コロンビア大学大学院で英語教授法を学んだサラさんが、すぐに実践できる発音のコツを教えてくれる連載、「コロンビア大学TESOLサラの英語発音ジム」。今回は、アクセント(強勢)のルールを解説していただきました。「この単語、アクセントどこに付けるんだっけ・・・?」と迷うことなく、自信を持って英語を話せるようになりましょう!
こんにちは、英語ジム らいおんとひよこ®代表のサラです。今日から新連載「コロンビア大学TESOLサラの英語発音ジム」がスタートします!
この連載では、すべてのレベルの英語学習者や発音トレーニングをしたい方を対象に、発音のルールやコツを解説していきます。記事を読んだ後「すぐ実践できるようになる発音知識」をメインで扱い、「速効性」がある内容を毎回取り上げます。
まずは自己紹介
まず、私の簡単な自己紹介をします。私は大学院留学で初めてアメリカに行き、ニューヨーク市にあるコロンビア大学の大学院でTESOLを学びました。
TESOLとはTeaching English to Speakers of Other Languagesを指し、日本語ではしばしば「英語教授法」と呼ばれます。言語学や第二言語習得研究、そして実践的な英語の教授法などを学ぶ学問です。
私は留学前に日本にいたときから発音に関しては自分なりに勉強、トレーニングを行っていましたが、コロンビア大学で音声学を専門的にさらに深く学んだのがきっかけで、発音の面白さに目覚めました。
この連載では、普段から発音指導をしている経験も踏まえ、現場目線で実践的な発音のコツをお話ししていきます。
nice dayはどこにアクセントを付けて読む?
突然ですが・・・次の英文を声に出して読んでみてください。
Have a nice day!
「え?なんでこんな簡単な文を」と思われた方も、この文について少しだけ深く考えてみましょう。
中学1年生で習う文ですし、難しい単語は含まれていませんが、Have a nice day!と言うとき、
niceとdayのどちらをより「強く」発音しますか?言い換えると、niceとdayのどちらに主要な「アクセント」を付けますか?
niceの方を強く読む、
NICEday
でしょうか?それとも、dayをより強く読む、
nice DAY
でしょうか?形容詞を強く読むのか、名詞を強く読むのか・・・?
今回は、このような「形容詞+名詞」のパターンなど、「2語以上の場合のアクセントの位置」に関するルールを学んでいきます。
もちろん文脈によっては、特定の語を意図的に強調することもありますが、今回は基本ルールについてお話しします。すぐに理解できて実践可能です。さっそく見ていきましょう!
まずは1語のアクセントの位置
アクセント(強勢/ストレス)とは
語におけるアクセントとは、特定の音節がほかの音節よりも「目立って」聞こえることを指します。ストレスや強勢と言ってもOKです。
「目立って」というのは、正確に言うとほかの音節よりも「より強く、より高く、より長く」発音される、ということですが、ピンとこない場合は、「強く目立って」発音されるところ(正確にはピッチの高さと長さが重要ですが、本記事では多くの学習者にとってなじみ深いであろう「強さ」や「アクセント」という表現を用います。)と考えましょう。
「単語レベル」だとアクセントの位置を意識できている人が多い
2語のアクセントの話の前に、まずは1語のアクセントについて考えてみます。ウォームアップでもう1つ問題です。
contribute
「貢献する」という意味ですが、この単語のアクセントの位置はどこでしょうか?
この記事を読んでいる方には簡単かもしれませんが、
con-TRI-bute
という感じで第2音節にアクセントがありますね。
何か新しい単語を覚えるとき、ほとんどの学習者は単語の意味や発音に加え、「アクセントの位置」=「どこが強く目立って読まれるか」も辞書で調べるのではないでしょうか。
つまり、たいていの学習者はcontributeという語を覚えるとき、意味や発音と一緒に、*「第2音節を強く読む」というアクセントの位置も覚えるはずです。
このように「単語レベル」だとアクセントの位置をきちんと意識している人も多いのです。
例えば、insistという単語は第2音節にストレスがある語ですが、仮にもし以下のように発音してしまったら
IN-sist
あ、しまった、正しくは、
in-SIST
だった、と自分で気付いたりもするでしょう。
しかし、私の日々の発音指導の経験上、単語の発音が上手な人や単語レベルでは正しい位置にアクセントを付けられている人でも、2語以上になるとアクセントの位置を意識していないという人がかなり多いです。
2語のアクセントの位置
gas stationはどこにアクセントを付けて読む?
