濱崎潤之輔さんと星名亜紀さんの交互執筆連載!通勤電車の中で、バスを待っている間に、寝る前の時間やお昼休憩、家事の合間に・・・。忙しい中でもなんとか時間を見つけてTOEIC(R)L&Rテストのスコアアップを目指したい人のための学習法を紹介します。第8回では濱崎さんが、「文法・リーディング力」を伸ばすための公式問題集活用法を解説します。※記事の情報は2021年8月2日現在のものです。
公式問題集を全冊制覇しよう
(日本では)過去問題集の存在しないTOEIC L&Rテスト(以下TOEIC)ですが、その代わりとなる「公式問題集]があります。
現在の形式のTOEICは2016年の5月29日に始まり、公式問題集は『TOEICテスト公式問題集 新形式問題対応編』から最新の『公式TOEIC Listening & Reading 問題集 9』まで出版されています。
1冊に付き2回分(合計400問)の、本番同様のテストが収録されているため、すべてを買い揃えたとすると合計16回分のテストに取り組むことができます。
満点を狙うのであれば、すべて購入し3,200問を完璧にモノにするとよいでしょう。
古いものは問題の傾向に注意
ただし、初期の公式問題集と最新版のものとでは、掲載されている問題の傾向がだいぶ変わってきています。
最新の傾向に沿った問題を使って学習したいのであれば、最新のものからさかのぼって使っていくことを強くおすすめします 。
問題形式こそ同じではありますが、TOEICは毎回の公開テストを経る過程において小さなアップデートが積み重ねられています。そのため、2016年当時の公開テスト、ひいては当時の公式問題集の内容と最新の公開テストの内容には大きな乖離ができてしまっているのです。
今の形式のテストになって5年が経つのですから、まあ当たり前と言えば当たり前のことなのですが、このことを知っているのと知らないのとでは、わずかではありますが差が出ます。
例えば、刊行時期が最も古い『TOEICテスト公式問題集 新形式問題対応編』のPart 7(読解問題)のトリプルパッセージ(3つの文章を読んで答える設問)では、最初の問題を解くために3つ目の文書まで読まないと解答することができない問題を含むセットが存在します。
今後どうなっていくかは分かりませんが、最新の公開テストではそのようなタイプの問題は出題されていません。最初の問題は1つ目の文書だけを読めば解答できるものが多く、2つ目の文書まで読まなければ解答することができない問題が少々、3つ目の文書まで読まなくては解答できないような問題は出題されていないのです。
また、2016年からの「新形式」のTOEICでは、Part 3の会話問題、Part 4の説明文問題で「言い淀み」や「カットイン(相手が話している最中にもう1人が割り込んでくる)」、そして「より口語的な表現」を盛り込むこととなったため、『TOEICテスト公式問題集 新形式問題対応編』ではそれらが顕著に登場する作りになっていました。
今の公開テストでは当時ほどそれらが登場することはなくなり、むしろほとんど気にする必要はなくなりました。
公式問題集はどの順番で取り組むべきか
『TOEICテスト公式問題集 新形式問題対応編』から『公式TOEIC Listening & Reading 問題集 3』に至るまでに徐々に現在の形式に近いものへと変化していき、『公式TOEIC Listening & Reading 問題集 4』以降の公式問題集は、ほぼ現在の公開テストの出題傾向と一致していると言っていいでしょう。
まずは問題を解いて「知識の穴」を埋める
公式問題集を購入したら、まずは本番さながらに解答し、丸付けと復習を行います。
いわゆる「上級者」の域にいる、990点を狙うレベルの方だと、「リスニングでは満点を取れるけれど、リーディングではどうしても満点が取れない」という状態の方が多いです。
文法や語彙の知識に関しては自信がある、それでも満点が取れないという時期が僕自身にもありました。
なぜ満点が取れなかったのか。
それはやはり知識に穴があったからです。
満点を取れるようになる直前期は、大学受験用の文法参考書を使って、文法知識の穴を埋める学習にも取り組みました。
