英語の発音を奇麗にするために、英語ナレーターはどんなトレーニングをしているのでしょうか。日本で英語を学び、英語番組のナレーションを担当するまでになった俳優の宮本和歌子さんに、今回は「子音」の発音についてアドバイスを頂きます。
単語一つ一つを正しく発音することから始めましょう!
こんにちは、宮本和歌子です。大学卒業後、中学・高校の英語教員を経て、現在は舞台を中心に俳優として活動しています。以前、NHKワールドの番組に出演し、同時に番組のナレーションも担当させていただきました。NHKワールドは海外向けの放送局なので、番組は全て英語です。そのような番組で、帰国子女でもなく、海外居住経験もなく、ただただ日本で英語を勉強してきただけの私のような人間が、どのようにしてナレーションまで担当することになったのか、そのトレーニング法をお伝えしていきたいと思います。
前回は「母音」のトレーニングについてお話ししました。
今回は「子音」についてお話しします。
子音の発音を練習しよう
日本語には子音で終わる発音がないため、奇麗な英語が話せるようになるには、子音の練習が欠かせません。子音は24個あるといわれています。
私は子音の発音を上達させるために、早口言葉をよく練習していました。早口言葉は英語でtongue twisterですが、この表現からも舌がねじれそうな発音が想像できますね。ここで、発音を奇麗に変える早口言葉を幾つか紹介したいと思います。
/r/と/l/
/r/は、舌は口の中のどこにもくっつけません。唇を丸めて前に突き出して発音しましょう。/l/は、舌の先を上の歯の裏に強く押し付けるように発音しましょう。
Red lorry, yellow lorry.
(赤い大型トラック、黄色い大型トラック)
最初は舌の位置を確かめながらlorry だけ言ってみましょう。次にredとyellowを加えてゆっくり言ってみます。舌の位置が迷わなくなるまで練習しましょう。慣れてきたら文字を見ずに「赤い大型トラック」と「黄色い大型トラック」を想像しながら言ってみましょう。
/θ/と/f/
/θ/は舌を上下の歯で挟んで息を出す発音です。freeの/f/は上の前歯を下唇に軽く当てて、その隙間から強く息を出す発音です。
He threw three free throws.
(彼はフリースローを3回投げた)
最初は/θ/の発音をするときに、歯と舌の隙間から強く息を出すことに集中して、2秒くらいかけて発音してみましょう。舌の上を滑り出る息をしっかり確認できるようになったら、少しずつ速度を上げていきます。仕上げは文字を見ずに、実在する男性がフリースローを3回投げる場面を想像して、単語一つ一つを、発音とイメージを関連付けて言ってみましょう。
/n/
/n/の発音は、日本語だと「ン」に近いと思ってしまいがちですが、実は「ヌ」に近い発音になります。/l/の発音と同じように、しっかりと舌で歯の裏を押して出す音なので、「ヌ」のように聞こえるのです。
The rain in Spain stays mainly in the plain.
(スペインの雨は主に平野に降る)
これは1964年の映画『マイ・フェア・レディ』に出てきた有名な言葉です。「レイヌ」「イヌ」「スペイヌ」「メイヌリィ」「プレイヌ」などに近い発音になります。/n/が6回も出てきますが、最初は単語を一つ一つ区切って、/n/を発音するときの舌の位置を確認しながらゆっくり言ってみましょう。慣れてきたら、文字を見ずに場面を想像して丁寧に発音してみましょう。
「意味のある固まり」で区切って読む
強調したいところを強く言ったり、文法をすっきり整理したりすることができる「印」の使い方を取り上げます。
私は、ナレーターの仕事で英文を読むときは、読みやすいように必ず印を書き入れるようにしています。強く読むところ、単語をつなげて読むところ、ひと固まりを一気に読むところに印を付けて練習します。慣れてくると、初めて読む英文でも、どこを強く読めばいいのか、どの単語同士がつながるのか、だんだん勘が働いて分かるようになってきます。
●印の付け方の例
名詞や動詞は強く読む。➡〇で囲む
意味の固まりを一息で読む。➡( )で囲む
単語と単語をつなげて読む。➡下線を引く
次の英文を見てみましょう。ひと固まりで読むところは( )で囲んでいます(例文は『オーレックス英和辞典 』[旺文社]より引用)。
There is a gift (for you) (in the box).
(箱の中に君へのプレゼントが入っているよ)
for you とin the boxは、ひと固まりとして読みます。意味が通じる固まりを( )で囲むと、一息で読む固まりに意味を乗せて言えるので、相手に伝わりやすくなります。英文の意味を自分でしっかりと理解していないと、区切り方を間違えることがあります。そうすると、ネイティブスピーカーには奇妙な英語に聞こえてしまいます。
区切り方を間違えてしまうのは、文の構造を理解していないときに起こりやすいようです。そういう場合こそ、文法をもう一度確認すれば、正しい英語が身に付くきっかけにもなります。
「つながる音」にはパターンがある
単語と単語をつなぐように発音する場合があります。それは次の二つの場合がほとんどです。①子音で終わる単語のすぐ後ろに母音で始まる単語が続くとき。②子音で終わる単語のすぐ後ろにIやyouがあるとき。
つなげて読む単語と単語は下線でつなぎます。
I looked for the book for an hour.
(私はその本を1時間探した)
for an hourの「an」は子音で終わり、続くhourは母音で始まるので、つなげて発音します。1単語ずつ読むと、「アン・アワー」のようになりますが、anの「n」とhourの「hou」をつなげると「アナワー」のように聞こえます。
All you have to do is open your eyes.
(君がしなければならないことは目を開けることだけだ)
この英文でのつながりで注意したい箇所は2つあります。1つ目は、openとyour。2つ目はyourとeyesです。子音で終わるopenの後ろにyourがあるのでopenの「n」とyourをつなげて「オープンニュア」のようになります。また、yourの「r」(子音)と eyesの「e」(母音)がつながって「オープンニュアライズ」のように発音します。
声に出して発音チャレンジ!
1つの文中で大事な部分に印を付けることを先に説明しましたが、丁寧に伝えたいと思う部分は必ずしも1つでなくて構いません。2つ、3つあっても大丈夫です。「大事な単語」「つながる音」「意味のひと固まり」をそれぞれ見つけてみましょう。あなたは、次の英文をどのように読みますか?
She laughed with relief when she found her child sleeping in the closet.
(わが子が押し入れの中で眠っているのを見つけて、彼女はほっとして笑った)
私は、次のように読みました。
(She laughed with relief) (when she found her child (sleeping in the closet)).
まず、意味の固まりとしてwhenの前までを1つ目の固まりとして( )で囲みます。そして、when以下を2つ目の固まりとして( )で囲みます。さらに、sleeping in the closetもひと固まりに( )で囲みます。強く発音する単語は、前半のlaughedとrelief。そして、後半のfound、child、sleeping、closetです。
以上が私の発音練習法です。単語の発音記号を調べ、正確に発音できるよう練習し、文を読むときは、どこを強く読むか、つなげるかを意識します。そのように練習していくうちに、自然とうまく音読できるようになります。そして、会話のときにもそれが役立つでしょう。
写真:山本高裕(ENGLISH JOURNAL編集部)
※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2022年4月号に掲載している記事を再構成したものです。
「母音編」の記事はこちらから
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