「TOEIC」といえば「TOEIC L&Rテスト」が有名ですが、スピーキング力やライティング力を測る「TOEIC S&Wテスト」も英語学習に役立つのをご存じですか?「どんなテストなんだろう?」「何点くらい取ればいいの?」など、さまざまな疑問にお答えします。
※本記事中の「TOEIC S&W」は「TOEIC(R) Speaking & Writing Tests」を指します。
目次
TOEIC S&Wの受験メリットからおすすめ教材まで
皆さん、こんにちは。企業向けにビジネス英語の研修を提案・企画、実施しているQ-Leap株式会社代表の浅場眞紀子です。私たちの研修では、ビジネスシーンでのアウトプット力を伸ばすことを中心に指導をしています。
その指導の中でも、TOEIC S&Wのようなアウトプット型テストを使ってトレーニングする機会は大変多いです。私自身も学習者としてTOEIC S&Wを含むスピーキング試験を継続的に受験して自分のアウトプット力を測り、常に向上するように努めています。同時にスピーキングテストにおける問題傾向を研究し、日本の学習者に効果的なトレーニング方法を考案し、実際の研修やレッスンに反映しています。
この記事を執筆するに当たり、2021年6月のTOEIC S&Wも受験しました。コロナなどもあって前回の受験から少し時がたってしまいましたが、問題傾向などに大きな変更はなく、TOEIC S&Wでハイスコアを得るためのコツや押さえるべきポイントを再確認できました。
ところが、その直後にTOEIC S&Wを運営するIIBC(国際ビジネスコミュニケーション協会)からのアナウンスがあり、 2021年8月実施のテストよりスピーキングテストのQ10 「解決策を提案する問題」が廃止され、その代わりにQ1の写真描写問題が1問増えて2問になる ということがわかりました。ライティングテストの変更はありません。この変更の意味については「【設問別】テスト対策でカギになる力とは?」のQ10の解説で詳しくご説明します。
記事の執筆後に驚きのニュースが飛び込んできたものの、今回は、これからTOEIC S&Wを受けてみようかと考えている読者の方に向けて、 受験するメリットや学習方法について解説 していきたいと思います。
まず、そもそもTOEIC S&Wとはどんなテストか、基礎情報をまとめます。
TOEIC S&Wの基礎情報
正式名称
正式名称は「TOEIC(R) Speaking & Writing Tests」で、おなじみのTOEIC L&Rテストのスピーキング、ライティング版です。実際の日常生活やビジネスシーンにまつわる問題が出題されます。
テスト内容と配点
スピーキングが約20分、ライティングが約60分、計約1時間20分のテストです。
会場にあるPCとヘッドセットを使って受験します。配点は、スピーキング・ライティングともに200点ずつ、計400点満点です。
なお、2016年より スピーキングテストのみを独立して受験することもできる ようになりました。スピーキングテストだけの場合、時間も短いですし、気楽に受けられそうですね。
受験会場
東京・名古屋・大阪など、全国主要都市で受けることができます。ただ、TOEIC L&Rテストよりは会場数が少なめなので、申し込み前に最寄りの会場を確認しましょう。人気の会場は早めに席が埋まってしまうこともあります。
会場の環境はさまざまなので、何カ所か試してみて自分が落ち着いて受験できる環境を選ぶことも大事ですね。私もいつもお気に入りの会場で受験しています。
申し込み方法と受験料
インターネットからのみ申し込めます。申し込みページは こちら 。
受験料は1回10,450円(税込)です。
申し込み締め切り後に空席がある場合、締め切り日の翌営業日から期間限定で追加申し込みの受け付けがあります。この期間中の申し込みは、13,200円(税込)と通常より少し高くなります。TOEFLほどではありませんが、受験料が比較的高めのテストですので、しっかり準備して臨みたいですね。
開催頻度
毎月1回、日曜の午前・午後に1回ずつ実施されています。
結果の通知
テスト終了後、約30日以内に「Official Score Certificate(公式認定証)」が受験者に郵便で届きます。申し込み時に「テスト結果インターネット表示:利用する」を選択すると、試験後約17日後にインターネット上でスコアを確認できます。
スピーキングはレベル1~8の8段階、ライティングはレベル1~9の9段階で「能力レベル」が評価されます。さらに、スピーキングについては、「Pronunciation」(発音)と「Intonation and Stress」(イントネーションと強勢)についても、それぞれ3段階で評価されます。
TOEIC L&Rのスコアもお持ちの場合、IIBC のHPからマイページにログインすると、自分の4技能のチャートを見ることができます。
TOEIC L&Rのスコアが800点以上(リスニングが375点以上かつリーディングが425点以上)、TOEIC S&Wのスコアがスピーキング160点以上かつライティング170点以上という基準をすべて満たすと、「 IIBC AWARD OF EXCELLENCE 」という、4技能が一定以上の能力であることをたたえる賞がもらえます。
私も受賞しています。皆さんもぜひこの賞を目指して努力してください!
