「よろしくお願いします」「いつもお世話になっております」はなんて言う?ネイティブがよく使う英語ビジネスメールの慣用句

ビジネスメールでよく使われる慣用表現「(これから)よろしくお願いします」「いつもお世話になっております」。このような慣用表現のニュアンスを英語ビジネスメールで伝えるにはどうしたらよいでしょうか。経営コンサルタントのロッシェル・カップさんが、正確かつ明確にメールを書くコツや便利な英語表現を解説します。

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書けそうで書けない、英語ビジネスメールお決まり表現

日本語でメールを書くとき、多くの場合、「いつもお世話になっております」などの決まり文句を使います。では、英語のメールを書くときはどうでしょうか?

日本語の慣用句をそのまま英語に訳せばいいのでしょうか?あるいは難しいのでギブアップした方がいいのでしょうか?

この連載の最終回では、英文ビジネスメールにおける慣用句について考えます。

慣用句を英訳するための重要なポイント

「よろしくお願いします」や「いつもお世話になっております」など、メールを書くときに使う日本語のお決まり表現はたくさんあります。

このような表現に完全に合致する英訳が存在しないことも多くあります。なぜなら、これらの表現は曖昧である傾向が強く、一つの表現でも複数の意味に解釈することができるからです。そのため英語に訳すときは、まず何を伝えたいのかを考えて、それにマッチする英語表現を選ぶ必要があります。

例として、「よろしくお願いします」を考えてみましょう。ある日系企業とアメリカ企業との間で起こった訴訟について、友人から興味深い話を聞いたことがあります。その訴訟における重要な証拠の一つは、日本語で書かれたある文書でした。その文書の最後は「よろしくお願いいたします」で締めくくられていたのですが、その言葉の意味をめぐって、裁判所で1日中討論が続いたそうです。

一方はこう主張しました。「それは日本語の手紙における礼儀の一つで、特別な意味はない」。もう一方はこう言い張りました。「いやいや、それは直接的な依頼を意味するんだ。『よろしくお願いいたします』は違法行動を依頼した証拠です!」。

残念ながら、この裁判の結末までは知りません。しかし、このシーン、なんだか想像がつきますね。日本語の「よろしく」という表現は曖昧であり、状況によって違う意味を持つ上、英語でその表現に完全に相当する言葉が無いからです。

「よろしくお願いします」の英語表現

日本語の「よろしく」の雰囲気を伝える英語表現を、目的別に確認してみましょう。

まずは自己紹介の際に使う「よろしくお願いします」。これに近い意味合いを持つ英語表現はこれです。

I’m looking forward to working with you.
これから一緒に働くことを楽しみにしています。

何かを依頼するときの「よろしく」は、こんな表現を使うといいでしょう。

Thank you in advance for your assistance.
あなたの手助けに前もってお礼申し上げます。

お世話になった人や協力してくれた人に対して使う「今後ともよろしく」に相当する表現には、このようなものがあります。

I’m looking forward to continuing our good relationship.
私たちのの良好な関係が続くことを楽しみにしています。

最後に、特に意味があるわけではない、儀礼的な「よろしくお願いします」の場合です。これは手紙の最後に使うことが多いですね。英語の文書の場合、このような表現を使う必要は特にありません。

しかし、手紙やメールの最後に

Thank you again.
重ね重ねありがとうございます。

と付け加えることがよくあります。感謝の言葉で手紙を結ぶことは、どちらの文化でも有効でしょう。

「いつもお世話になっております」の英語表現

次に、「いつもお世話になっております」を考えましょう。

これをあえて英訳するなら、Thanks always for your support.のような感じですが、実際にはこのような表現でビジネスメールを始めることはあまりないので、とても不自然な印象を与えます。

もしメールの内容が依頼であれば、こんな感じの表現が考えられます。

I always appreciate your help with my requests, and I have another one for you today.
私の依頼に対するあなたの手助けにいつも感謝しています。今日は、更に依頼することがあります。

しかし、上記のような状況でない限り、「いつもお世話になっております」のようなことを無理に書こうとしなくてもいいと思います。

日本語の決まり表現をそのまま英訳しようとするよりも、英語メールでよく使われている決まり表現を使った方がいいかもしれません。そうすれば、自然な英語を使っているという自信を持つことができます。

ネイティブがよく使うビジネスメールの英語表現

Thank you for ~.

英語メールのスタートによく使われます。相手の行動(今回あるいは過去)に対して感謝を述べる、丁寧な表現です。下記のように、さまざまな状況で利用できて便利です。

Thank you for your inquiry.
(商品などに関する)お問い合わせありがとうございます。

Thank you for attending our webinar yesterday.
昨日は当社のウェビナーにご参加いただきありがとうございました。

Thank you for your prompt reply.
早速のご返信ありがとうございます。

Thank you for contacting us about ~.
~について当社にご連絡いただきありがとうございます。

Sorry ~.

日本人はSorryを使う頻度が高過ぎるとよく言われますが、実は英語ネイティブもSorryで始まる文章をメールの冒頭で頻繁に使います。ここでいくつかよく使われる例を紹介します。この中には日本語の慣用句表現と似たものもあります。

Sorry it’s been so long since I’ve been in touch.
ご無沙汰してしまい申し訳ございません。

Sorry it took me so long to get back to you.
返事が遅れてしまい申し訳ございません。

Sorry to you out of the blue, but ~.
突然の連絡で恐縮ですが~。

Sorry to bother you again so soon.
度々すみません。

Sorry, in my last email I forgot to mention that ~.
ごめんなさい、先程のメールで言うのを忘れていましたが~。

I am writing to you ~.

なぜメールを出しているかを紹介するためのフレーズです。その後にabout、with、in connection with、regardingやbecauseを付けて、連絡している理由や目的について説明をします。I am contacting you ~.あるいはI am getting in touch with you ~.も同じ意味で使えます。

I am writing to you about your advertisement in today’s newspaper.
御社の今日の新聞広告について連絡をしています。

I am writing to you with a request to give a lecture.
講演依頼の件で連絡いたします。

I am writing to you in connection with the Harris project.
ハリスプロジェクトについて連絡しています。

I am writing to you regarding your letter to our customer service department.
当社のカスタマーサービス部についての、あなたの手紙について連絡しています。

I am writing to you because I am interested in learning about your company’s services.
御社のサービスについて知りたいので連絡をしています。

この記事で紹介した英語の決まり表現を積極的に使えば、あなたの英語メールも自然な印象を与えることができると共に、効果も上がるでしょう。

Rochelle Kopp(ロッシェル・カップ)
Rochelle Kopp(ロッシェル・カップ)

1964年、アメリカ、ニューヨーク州生まれ。シカゴ大学経営大学院修了(MBA)。ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社社長。専門は異文化コミュニケーション、グローバル人材育成、人事管理、リーダーシップと組織活性化。著書に『反省しないアメリカ人をあつかう方法34 (アルク はたらく×英語シリーズ)』(アルク)、『[音声DL付]英語の品格 実践編』(アルク)など多数。

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