TOEICスコアアップ200点請負人の Jay(ジェイ)こと早川幸治さんの連載「早川幸治の気ままにTOEIC」。長年にわたりTOEICテストに関わる中で見たこと、感じたことを気ままにつづります。今回は「TOEICに登場する場面は2種類だけ」というお話です。
何ごとも「手を抜く方が疲れる」とは?
こんにちは。早川幸治です。ニックネームはJayです。
これまで全国の企業や大学でTOEICスコアアップのお手伝いをしてきました。また、TOEIC教材を作ったり、ポッドキャスト「Jayの英語スキルブースター」を配信したり、11年にわたって毎日英語フレーズメルマガ「ボキャブラリーブースター」を配信したりしています。
今回から、つれづれなるままに、TOEICにまつわるお話をお届けします。TOEICが「遠い苦」な方にとって、少しでも「身近で楽しい」ものになれば、うれしいです。
TOEICを受験していると気付くかもしれません。
「トラブルばっかり起こるなあ」
コピー機が壊れる。在庫がない。注文したものと違うものが届く。騒音があるから別の仕事場をあてがわれる、などなど。
「さらに、変更ばっかりだなあ」
歯医者の予約、契約プラン、供給業者、会社のロゴ、などなど。
そうなんです。ドラえもんにとっての「タケコプター」と「どこでもドア」のように、「トラブル」と「変更」はTOEICのツートップです。ちなみに、習慣化できないツートップが「英語学習」と「ダイエット」です。
TOEIC学習において、欲しいドラえもんの秘密道具のツートップは「翻訳こんにゃく」と「暗記パン」ですね(笑)。そんなタヌキ、いや、手抜きを考えるとますます学習が嫌になってしまうので考えないようにしましょう。キムタクが言ったこんな言葉があります。「手を抜く方が疲れる」。英語学習も同じです。伸びれば伸びるほど、英語を聞いたり読んだりするのが楽になります。
さてさて、話を戻すと、TOEICにおいてはトラブルが起こらないなんてことはなく、変更が起こらないなんてことはないのです。とはいっても、「人生にトラブルは付きものです!」といった人生論がそこにあるわけではありません。
そもそもTOEICって何?
ところで、TOEICは何の略かご存じですか?
なんとなく受験していると、「英語のテスト」という感覚しかないかもしれませんが、TOEICは「Test of English for International Communication」の略で、主にビジネスで使われている英語が出題されています。そして、T・O・E・I・Cという5文字の中で最も重要なのはCの「コミュニケーション」なのです。
コミュニケーションが行われるためには、コミュニケーションのためのネタが必要です。トラブルや変更とは、そのネタなのです。
例えば、コピー機が壊れていなければ、特にコピー機の話はしません。注文した商品が普通に届いたら、特に何も思いません。「コピー機が壊れている」からこそコミュニケーションが始まるきっかけとなり、注文した商品が届かないからこそ「届かない」という問題を伝える必要性が出るのです。変更についても、「変更する必要がある」からこそコミュニケーションが発生します。
TOEICに登場する場面はたったの二つ
TOEICに出てくるコミュニケーションのネタとは、大きく分けると二つです。
1つが「問題解決」です。コピー機が壊れている場合、問題が放置されて終わることはありません。必ず解決に向かいますよね。解決とは、コピー機を修理することかもしれませんし、別の機械を使うことで無事にコピーを取ることかもしれません。いずれにしても、問題が起こったら、解決に向かうのです。
在庫がないという問題が発生した場合は、注文したり別の店に行ったりと、手に入る方向に話は進みます。そもそもPart 3の会話で、「在庫がない」に対して「あ、そうですか」と店を出てしまったら、会話がすぐに終わってしまい設問を3問も作れないですから(苦笑)。
そして、コミュニケーションのネタの二つ目が「情報提供」です。例えば、分かりやすいのがadvertisement(広告)やnews report(ニュース)です。伝える側は情報を持っていて、伝えられる側は情報を持っていないという「情報のギャップ」が存在しています。このギャップを埋めるために、コミュニケーションとしての情報提供が行われるのです。
会話の場合も、「情報を持っていない人に情報を伝える」という情報提供もあれば、意見交換のような情報提供もあります。いずれにしても、2人または3人の間で情報のギャップがありますね。
全問題の8割が「問題解決」と「情報提供」
Part 2(応答問題)では、質問や報告から始まります。自分は知らないから質問をするわけですし、相手が知らないから報告をします。Part 3(会話問題)は問題解決と情報提供です。Part 4(説明文問題)は情報提供です。Part 7(読解問題)も読むのが大変ですが、全て問題解決と情報提供に関する内容です。さらに、Part 6(長文穴埋め問題)の内容も問題解決と情報提供なのです。
なお、Part 1(写真描写問題)とPart 5(短文穴埋め問題)はどちらでもありません。よって、Part 1の6問とPart 5の30問の合計36問は、問題解決と情報提供に関するものではありませんが、その理由は、この2つのパートではコミュニケーションの理解が問われているわけではないからです。それ以外の5パート(164問)ではコミュニケーションの理解が求められているため、登場する内容は問題解決と情報提供なのです。
ということは、TOEICにおいて学ぶべき英語は「問題解決」と「情報提供」に関するものが主となります。そのため、依頼や提案が多くなります。設問にもWhat does the woman ask the man to do?(男性は女性に何をするよう頼んでいますか?)や、What does the speaker suggest doing?(話し手は何をすると提案していますか?)のようなものが多く登場します。
なお、設問で問われていなくても依頼や提案は頻繁に登場します。そして、異なる場面であっても話の展開が似たような流れになることが多くあります。「機械が壊れている場合」と「商品の在庫がない場合」の話の展開は似ています。アニメ「ドラえもん」の話の展開も、内容や道具は異なっていても、話の展開は似ていますね。アニメ「アンパンマン」も、登場人物が変わっても話の流れは似ています。抽象化させて考えると、TOEICにおいても同じような話が繰り返し出てくるのです。
TOEICは実際のコミュニケーションとよく似ている
ちょっとここで過去1週間のコミュニケーションを振り返ってみてください。仕事において日本語でコミュニケーションを取った内容は、問題解決と情報提供に関するものではありませんか?依頼や提案も結構多かったのではないですか?
ただの「面倒くさいテスト」としてTOEICを毛嫌いしていた方も、少し身近に感じられたのではないでしょうか。「なんか嫌なやつ」だと思っていたあの人も、ひょんなことがきっかけで、いろいろ話して知っていくうちに「意外といいやつ」だったということも少なくありません。TOEICはあなたを苦しめるテストではなく、あなたの未来を開いてくれる秘密道具になるかもしれませんよ。
そして、最後におまけのお話を。
近年、マインドフルネスがはやっていますね。なんと、TOEICの学習をしていると、ストレス耐性も高まります。実生活においてもトラブルは付きものです。電車が遅れたり、荷物の配送が遅かったり、注文と違う料理が届いたり。しかし、今日以降、そういうことが起こった場合には、一瞬イラっとしますが、すぐに「おっと、リアルでもTOEICの世界に愛されているなあ」と感じることでしょう。するとイライラがすーっと収まり、マインドフルな状態を維持できるのです。TOEICはメンタルヘルスにもとってもよい効果がありますよ。多分。
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写真(1枚目とプロフィール写真):山本高裕(編集部)
Image by Ronald Carreño fromPixabay
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