TOEIC L&Rテストとのスコア対照表
「TOEIC L&Rは受けたことがあるけれど、TOEIC S&Wは受けたことがない」という方は、以下の対照表をご参照ください。
相関表は絶対ではありませんが、自分の実力がほかのテストではどの程度なのか、およそのレベル感を知りたい方にはとても重宝します。
CEFR 1 | TOEIC Listening | TOEIC Reading | TOEIC Speaking | TOEIC Writing* |
---|---|---|---|---|
C1 | 490点~ | 455点~ | 180点~ | 180点~ |
B2 | 400点~ | 385点~ | 160点~ | 150点~ |
B1 | 275点~ | 275点~ | 120点~ | 120点~ |
A2 | 110点~ | 115点~ | 90点~ | 70点~ |
A1 | 60点~ | 60点~ | 50点~ | 30点~ |
S&Wは何点くらいを目標にすればいい?
これは個人の目的と現状のレベルによるので一概には言えませんが、おおよそ下記のように設定できます。
旅行や気楽な英会話でそれなりに意思疎通したい人
スピーキングとライティングでそれぞれ 120~140点くらい のレベルであれば、日常や旅行の場面でもある程度のコミュニケーションはできると思います。
仕事で英語を使いたい人
ビジネスでなんとか使えるレベルは、 スピーキング、ライティングそれぞれ150点以上 でしょう。英語でのコミュニケーションをある程度円滑にしたいと考えるビジネスパーソンの方は、まず150点が取れるよう頑張ってください。 IIBCのページ で150点くらいの人のスピーチサンプルを聞くことができます。
その後、スキルを磨いて 170点以上取れると理想的 ですね。かなり安定感があると思います。ビジネスで英語を使う場合、CEFR B2 [*2]のレベルが必要と一般的に言われていますので、TOEIC S&Wでは160~170点のレベルを目標にするべきでしょう。
英語指導者
英語の指導者になりたいと考える人であれば それぞれ最低170点、できれば180点以上 が望ましいでしょう。
受験するメリットは?