では、2語の場合のアクセントについて考えていきましょう。
「ガソリンスタンド」はgas stationですが、gasとstationはどちらがより強く目立って読まれるでしょうか?
GASstation
のようにgasを強く読むのか?それとも
gas STATION
のようにstationの方を強く読むのか?
後ほど詳しく解説しますが、正解は
GASstation
普通はgasの方をより強く読みます。
1語だとアクセントの位置を気にしている方でも、2語になると、意識していなかったという方も多いのではないでしょうか?
では、冒頭の質問に戻ります。
Have a nice day!
niceとdayはどちらがより強く目立って発音されるでしょうか?
形容詞の方が重要に感じ、niceの方が強く発音されるのでは?と思う方も多いかもしれませんが、正解は、
nice DAY
名詞のdayがより強く発音されます。
ここまでのGASstation とnice DAY*の2つの例ですが、もし仮にアクセントの位置を逆にしたとしても意味は変わらず、問題なく通じる可能性も高いですが、次の例はどうでしょうか?
白い家」と「ホワイトハウス」は同じ発音でいいの?
「白い家」と「ホワイトハウス」はどこを最も目立たせて読めばいいのでしょうか?
the white house その白い家
the White House ホワイトハウス(大統領官邸)
同じ位置にアクセントが付きますか?それとも違う位置にアクセントが付くでしょうか?
次の2文を見てください。
He’s in the white house.
彼はその白い家にいる。
He’s in the White House.
彼はホワイトハウス(大統領官邸)にいる。
彼が「白い家」にいるのか、「ホワイトハウス」にいるのか、この意味の違いを聞き手に正確に伝えるためには、どうすればよいでしょうか?
アクセントの位置が違うと意味が変わることもある
white house(白い家)と the Whtie House(ホワイトハウス)は、アクセントを付ける位置が違います。
「白い家」と伝えたい場合はhouseにアクセントを、「ホワイトハウス」と伝えたい場合はWhiteにアクセントを付けます。
He’s in the white HOUSE.
彼は白い家にいる。
He’s in the WHITE House.
彼はホワイトハウス(大統領官邸)にいる。
このように、2語以上の場合、アクセントを付ける位置が違うと意味も変わることがあり注意が必要なのです。重要なことなのですが、このことをしっかり意識できている学習者は非常に少ないです。
「形容詞+名詞」のアクセントのルール
それでは、アクセントのルールを整理していきます。まずは、「形容詞+名詞」のパターンから見ていきましょう。
「形容詞+名詞」では「名詞」に主要なアクセントが付く。
先ほどのHave a nice day!も例外ではなく、形容詞niceより名詞dayを強く読むように、このルールにのっとっています(なぜ名詞の方にアクセントが付くかは本記事の最後で解説します)。
ここまで理解できると、「白い家」(white house)もこのルールにのっとり、名詞houseをより強く目立たせて発音することがわかるはずです。
white HOUSE
複合名詞のアクセントのルール
さて、「形容詞+名詞」の場合は「名詞」に主要なアクセントというルールがあるのなら「ホワイトハウス(大統領官邸)」the White Houseも名詞のHouseを強く読めばいいのではないかと思いますよね。
しかし、ホワイトハウスは
the WHITE House
となり、形容詞Whiteを強く読みます。これはなぜなのでしょうか?
理由はthe White House(ホワイトハウス)が「複合名詞」だからです。複合名詞のアクセントのルールは次のとおりです。
「複合名詞」では基本的に「第1要素」にアクセントを付ける。
このルールにのっとり、the White House(ホワイトハウス)は第一要素のWhiteにアクセントが付きます。
複合名詞とは?
「形容詞+名詞」や「名詞+名詞」など、2つ以上の要素が合わさり意味を形成しているものを「複合語」と言います。複合語は、複合名詞や複合形容詞、複合動詞などがありますが、8割以上が複合名詞と言われており、今回は複合名詞にフォーカスを当てます。
例えば、「ソーセージ付きのパン」「ホットドッグ」という意味のhot dogは複合名詞なので、アクセントのルールにのっとり、第1要素hotを強く発音します。
HOT dog
また、複合名詞は、元の2語の意味が薄れて、別の意味になることが多いです。hot dogの場合も、「暑い」・「犬」という意味は消えていますよね。
複合名詞は、blackboard(黒板)のように1語のときでも、the White House(ホワイトハウス)のような2語以上でも、ほとんどの場合(例外もありますが)第1要素にアクセントを付けます。
よって、前述した以下の文はWhiteを目立たせて読みます。
He’s in the WHITE House.
