より2倍の売り上げになりました(実はかなりラッキーな事が重なった)。そのとき私はこんな経験をしました。若きエリックは、 期待以上の実績が出た訳ですから手放しで喜んでもらえると思い、ほとんど詳細な説明の準備もなく数字だけ自慢するようなプレゼンを しました。すると 予想 外の事が起こりました。

What is the reason for exceeding the target ?

目標を超えた理由は何ですか?

え、売り上げあがったんだからいいじゃん!と日本人感覚のエリックは当時思ってしまったのですが、違ったのです。期初には、 target を全体戦略と整合させ、ロジカルに達成するシナリオを作った上で target を定めたはず。つまり target (目標) を大幅に超えるということは、アホズラで喜ぶのではダメで、きちんとなぜ大幅に達成したのかを 分析 し説明しなければならなかったのです。説明が適切になされなければ set a lower target (低い目標を設定した)なんじゃないというネガティブな声も上がりかねないのです。

外資は成果が出ないと fire(クビ)?

逆に、成果が出なかった場合はどうでしょう?

よく外資系企業は、パフォーマンスしか評価されないから成果がでなければクビみたいに言われますが、それは大きな誤解。例えば、さっきのケースとは逆に成果が全く出なかったケースを考えてみましょう。

I apologize for target unachieved.

目標の未達成をおわびします。

そして男は黙ってxxx。これは日本人がよくやる悪い例なんです。 成果が出なかったときそこ、オトコマエを発揮できるチャンス 。調子がいいときよりオトコマエが試されます。ではオトコマエはどう振る舞うのか。キーワードは次の3点セットです。 

客観的 分析 は、まず当初の目標を設定したときの条件を再確認し、実際のパフォーマンスとのギャップは何かを 明確にする 。この時点で「 I apologize for ~」とか言ってる暇はない。

そしてギャップが生まれた要因は何か、どうすればそのネガティブな要因を避けることができたのかを割り出します。これは自分自身だけではなく、チームや企業の学びにもなるはずです。

そして、ここからが一番大事。今回の失敗から学んだことをベースに次の課題と新たなターゲットを明確にし、今回の失敗を教訓に達成が期待されるような 具体的な 目標やアクションプランを 提示する のです。

どうですか?頭をうなだれて、I apologize for ~ .(沈黙)と比べて建設的でありオトコマエですよね?しかも 成果が上がらなかったのにカッコいい (笑。これがハービーの言う Winners don’t make excuses. の隠れた意味なのです。

excuse は見苦しく無責任、しかし accountability を全うすることは建設的でありオトコマエ なのです。

ちなみに 、外資系では成果が上がらないとクビの話題に戻りますが、私の経験上、成果が上がらないのが理由ではなく、きちんと accountability を全うしないとグローバルでは仕事してないように見えるんです。仕事してない人は価値ありませんからいらない。それだけです。オトコマエは、保身のための excuse は言いません。常に成長のためのaccountability を全うするのです。皆さんも Winners don’t make excuses. の意味をもう一度考えてみてくださいね。

Peace out,

エリック

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文:松永 エリック・匡史
アバナード株式会社 デジタル最高顧問。バークリー音学院出身のプロギタリストという異色の経歴を持つアーティストであり、放送から音楽、映画、ゲームから広告まで、幅広くメディア業界の未来をリードするデジタルメディア戦略コンサルティングのパイオニア。アクセンチュア、野村総合研究所、IBM、デロイトトーマツコンサルティング メディアセクターAPAC統括パートナー(執行役員)、PwCコンサルティング デジタルサービス日本統括パートナーを経て、ONE+NATION Digital & MediaのCEOとしてデジタル時代のイノベータとして活動。2019年より青山学院大学 地球社会共生学部 教授。青山学院大学国際政治経済学研究科修士課程修了。

編集:増尾美恵子

 

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