日本のように英語が第二言語環境(=学習言語が使われている地域で学ぶ環境)ではなく、外国語環境(=外に出ても誰も英語を話していない環境)にある英語学習者にとって、 アウトプット力を効率的に伸ばすのに最も適している のは、スピーキングやライティングテストに向けた学習と受験だと考えています。
私自身も英検1級、TOEIC S&W、VERSANT Speaking Test、TOEFL、IELTS、BULATS(ブラッツ)*3、そしてケンブリッジ英検(CPE)とありとあらゆる4技能型のテストで自分のアウトプット力を試し、伸ばしてきました。
一般的なスピーキング・ライティングテストのメリット
テストで求められる能力を磨くことでスコアを上げられるので、 スピーキング力、ライティング力を「なんとなく」ではなく「具体的に」向上させることができます 。
オンライン英会話なども発話の経験を多く積めてとてもよいのですが、利用者の側がしっかりと目的意識を持っていないと、利用者のレベルに合わせた単なる「会話」になってしまい、なかなかレベルアップを感じられないという場合もあるでしょう。
オンライン英会話に加えてスピーキングやライティングなどのアウトプットのテストを学習に組み込むことで、発音、語彙、文法、英語のロジック、流ちょうさなどを鍛えることができます。
TOEIC S&Wテスト受験のメリット
ビジネスシーンでのアウトプットに必要な基本スキルを習得できる
TOEIC S&Wは、TOEIC L&Rと同様に、一般的なビジネス環境で求められるアウトプット能力を測るテストです。そのため、TOEIC S&Wの対策をすることで、相手が理解しやすいように話す、正確に描写する、与えられた内容を簡潔にまとめる、メールを迅速に書くなど、 ビジネスシーンで英語を使って対応する際の基本的なスキルを習得できます 。
音読から意見を述べるところまで、段階を踏みながらアウトプット力を伸ばせる
TOEIC S&Wは、スピーキングでもライティングでも、短い問題から始まりだんだん長い問題になっていきます。また内容面でも身近な内容からより抽象的な内容へ、そしてスキル面でも単純にアウトプットするものからインプットに対する応答としてのアウトプットへというように、 段階を踏んで難度が上がる設計 になっています。
「TOEIC S&Wに挑戦するにはまだまだ力が足りないかもしれない」と思う人も、まずは短いアウトプットを求められる問題から始め、徐々に力を付けながらより難しい問題に挑戦していくことで、アウトプット力を伸ばしていくことができます。
問題の構成とその意図する内容が、学習者にアウトプット上達への道筋を見せてくれる テストだと言うことができるでしょう。
TOEIC L&Rで習得したインプット力をアウトプット力に転換できる
TOEIC L&Rである程度のスコアを取得した後にTOEIC S&Wを受けてみようと思われる方は多いと思います。
私の著書『 TOEICテストスピーキング/ライティング総合対策 』(旺文社)でも、はっきりと「まずL&Rテストで600点以上を取ってからTOEIC S&Wの準備に入りましょう」と書きました。
アウトプットはインプットがなければできません。ましてやビジネス環境のテストでは、適切な語彙や表現、論理 展開などの知識がある程度なければ、チャレンジしても時間の無駄でしょう。
インプットがあればあるほどアウトプットでの成長のポテンシャルは高くなる ので、TOEIC S&Wに取り組む前、または取り組みながら並行してTOEIC L&Rテスト対策のようなインプットベースの学習を行うことをおすすめします。
それによって習得したリスニング力、読解力、語彙知識などをそのままTOEIC S&Wのようなアウトプット力を測るテストに応用していくことができるでしょう。
TOEIC L&RとTOEIC S&Wに関しては、どちらの問題も同じテスト制作機関(ETS)が作っていますので、似たような場面、似たような表現が使われていることも多く、両方のテスト準備をすることで4技能を鍛え、英語の総合力を上げることができると考えています。
TOEIC の認知度が高いので、資格として評価されやすい
TOEIC S&Wスコア取得のメリットとして、TOEIC L&Rテストの認知度の高さがあります。
