文法的にだけでなく意味が通るかを考えよう!makeの用法を考える問題【難問クイズで学ぶ文法知識⑰】

Twitterで話題になった北村一真さん作成の英語クイズで文法知識&読解力を高める本連載。第17回はmakeの用法を考えるを問題です。

クイズ

This* defines the challenge for the carer in adulthood. Some of the work will involve making good failures of early provision. The wounded inner child will need to be convinced that what they didn’t receive decades ago could still be available today; that there might still be joy, reassurance, play and kindness.

-Alain de Botton : Therapeutic Journey

*This:ここでは、「幼少期に周囲から大切にされていると感じられなかったかったことが心の病の根源にあるという点」を指しています。

文脈

子供はみな親から惜しみない愛情を受けて育つ必要があり、その愛情が不足していると様々なマイナスの感情を持つようになってしまうということ、また、そういった感情が成長して以降の心の病に影響を与えることが指摘されています。

下線部のmakeに最も近い用法でmakeが用いられているのはどれ?

(1) They made a very important decision at that meeting.
(2) Jones made us some coffee.
(3) His remarks made that task more difficult.
(4) Susan made him open clean the room.

単語・語句

  • define:「明確にする」
  • carer:「(心の)ケアをする人、(心の病を抱える人に)優しく寄り添う人」
  • provision:「与えること、提供」→ここでは「愛情を注ぐこと」のようなニュアンス
  • inner child:「心の中にある子供の心」

ヒント

文法的に正しいかどうかだけではなく、意味が通るかもしっかりと考えよう。

つまずきポイント

good failuresをしっかりと分析することができないと誤読するかも。

第1文は構造的には難しくないですね。This (S) defines (V) the challenge …(O).というシンプルなSVOです。直訳は「このこと(=幼少期の心の傷が将来的に心の病のもとになること)が大人になってからケアする人の課題を明確にする」ということで、幼少期の心の傷が病のもとなっていることを踏まえれば、心の病をケアする人が何をしなければならないかも明らかになるということを伝えています。

続いて、第2文ですが、全体の構造はSome of the work を主語(S)、will involve を動詞(V)、making good failures of early provisionという動名詞句を目的語(O)とするSVOの構造です。

それでは問題の下線部に目を向けましょう。一見するとgood failures of early provisionというのは1つの名詞句を構成しているようにも見えるので、makeはここでシンプルなSVOの用法で用いられていると考えてしまいがちです。しかし、意味に目を向けると、「幼少期の愛の提供のよい失敗する」「幼少期の愛情のよい不足を作る」というのは、どうもしっくりきません。

では、どのように解釈すべきでしょうか。ここで、good failuresという1つの名詞句に見える語句を切り離して考える可能性に思いが至ったかどうかがポイントです。goodがfailuresを修飾しないのだとすると、makingにつながることになります。makingとgoodを結びつけるというところから、make O good「O(不足など)を補う、償う」という言い回しがあったことを思い出すことができれば、この部分はmaking (V) failures of early provision (O) good (C)のfailures of early provision(O)が後置されて、making (V) good (C) failures of early provision (O)という語順になったものではないかという点に気づけるはずです。そうすると、下線部の意味も「幼少時の愛情の不足を補うこと」となって意味が通るため、この解釈が妥当なものであると判断できます。

以上を前提に改めて選択肢のmakeの用法に目を向けてみましょう。基本的に全て過去形の述語動詞となっているため、make自体の形は無視してmakeに続く後ろの構造が下線部と最も近いものを見極めればよいことになります。選択肢はそれぞれ

という構造になっているため、SVOCの形をとっている(3)が下線部のmakeの用法に最も近いと判断できますね。

正解 (3)

訳例

この点から、大人になって心の病を抱える人に優しく寄り添う場合でも、何をしなければならないかは明らかだ。課題の一つは幼少時に十分に注がれなかった愛情を補ってやることだ。心の中の子供の心に、数十年前に受け取ることができなかったものが今でもまだ手に入る可能性があるということ、楽しみや安心、遊びや優しさがまだ存在するかもしれないということをしっかりと信じさせてやる必要があるだろう。

前回までのクイズはこちらから

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北村一真(きたむら・かずま)
北村一真(きたむら・かずま)

1982年生まれ。慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得満期退学。学部生、大学院生時代に関西の大学受験塾、隆盛ゼミナールで難関大受験対策の英語講座を担当。滋賀大学、順天堂大学の非常勤講師を経て、2009年に杏林大学外国語学部助教に就任。2015年より同大学准教授。著書に『英文解体新書』(研究社)、『英語の読み方』(中公新書)、『知識と文脈で深める 上級英単語ロゴフィリア』(共著、アスク出版)、『ジャパンタイムズ社説集2022』(解説執筆、ジャパンタイムズ出版)、『英文読解を極める 「上級者の思考」を手に入れる5つのステップ』(NHK出版新書)など。Twitter:@Kazuma_Kitamura

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