彼はホワイトハウス(大統領官邸)にいる。
また、先ほど取り上げた例、gas stationも第1要素にアクセントが付くことからわかるように、実は複合名詞なのです。
「緑の家」と「温室」はどう区別する?
「白い家」と「ホワイトハウス」のペアのように、「形容詞+名詞」と「複合語」でアクセントの位置が変わるペアをもう1つ見てみましょう。
He’s in the green HOUSE.
彼は緑の家にいる。
He’s in the GREEN house.
彼は温室にいる。
「緑の家」という意味のgreen houseは、「形容詞+名詞」のパターンなので、houseにアクセントが付きます。
一方で、「温室」「植物の栽培を目的としたガラスやビニールシートで覆われた建物」という意味のgreenhouseは複合名詞なので、第1要素のgreenにアクセントが付きます。
複合名詞の発音練習をしてみよう!
英語には数え切れないほどの複合名詞があります。なじみ深い単語で発音練習をしてみましょう。すべて第1要素をより目立たせて発音すればOKです。
- WASHING machine 洗濯機
- CREDIT card クレジットカード
- HIGH school 高校
- GAS station ガソリンスタンド
- BORDING school 全寮制学校
- WEDDING ring 結婚指輪
- CREDIT card bill クレジットカード利用明細
いちばん最後のCREDIT card billのように3語の場合も、第1要素を目立たせて読みます。
え?これも複合名詞?複合名詞への感度を上げよう
上記の語は「複合名詞」ということが比較的イメージしやすいかと思います。「複合名詞」と聞くと、何か特別なもののような響きもあるかもしれませんが、実はかなりなじみ深いもので、決して「レア」でないことも知っておきましょう。
CLIMATE change 気候変動
QUALITY control 品質管理
FOOD allergy 食物アレルギー
LANGUAGE school 語学学校
BIRTHDAY party 誕生日会
これらはどれも複合名詞で、第1要素を目立たせて読みます。「名詞+名詞」の組み合わせは特に複合名詞化していることが非常に多いです。
「形容詞+名詞」の場合、名詞にアクセントを付ける理由
最後に、なぜ「形容詞+名詞」の場合、名詞にアクセントが付くのかを簡単に説明します。英語には、「内容語」と「機能語」と呼ばれる2つの分類があります。
内容語:意味的に重要な語で基本的に強く読む*。名詞・形容詞・副詞・数詞・疑問詞・感嘆詞・指示代名詞・所有代名詞・否定語など
機能語:主に文法的機能を表し基本的に強く読まれない。冠詞・前置詞・助動詞・接続詞・関係詞・be動詞など
英語には、フレーズ(正確にはイントネーション句と言います)内の最後の内容語を最も目立たせて読むというルールがあります。
形容詞と名詞は両方とも内容語で重要なのですが、「形容詞+名詞」の語順で最後の内容語は名詞になります。そのため、基本的には形容詞より名詞の方が目立って読まれる*のです。
ただし、今回紹介したルールは、特定の文脈がないときのニュートラルな発音の仕方です。特定の語を意図的に強調したりするときはもちろん、どの語を強く読んでも間違いではありませんので安心してくださいね。
まとめ
自信を持って発音したのに、英語ネイティブからは一瞬遅れて反応が返ってきた、という経験はありませんか?そのときはもしかしたら、ホワイトハウスや温室のような複合語のアクセントの位置が間違っていたのかもしれませんね。
今回紹介したアクセントのルールを「全然知らなかった・・・」という人もいるかもしれませんが安心してください。アクセントの位置に気を付けることは今すぐ実践可能です。いろいろ解説しましたが、今回は以下の2つのことを覚えておけば大丈夫です。
- 「形容詞+名詞」では「名詞」を目立たせる。
- 「複合名詞」では「第1要素」を目立たせる。
もちろん文脈によっては特定の語を強調するときもありますが、まずはこのルールを覚えておきましょう。
また、複合語のアクセントの位置は辞書で調べることも可能です。例えば、washing machineと辞書で引いてみてください。ほとんどの学習者向け英和辞典・英英辞典にはwáshing machìneのように強勢記号(アクセントを付ける位置を示す記号)が付いています。
左下に向かっている記号が第1強勢(最も強く読まれる)、右下に向かっている記号が第2強勢(第1強勢の次に強く読まれる)を表します。ぜひ参考にしてみてくださいね!
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この連載の著者、Salahさんはオンライン英語スクール「英語ジム らいおんとひよこ®」の代表を務めています。また、YouTube・note・英語ウェブメディアなどのSNSで英語学習全般についての情報を毎日発信しているのでぜひこちらもご覧ください!
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