コロナの影響で2020年の受験者数は160万人程度と大幅減でしたが *4、通常であれば200万人以上の受験者がいるTOEIC L&Rテストは、多くの企業で英語力のベンチマークとして使われています。
同じTOEICの名を冠するTOEIC S&Wも、ほかのアウトプット力を測るテストに比べると認知度はかなり高いと考えられますので、アウトプット力の証明としてスコアを持っておくメリットはあるでしょう。
問題の形式と構成
スピーキング
スピーキングの問題には以下の6種類があり、計11問出題されます。PCに向かって、ヘッドセットのマイクを使って答えます。
1. 音読問題(2問/Q1-2)
画面に表示されるアナウンスや広告などの 短い文章を音読します 。準備時間、解答時間は1問につき45秒ずつです。
発音やイントネーション、強勢が評価されます。
*2. 写真描写問題(1問/Q3)
※2021年8月 実施テスト以降2問に変更*写真を見て、できるだけ詳しく内容を説明します 。7月実施のテストまでは、答えを考えるための準備時間が45秒、解答時間が45秒です。 8月からのテストでは、写真描写問題は2問となり、解答時間が45秒から30秒に短縮されます。
発音やイントネーション、強勢に加え、文法や語彙、発言の一貫性が評価されます。
3. 応答問題(3問/Q4-6)
身近な問題についてのインタビューに答える、電話に答えるなどの設定で、「あなたは普段どれくらいテレビを見るか」など、 受験者に対する短い質問が読まれます 。1問につき答えを考えるための準備時間が3秒あり、15秒または30秒の制限時間内に解答します。
発音、イントネーション、強勢、文法や語彙、発言の一貫性に加え、内容の妥当性や完成度が評価されます。
4. 提示された情報に基づく応答問題(3問/Q7-9)
新聞広告など、 提示された資料や文書に基づいて設問に答えます 。
まず画面に文書が表示され、読んで理解するための時間が45秒与えられます。続いて、新聞広告を読んだ客からの問い合わせなど、文書に関する質問が音声のみで流れます。1問につき答えを考えるための準備時間が3秒あり、解答の制限時間は15秒または30秒です。
評価基準は「応答問題」と同じです。
*5. 解決策を提案する問題(1問/Q10)
※2021年8月実施テスト以降廃止*
「ATMからクレジットカードが出てこなくて困っている」といったメッセージなどが読まれます 。画面には、「問題への対処方法を提案すること」など、解答の方針のみ表示されています。音声を聞いて45秒で答えを準備し、60秒の制限時間内に答えます。
評価基準は「応答問題」と同じです。
8月実施のテストよりこちらの「解決策を提案する問題」はなくなります。
6. 意見を述べる問題(1問/Q11)
「給料は低いが休みの多い仕事に就くことについてどう思うか?」など、あるテーマについての質問が読まれます 。質問は画面上にも表示されます。30秒で答えを準備し、60秒の制限時間内に自分の意見とその理由を述べます。
評価基準は「応答問題」と同じです。
ライティング
ライティングの問題には以下の3種類があり、計8問出題されます。回答はPCのキーボードを使って入力します。
1. 写真描写問題(5問/Q1-5)
画面に写真と使用する2つの語もしくは句が表示されます。これらの語(句)を使って、 写真の内容を描写する1文を作成します 。解答の制限時間は5問で8分です。
文法や、写真と文章の関連性が評価されます。
2. E メール作成問題(2問/Q6-7)
解答の制限時間は1問につき10分です。25~50語程度のEメールを読み、 返信のEメールを作成します 。画面にはEメールと併せて「返信で少なくとも2つの質問を含めること」など返信の方針が表示されます。
文章の質と多様性、語彙、構成が評価されます。
3. 意見を記述する問題(1問/Q8)
画面上に表示される「職を見つけるのに最適な方法はなんだと思うか?」などの質問に対して、 理由や具体例を含めて自分の意見を書きます 。解答の制限時間は30分です。
理由や例を挙げて意見を述べているかどうかや、文法、語彙、構成が評価されます。
【設問別】テスト対策でカギになる力とは?