なかなか満点に届かない人は、知識の漏れを埋めるための学習を手広くやる必要があります。文法を網羅している参考書をしっかり読んで、抜けがないかを一通り確認していくのです。文法書を1冊カバンの中に常に入れ、移動中に時間ができたときはすぐに出して読むようにすることをおすすめします。
何度も復習して全問正解を目指す
あとは、毎日、模試を最低でも1セット(1回分)は解くことが肝要です。
例えば500~600点の域にいる方が毎日1セットの模試を解くのは大変ですが、満点を目指せるくらいのレベルの方であれば、間違える問題や知らない単語が少ないので、復習にもそれほど時間はかかりません。
むしろ、電車の中などの移動時間、スキマ時間だけでできるレベルにいるはずです。
知らなかった単語やフレーズに線を引いて意味を書き込んでおく。
正解の根拠が書かれている箇所を理解し、次回以降の問題演習時には決して間違えないようにしておく。
問題を1度解いて復習もして、「もう完璧に理解できた」と思っていても、数日後に同じ問題をもう1度解いたらなかなか全問正解することができない、という経験をした方は多いはず。
そのような復習が非常に甘い状態で、新しい問題をどんどん解いていくという方法は決しておすすめできません。
同じ模試を解くのが2回目であれば、当然のように全問正解する。
2回目以降は「全部聞いて全部読む」、これを「日本語を介さずに完璧に達成する」ことを目標にするのです。
「全部聞いて全部読む」ことができれば、自ずとすべての問題に正解することができるはずだからです。
僕はこれまで、公式問題集を何度繰り返し聞いたか、何度繰り返し読んだかわかりません。おそらく地球上の誰よりも読み、理解し、説明することができると自負しています。問題を制作したETS、日本で公式問題集を制作した編集者たちの誰よりも「全てを」聞き、読んだのではないかと思います。
満点を獲得したいのであれば、「1冊の模試を数回やりました」では言語道断、お話になりません。
全部聞いて全部読み、そして全部を理解できていますか。
この質問に胸を張って「はい、できます」と答えられたときが、その本を卒業する資格を得たときなのです。
TOEIC対策情報は取捨選択が必要
今はネットで検索すれば、TOEIC対策の勉強方法がたくさん出てきます。
ただ、どんなバックグラウンドの人が発信している情報なのかをきちんと自分で確認して、情報を取捨選択することが非常に重要です。
きちんと勉強を続けてきた人が発信する情報は、そうではない人の発信するものと比較すると精度が全然違います。
毎回受験し、満点を取ったことがあるか。
TOEICに対して真摯な気持ちを持って取り組んでいる人なのか。
昨今のTOEICはコロナ禍前に比べて平均点が上がり、問題の難易度も格段に上がってきています。
ネット上でも「満点を取った」と公言している人の数が心なしか減っていているような気もしますが、情報を発信している人がたとえ満点を取っていなかったとしても、TOEICに対する真摯な気持ち、謙虚に研究している思いを感じられる人の情報を信用すべきだと僕は思います。
しっかりとしたソースを参考にして勉強していただければと思います。
次はあなたの番です
僕は元々、TOEIC対策や英語を教える先生になろうとは思っていませんでした。
学習者時代にTOEIC対策についてブログで発信していたところ、語学専門の出版社からスカウトしていただいて編集者になり、韓国でも有名なイ・イクフン先生のTOEIC対策書籍の編集を担当するようになりました。
TOEICで満点を取ってからは、セミナーのオファーや本を執筆する機会もいただけるようになりました。
TOEICのおかげで今の環境や立場をつくれたので、感謝しかありません。
TOEIC対策を頑張っている人には、僕がこれまで享受できたことを還元していけたらという想いを常に持っています。
「この人に教われば大丈夫」と信頼してもらうためには、学習者の方の何倍もできるレベルでいなければいけません。
最新の出題傾向を常に把握するためにも、TOEICは毎回受けますし、満点も取り続けるようにしています。
皆さんも頑張っていきましょう、応援しています。
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