スピーキング
Q1-2 音読:テキストを伝わりやすい正しい音に変換する力
英語の正しい音が出せるか、意味に即したイントネーションの理解と実践ができているか、英文の意味と目的を理解して読むことができているか、意味の固まりを意識して操作できるかなど、テキストを伝わりやすい正しい音に変換する力を試されます。
Q3 写真描写:ビジュアルを言葉で正確に説明する力
与えられたビジュアルを言葉で正確に説明できるかを試されます。これは、ビジネスシーンにおいて相手と直接ビジュアルを共有できない場合に言葉で説明しきる能力、またプレゼンテーションなどで写真や図を使うときに言葉で捕捉する描写力などにつながる力です。
Q4-6 応答問題:カジュアルな話題でのコミュニケーション力
とても身近な話題に関する質問にあまり準備せずに答えていく問題です。ある意味スモールトーク(雑談)力を試されているとも言えそうです。
ビジネスの場だからといって、ビジネスの話題だけ話していては「面白くない人」になってしまいます。パーティーやレセプション、食事の席などで自分から情報を積極的に提供したり、相手の話を聞いたり、身近な話題で盛り上がったりすることで、人間関係も築きやすくなるでしょう。
カジュアルな話題でのコミュニケーション力を試されています。
Q7-9 提示された情報に基づく応答問題:「聞く+話す」をセットにしたコミュニケーション力
相手が尋ねている内容を的確に理解し、与えられた資料の情報をまとめて正確に伝えることが求められる問題です。ここで試されているのは、相手の話していることを理解し(リスニング力)、その質問に答える(スピーキング力)という、「聞く+話す」をセットにしたコミュニケーション力で、ビジネスでは基本中の基本となる複合スキルです。
日常的なビジネスシーンでの応対に加え、ミーティングの議事録を口頭でまとめたり、プレゼンテーションのQ&Aに対応したりするときのヒントにもなるでしょう。
Q10 解決策を提案する問題:正確なリスニング力
長めの電話メッセージや会議での会話を聞き、自分に投げ掛けられた課題に対し問題解決案を提示する問題です。
ここではかなり正確なリスニングが求められます。まず状況と問題点を正確に把握せずにはこの問題に対応することはできません。日頃からアウトプットだけでなく、 「隅々まで聞き取れる」リスニング力を身に付ける努力 をしておきましょう。
「なんとなく」聞き取れるだけでは対応することが難しい問題です。解決案の提案に関しては、経験の豊富なビジネスパーソンであれば苦労するような内容ではありません。学生の場合、社会経験が足りないと解決案が思い付きにくいかもしれません。その場合は既存の問題集などからさまざまな提案例を見て自分なりにまとめておくと、とっさのときに役に立つでしょう。
8月実施のテスト以降、この「解決策を提案する問題」がなくなることで、スピーキングテストはかなり易化するのではないかと予想されます。このQ10は、「正確な聞き取り能力」と「ビジネス環境で適切な解決策を提案する能力」という、スピーキング以外の能力の比率が比較的高い問題です。
また、上のコメントにも書いているとおり経験値の少ない学生さんには厳しく、リソースの豊富なビジネスパーソンには比較的楽な問題となります。この問題がなくなり、写真描写が増えることは、特に学生さんにとって朗報ではないでしょうか。
Q11 意見を述べる問題:英語の論理展開に沿って自分の意見を伝える力
「ここまで乗り越えることができれば、あとは思いっきり話すだけ」という問題。与えられるトピックはさまざまなので、 常日頃から自分の周りの問題に興味を持ち、それを英語でどう表現できるか、ということを地道に練習しておく ことがハイスコアへのカギです。
聞き手に共感してもらえるような意見の述べ方は、ビジネスだけでなくどんな場面でも必要とされます。60秒という短い時間内に自分の意見を具体例を含めて述べなければいけないので、言いよどんでいる時間はありません。
準備時間に「結論」とそれを支える「具体例」を決め、後は「結論⇒理由、具体例⇒結論」という論理展開の順番を守って、わかりやすく意見を伝えましょう。
ビジネスシーンでも、相手に自分の意見の重要性を理解してもらうためには、「理由」「具体例」「数値」といった客観的な根拠が必要です。ふわふわと抽象的なレベルで堂々巡りの議論にならないよう、英語の正しい論理展開でしっかり締めましょう。
ライティング
Q1-5 写真描写問題:限られた時間で簡潔かつ正確に書く力
5枚の写真それぞれに与えられた2つの単語を使って、制限時間内で各写真を描写する正確な短文を作る問題です。自由に書くよりも、制限を与えられた方が難度が上がります。
メールを書いたり、議事録を書いたりと、簡潔で正確なライティングが求められるビジネスシーンに役立つでしょう。タイムプレッシャーがあることも実際のビジネスに即していますね。
Q6-7 E メール作成問題:短い時間で要点を押さえたメールを書く力
与えられたメールに対して条件を守って制限時間内に返信メールを書く問題。多くの人にとって、ビジネスシーンで最も英語を使うのはメールではないでしょうか。メールの返信に時間がかかり過ぎていませんか?毎日たくさん送られてくるメールに要点を押さえて効率的に返信を書くスキルは、タイムプレッシャーのあるQ6-7のトレーニングで養うことができます。
Q8; 意見を記述する問題:英語の論理展開に沿って自分の意見を書く力
与えられたお題に対する自分の意見を、英語の論理展開 に基づいておよそ300ワードで書く問題です。スピーキングのQ11と同じような内容を問われているのですが、ライティングでは内容の構成、スペルや構文などの正確さやバリエーションがより厳しく見られていると考えましょう。また、具体例や明快な理由で自分の主張をしっかりとサポートできているかも重要です。英語でプレゼンの構成や企画書を書いたりするときに役立つでしょう。
以上からもわかるように、TOEIC S&Wは非常に実践的なアウトプット力を試されるテストです。
「TOEIC L&Rスコアは600点以上だけどアウトプットは苦手」という方は多いでしょう。アウトプットなしでは、語学力を仕事に活用することができません。インプットで培った力をぜひアウトプットに生かしましょう。
また、すでに海外とのビジネスなどで英語を使っているという方も、自己流の英語になっていないか、一般的に通用する英語になっているのかを客観的に知るためにも、ぜひ試験を受けてスコアを取得されるとよいでしょう。
英語の正しい発音や論理展開など、自分ではできているつもりでも伝わっていない例は大変多いです。
独学する場合の学習法
自己学習でアウトプット力を鍛えようとする場合に難しい点は、適切なフィードバックが得られないことです。
身近に英語の先生がいて、発話やライティングの向上を手伝ってもらえる場合はいいのですが、そうではない場合は、オンライン英会話などを活用し、TOEIC S&Wの問題を一緒にやってもらったり、スピーキングならレコーダー、ライティングならワードファイルなどに記録し、それぞれAIの文字起こし機能やライティングチェックソフトにかけて機械的なフィードバックを得たりするのがいいでしょう。万全とは言えませんが、それでも学習の大きな助けになるでしょう。
音声の文字起こしは、ワードの「ディクテーション」機能が使えます。ライティングへのフィードバックは、 Grammarly などオンラインでさまざまなサービスがありますので調べてみましょう。
おすすめの学習法と教材
2021年8月実施のテストからQ10「解決策を提案する問題」が廃止され、Q1「写真描写問題」が2問に増えますが、網羅されるべき情報に変わりはありませんので、既存のS&W参考書で十分に対応できると思います。
すべての人向け
公式問題集です。「公式」なだけあって最もオーセンティックな問題が入っています。基本情報を網羅するためにもぜひ1冊は手元に置いておくといいでしょう。
受験経験が少なく、1冊で全体を網羅したい人向け
拙著です。テスト全体を網羅し、各設問へのヒントやアプローチも満載で使いやすい構成の本です。
比較的TOEICのスコアやアウトプットに自信があり、最初からがっつり練習したい人向けです。
TOEIC S&Wの受験経験があり、演習問題をたくさんこなしたい人向け
スピーキング問題とライティング問題がそれぞれ1冊ずつに分かれているので、強化したいタイプの問題の演習量を増やすことができます。
番外編:TOEIC Speaking Testのみを受験する人向け
TOEIC S&Wではなく、TOEIC Speaking Testの準備をしっかりとしたい人、またはスピーキング力を集中的に伸ばしたい方におすすめです。
受験して英語力を底上げしよう!
TOEIC S&Wの試験会場に行くたびに、熱心な受験者が増えている印象を受けます。
日本の経済が衰退傾向にある中で、外の世界と自分をつなげてくれる英語の存在感は、これからもどんどん大きくなっていくでしょう。まだまだ日本では「英語が上手」なことが特別なこととして扱われています。翻って考えれば、まだ「今」なら英語力を自分のアドバンテージにできるということでもあるでしょう。
英語を教える立場として、ぜひ皆さんには個人のスキルとして英語力を身に付け、世界へ羽ばたいてほしいと考えています。
日本にいても、いえ、いるからこそ英語の力をしっかり底上げできます。その手段の一つとして、ぜひアウトプット型のテストを学習に組み込んでみてください。
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